説得力のあるキャラクターの描き方:ポーズと背景

ベルギー出身のビジュアルデベロップメントアーティスト Bram Sels氏 が説得力のあるキャラクター作成のヒントを紹介します。今回は「ポーズと背景」です


Bram "Boco" Sels
アートディレクター / ビジュアル デベロップメントアーティスト|ベルギー

※本チュートリアルは、書籍『Photoshop で描くキャラクター』からの抜粋です
>>> 「顔のデザイン&ペイント」
>>> 「髪の毛のペイント」
>>> 「衣装デザイン」

ポーズと背景

最終的なポーズは、プレゼン目的の場合が多いでしょう。キャラクターのルックはもう決まっていて、衣装のゴーサインも出ています。

つまり、制作に入る準備が整ったので、キャラクターはゲームの世界で新しい人生を歩み始めることになります。しかし、それでも多くのスタジオは、きれいにシェーディングされた、雰囲気のあるキャラクターの絵も要求してきます。すべての要素の組み合わさった絵は、宣伝用の良いイメージになるからです。

準備段階のスケッチやデザインは、3Dアーティストの作業には大変役立ちますが、マーケティングでは使用できません。そこで「洗練されたヒーローポーズ」という最後の手順が必要になります。

これまでのプロセスとの主な違いは、シーンのライティング法や伝えたい雰囲気(ムード)に重点を置くという点です。すなわち、キャラクターは周囲の背景に飲み込まれるくらいでなければいけません。

これを実現するため、霧やパーティクルエフェクトの作成方法を紹介しましょう。光と色を賢く利用することによって、キャラクターが実際にどこかに立っているかのような錯覚を生み出せるでしょう。

01 ウォームアップ:ジェスチャー

ウォームアップ用の簡単な練習法は、ジェスチャーをスケッチすることです。リファレンス写真を何枚か見て、できるだけ素早く、少ない線でポーズを模写しましょう。これらのジェスチャーラインは、認識可能なポーズを描くのに必要最小限のものです。

さらに発展させる場合、以降に追加するものは、すべてこのシンプルでダイナミックなガイドラインに従います。

ある特別な線は絶対的な要素、すなわち「アクションライン」と呼ばれます。これは胴体の中心を通り、ポーズをダイナミックに見せます(図01)。ダイナミックなものを作成したい場合は、必ずアクションラインを曲線にしましょう。曲線は動きや力を表しますが、直線は静的で退屈に見えてしまいます。

図01:アクションラインが中心を通る簡単なジェスチャーのスケッチ

02 マネキンの動作

前のセクションと同様に、すべてのキャラクターのペイントは基本的なマネキンから始め、それにディテールを加えていきます。最初の頃、私はこの段階で「素早くいい加減に描く」という間違いをよく犯し、その結果、多くの血と汗と涙が流され、数えきれないほどのイラストが破棄されました(恐ろしいことに、今でも私のハードディスクは祟られています)。ゆがんだ土台の上に家は建てられません。マネキンが変だと最終結果もおかしくなります。

当たり前のように聞こえますが、最もよく見かける間違いの1つで、急いでいると、今でも犯してしまう間違いです。いい加減な準備に弁解の余地はありません。

図02:キャラクターの土台作り:膝は少し曲げて、手はいつでもマスケット銃が持てる状態です

03 デザインを進化させる

マネキンの準備ができたら、衣装を着せていきましょう。すでに、人物画、髪形、衣装は決めてあるので、これ以上デザインするものはあまりなく、ポーズをつけたキャラクターに合わせるだけです。しわ、武器、手など難しいパーツの参考になるリファレンスを探しましょう。

衣服が膝や肩周りで折り重なる様子を観察し、こういったしわを自分の絵でも模倣してみます。満足できたらレイヤーを複製、オリジナルのレイヤーを非表示にします(バックアップがあるに越したことはありません)。

図03:衣装を着せ、戦闘準備ができたマネキン

ヒント:霧をペイントする

ボリューメトリック フォグは、絵に奥行きを出すために、多くのコンセプトアーティストが使用する手法です。キャラクターの前後に何かを配置することによって、そのキャラクターを背景に溶け込ませることができます。カスタムの雲や霧のブラシを作成して適用しましょう。

霧は有機的なので同じ形になりませんが、事前に作成したブラシを使うと、そっくりな部分ができるのは避けられません。この問題の解決には、雲のブラシで霧の上をざっと描いてから、普通のソフト円ブラシで反復的なエッジを消したり、ぼかしたりします。

図04:ボリューメトリック フォグは、キャラクターを背景に溶け込ませます

04 パース

初心者アーティストは忘れがちですが、キャラクターもパースの法則に従わなければいけません。消失点に向かう明確な直線は見えないかもしれませんが、パースを適用する必要があります。

身体のあらゆるパーツを円柱として捉え、その方向性を考えてみましょう。別レイヤーに水平線を描くと、形状をパースに照らし合わせることができます。このキャラクターの最も顕著な円柱はブーツにあります。ブーツは水平線よりも下にあるので、上の部分が見えるはずです(図05)。このことを把握していると、脚周りのブーツの描き方を視覚的に計算できます。

レイヤーパネル下の[新規レイヤーを作成]ボタンにレイヤーをドラッグ&ドロップすると、レイヤーが複製されます。そして、新規レイヤーの下に隠れた元のレイヤーはバックアップになります。必要に応じて、いつでも数ステップ前に戻れるよう、バックアップレイヤーを作っておくと良いでしょう。

図05:ほとんどの身体のパーツは円柱として捉えられるので、パースの法則を適用できます

05 最終マスク

最終的なイメージでは、衣装のすべての要素を別レイヤー(「Waistcoat」「Skin」「Coat」「Pants & Jacket」、マスケット銃やブーツ用の「Junk」)でマスクすることにしました(図06)。

要素を別々のレイヤーに分けると、それぞれのレイヤーで自由にペイントできます。また、[焼き込みツール]で衣服のさまざまなパーツの境目を暗くしても、その上にある要素に影響しません。キャラクターが後ろからドラマチックに照らされたシーンを作りたかったので、最初の手順として、レイヤースタックの1番上にイメージ上部を明るくする[オーバーレイ]レイヤー「Light」を作りました。

図06:すべてを別々のレイヤーでマスク

06 顔のディテールを作成する

私がこれまで何回もはまった落とし穴は、身体の他の部分と同じやり方で、顔のディテールを作成していたことです。他の部分を気にせずに、目、鼻先、口のラインなどを決めていきました。こうすると多くの微妙な情報が失われ、後でそのギャップを埋める必要性が出てきます。

前もって少しズームインし、きちんと肖像画の計画を練っておくと良いでしょう。具体的な顔が念頭にある方が扱いやすく、後々、時間を大幅に節約できます。

図07:肖像画の顔のパーツを計画します