写真をリファレンスにしたデジタルペイント:「女性のセルフポートレート」のメイキング

全体の調整

ベースカラーと光源が決まったら、残りの時間は、全体が洗練されるまでディテールを仕上げていきます。このプロセスにおいて、私は1つのセクションにあまり長い時間をかけません。長時間同じセクションの作業をして飽きるといけないので、様々なパーツを行ったり来たりします。後で戻ってくることで、間違いに気付きやすいという利点もあります。 また、この時点で、イメージがより滑らかになっていることが分かります。最初はかなりまだらでしたが、イメージを仕上げるにつれて、次第に滑らかになってきました(図08)。

図08

レイヤーの描画モード

ペイントする際、私は、さまざまな種類のレイヤーを使います。主に[通常]と[オーバーレイ]モードです。[通常]モードについて説明する必要はないでしょう。[オーバーレイ]モードはコントラストを強調するときに非常に便利です。私がリファレンスにした写真の光源は非常に強いので、イメージ全体にオーバーレイレイヤーをいくつか重ねます。同じトーンのオーバーレイレイヤーによって、顔の右側にさらに明るい肌のトーンをペイントできるというわけです。これでコントラストと太陽の光がよく強調されます。また、肌が太陽の光に当たった時の明るい赤やオレンジを表現するのに効果的です。レイヤーの不透明度は、最も良く見える範囲内に調整します。どうしたら良く見えるか、さまざまなレイヤーで試してみてください(図09)。

図09

影になっている顔の部分は、太陽に照らされている方と比べてまだ平坦に見えます。この対処には別の[オーバーレイ]レイヤーを使い、少しずつ明るいトーンを追加しながら、頬、眉、骨などの顔のパーツを強調していきます。[オーバーレイ]だと色の彩度が高くなることがあるため、薄い緑を使います。もし、肌と同じトーンを選んだとしたら、明るいオレンジになってしまうでしょう。緑だと、このような影響はなく、肌のトーンでもほぼうまくいきます(図10)。

図10

反転

失敗を減らすもう1 つの方法は、定期的にイメージを反転させることです。写真をリファレンスにしながら作業すれば、最終的なイメージの方向は分かりますが、それでも、1 時間ごとにイメージを反転すると良いでしょう。反転すると間違いが目立ちます。ペイントが終了した後で反転し、その見苦しさに気付くよりも、こまめに反転、修正しながら描く方がはるかに簡単です(図11)。

図11

ブレンド

ブレンドのやり方は、最もよく聞かれる質問の1 つです。私は、2色を「積極的にブレンド」することはまずしないので、答えに困ります。私のブレンド方法は、色の境界がほとんどなくなるまで様々なトーンに変えながらストロークを繰り返し、徐々に色を重ねていきます(図12)。

図12

複数の色をぼかす方法は絶対にお勧めできません。イメージがぼんやりして、生き生きと見えなくなるので、少し粗く見えても気にしないで続けてください!混ぜ合わる色をつなぎ補ってくれるトーンを選び、ペイントストロークで軽く塗り続ければ自然にブレンドされるでしょう。それが難しいなら、ソフトエッジのブラシを使ってみてください。エアブラシを使うのはお勧めできませんが(個人的な好みです!)、ハードエッジでないブラシを使うことによってブレンドしやすくなるかもしれません。また、ブラシの不透明度を少し下げるのも良いでしょう。100% の不透明度は高過ぎることがあります。私はどんなときも、基本的に不透明度を変えませんが、大事なのは、自分のやり方を探し出し、最高の結果を得ることです。

引き続き、基本の円ブラシを使い、髪の基本的なシェイプを大まかに描きます(図13)。

図13

その後は、他のパーツと同様に、徐々に明るいトーンを乗せていきます。私は、髪の毛を1本1本の集合体としてではなく、セクションごとにペイントし、髪が自然に垂れて束になる様子を強調するようにします。それから、小さな束を表現するために1本1 本を追加します。 明るい茶色の[オーバーレイ]レイヤーを追加し、太陽に照らされている側の髪がきれいに光るようにします。その後は、このプロセスを繰り返すだけです。全体がまとまるまで、セクション、ハイライト、髪の毛1本1本を追加し続けてください。

仕上げとディテール

ペイントするとき、仕上げの作業は主要な部分を占めます。ただし、私はこれを「最後」の段階では行いません。つまり、ディテールの精度を上げることをペイント作業を通じて行っています。私にとってディテールの調整は、段階的に進めていく、とても楽しい作業です。基本的には、仕上げで全てをきれいにまとめていきます。 私にとって、ディテールの精度を上げることは、髪の濃い色に対する顎のラインなど、線を整えていく作業です。また、この段階になると目、眉、鼻、唇などにディテールを追加することに専念できます。引き続き、同じタイプのブラシを使用していますが、もっと細いサイズのブラシです。ディテールに取りかかるときは大抵かなりズームインします。その方がはるかにクリアで簡単だからです(図14)。

図14

要素の変更

リファレンス写真と違う部分があることにお気づきかもしれません。特に、髪は大きく異なります。リファレンスの髪は文字通りボサボサでした!そのままペイントするのを避けたいときは、自由に変えてしまってください。見た目を変えた方が仕上がりが良くなる場合は、そのようにペイントしてかまいません!写真はあくまでリファレンス、参考資料に過ぎず、忠実に従うべきものではありません。図15を見ると、さらに形が整えられているのが分かるでしょう。

図15

図16、17 では、拡大されたディテールを確認することができます。

図16

図17

この時点でペイント作業はほぼ完了しています。イメージを少し切り抜き、背景に明るいピンクや青を付け加え、青い瞳やピンクがかった肌のトーンを強調します。リファレンス写真と違うのは言うまでもありませんが、好きなようにペイントして変更を加えています。このチュートリアルを楽しんで何かを学んでいただけたら幸いです。何よりも大切なことは、楽しむこと、そして、クリエイティブであることです。そのことを忘れないでください(図18)!

図18

 

※このチュートリアルは、書籍『Digital Painting Techniques 3 日本語版』に収録されています (※書籍化のため一部変更あり)。


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