写真をリファレンスにしたデジタルペイント:「女性のセルフポートレート」のメイキング

コンセプトアーティスト/イラストレーター Charlie Bowater氏が、写真をリファレンスにしたデジタルペイント:「女性のセルフポートレート」のメイキングを紹介します(Photoshop 使用)


Charlie Bowater
コンセプトアーティスト / イラストレーター

リファレンス(参考資料)

写真をもとにペイントするという課題を与えられると、私はセルフポートレート(自画像)を選びます。写真だと、フォームが少し歪むことがあるため、できれば、実物をモデルにした方がよいでしょう。しかし、モデルにポーズをとってもらうのが難しい場合もあるので、そうしたときに、写真は確かに大きな助けとなります。今回、私は面白い写真を選んでみました。この写真は私らしくないのですが、強い光源が気に入っています(図01)。

図01

スケッチ

私は、いつもスケッチから始めるわけではありません。しかし、写真を見ながらペイントする場合は(自画像の場合も)多少精度を高めることができます。基本的なシェイプやフォームを大まかに描くこともありますが、今回はとても簡単なガイドから始めてみましょう。 このガイドは主なパーツ(目、鼻、口など)の位置を測るためのもので、各パーツの上に配置したラインを複製したレイヤーです(図02)。

図02

(直線を描くにはブラシストローク中に[Shift]キーを押します)。その後は、目測で大まかにスケッチします。もっと簡単にしたければ、グリッドを使ってもよいのですが、個人的には完璧な基本スケッチを描くことにあまり捉われないようにしています。この段階では、まだかなり見苦しいですが、基本は押さえたので彩色に移りましょう!

ブラシ

インターネットのあらゆる所に、さまざまなカスタムブラシがあふれています。その中には素晴らしいものもありますが、基本的な円ブラシを使えば間違いはないでしょう。私の場合は、Photoshop にある標準のハード円ブラシを使います。

ベースカラー

写真をリファレンスにしたペイントで色を選ぶ際、カラーピッカーの使用は避けた方がよいでしょう。写真はとてもピクセル化され、色が歪んでいることがあるからです。色を無作為に選んでも、特に肌などのトーンを正確に表現することはできません!自分で判断し、そのトーンにできるだけ近づけるようにします。ぴったりの色でなくても構いません。このイメージを描く過程において、様々な色を付け加えていくので、気にしないでください。次のステップでは、スケッチの下の通常レイヤーに基本的なトーンを追加しましょう(スケッチ自体は[乗算]モードに設定してあるので、基本的に透明になります)(図03)。

図03

ここからは、全ての要素をスケッチとベースカラーの上にペイントします。レイヤーが乱雑にならないよう、最終的にはイメージを必ず統合します。しかし、新規レイヤーの上に新たなセクションをペイントすることもよくあります。私は完璧主義者ではありません!どこかを失敗したとしても大きな問題になることはないでしょう。複数のレイヤーを使うかは個人の好みです。好きな方法を選んでください。この時点で、顔のフォームを強調するために非常に大まかなハイライトを入れ始めています(図04)。

図04

クイックヒント:この段階でイメージが元の絵とあまり似ていなくても、気にしないでください。まだ初期の段階であり、後で必ずまとまってきます。この時点ではストロークが見え見えで滲んでいるなど、全体的に汚く見えますが、大事なのは、ぴったりの色と形を見つけることなので、完璧に滑らかにすることにこだわらないようにしてください。

私がよく聞かれる質問の1 つに「どうして選ぶ色が "分かる" のか?」というのがあります。正直に言って、分かりません。周りに注意を払うようにしながら、適切に見える色を選んでいくだけです。写真を見ながら作業をするのは良いガイドになり、直感に頼るよりも簡単です。しかし、多くの場合は、選んだ色に心から満足することはなく、最終的には色を変えることもあります。初期段階でのカラーパレットと最終的な仕上がりは全く異なるものです。最初に選んだ色に満足しなくても心配しないでください。頼りになる Photoshop が作品を引き立ててくれます(図05-06)。

図05

図06

非常に有益なツールの1つは、[カラーバランス]です。私はいつも画像全体を複製し、多くの場合は色に満足できないので微調整を施します。色を少 しだけ、あるいは劇的に変化させたい場合に非常に便利なツールです。また、調和がとりづらいときに、色を統一させることもできます(図07)。

図07

イメージのトーンがペイントを通じて徐々に変化することに気付いたかもしれません。ぴったりのトーンを選ぶのに、あっちを試したりこっちを試したりします。そんな風に、私は優柔不断なのです!