写真をリファレンスにしたデジタルペイント:子供のポートレート『Gabriel』のメイキング

英国のコンセプトアーティスト/イラストレーター Richard Tilbury 氏 が、子供のポートレート『Gabriel』のメイキングを紹介します(Photoshop 使用)


Richard Tilbury
コンセプトアーティスト / イラストレーター | 英国

はじめに

このチュートリアルは、写真をリファレンス(参考資料)としてポートレートを描くため、まずは被写体を誰にするのかを決める必要がありました。息子の Gabriel を被写体と決めたので、カメラを取り出し、撮影する間、じっとしているよう説得に最善を尽くしました。さまざまなライティングのバリエーションを得るため、さまざまな角度から撮影しましたが、最終的には 図01 の写真を使用することにしました。

図01

反対側からも撮影してみましたが、顔のほとんどに直接光が当たってしまうため、光と影の位置がこの写真の角度ほど面白みのあるものにはなりませんでした。光も、この写真を特に気に入った理由の1つですが、最も大きな理由は妙にメランコリックな、その表情です。おそらく、永遠に続くかのような時間をじっとしているように頼んだことが少なからず関係していると思われます。いずれにせよ、何枚もの写真を撮影して検討した結果、この写真を使いペイントを始めることに決めました。

ブロッキング イン(下塗り)

デジタルペインティングに関する限り、いつでもフレームを拡張したりトリミングできるので、カンバスの比率はあまり重要ではありません。しかし、これは、従来の絵画ではカンバスをもう一度引き伸ばさないと得られない贅沢です。ここでは一般的なポートレートの比率を選び、背景を適当に描き、白い空間をなくしました。私は、カラースキームを個別に試せるように、キャラクターと背景を別にするようにしています。下塗りでは、標準的なハード円ブラシからデュアルブラシにしたチョークブラシまで、さまざまなブラシを使用しました。

図02

図02 では、左上隅のカラーパレットの横に、別々のブラシで描いたディテールが2つ示されています。このパレットを作ったのは、全体的な色調を大まかにスケッチするときに、明るめの色調、中間的な色調、暗めの色調を素早く選択できるようにするためです。実際、写真から直接パレットを構築することもできますが、目のトレーニングにならないため、従来の方法を用いることにしました。いずれにせよ、写真のコピーにしたいわけではありません。初期段階の作業では、カンバスのサイズを小さくするようにしています。絵全体の感じをつかむことができますし、ディテールにとらわれることもなくなるからです。図03 は私の典型的なワークスペースで、最初はこのようなサイズで写真とカンバスの両方を表示します。

図03

図04 は、最初の下塗りから顔の部位を配置するまでの過程を示したものです。絵全体を大まかに描いてから、カンバスの各領域を同じようなペースで描き進めることをお勧めします。こうすると、誤っている領域や修正が必要な領域を見つけやすくなります。現時点でプロポーションが不正確であることが分かりますが、カンバスに何かが描かれているだけで助かるのも事実です。結局のところ、目の前にあるものを変更する方が、頭の中にだけ存在するものを変更するよりも簡単だからです。この段階では、カラーパレットを使ってボリュームを大まかに描いたり、写真における光を感じ取ります。

図04

「実世界」に基づいて絵を描くときに最も重要なことは、観察し、明と暗の主な領域を早い段階から確立しておくことです。この例では、ハイライトとシャドウの境界が顔から髪にかけて、はっきりと示されています(赤い線をご覧ください)。私は、よく目を細めて、自分が目にしているものを単純化して見ます。こうすると、ディテールよりも被写体の主な構造やプロポーションにもっと注目できるようになります。

中間段階では、白目部分に仮の明度を追加しています。また、下まぶたに当たるハイライトと眼窩周辺のシャドウも大まかに描いています。この中間段階のスケッチの目的は、目、鼻、唇の全体的な比率と関連性を明確にすることです。ポートレートに不正確な部分が含まれていると、顔全体に影響し、見る人の受け取り方も変わってくるので、慎重にすべてのバランスをとることが重要です。最終段階では顔のすべての部位が適切な位置に配置された結果、画像を正確に読み取ることができます。また、すべてのコンポーネントが適切に配置されていれば、おかしな箇所をずっと簡単に見分けることも可能です。完璧な口や鼻を描いたとしても、目が欠けていたら、どこか変に見えるでしょう。これが私の基本的な考え方で、これをベースに絵を構築し、微調整していきます。