説得力あるモンスター&クリーチャーの描き方:トロール
20 木のテクスチャ
木のテクスチャは、気を抜くと皮膚や布のように見えてしまうので注意が必要です。こうした結果を避けるためには、木をベースとした色の彩度を強めに設定します(図21)。ここでは、古く磨り減った木の質感を模倣するため、彩度の低い控えめなスペキュラハイライトを杖に追加します。暗い部分に直接明るいハイライトを配置すると、影以上に杖自体が暗く見えます。これは、特に光沢がある、あるいはヌルヌルしたアイテムで、影の領域から暗い色を区別させるのに便利な方法です。
図21
21 落葉
アーティストオイルブラシで地面の落葉をさらに調整していきます。この段階では、正しい色をペイントすることに集中して、葉のシェイプはラフなままにしておきます。落葉自体には彩度の低い明るめの色の選択します。その周囲は深紫と黒を軽く塗って、影とその下の暗い土を表現します(図22)
図22
22 フォーカス(焦点)
葉を1 つまた1 つとペイントする作業に夢中になって、イメージ全体を見るのを忘れることがあります。このことに注意を払わなければ、それぞれの葉が基本的には同じ明度や彩度になってしまうので、イメージが平坦になります。時々、ズームアウトしてシーンで落葉がどう見えるかを確認してください。ここでは、すぐ手前の落葉はトロールの下や後ろにあるものよりも大きく、カラフルで明るくしています(図23)。
また、作品の周囲にある落葉をフェードアウトして、メインキャラクターに誇張したフォーカスを作成します。私は、このエフェクトのために、オーバーレイやレイヤーを使用しません。むしろ、それぞれの葉に適切な色を選択し、ブラシのブレンド機能を活用します(筆圧を緩めるとブレンド効果が高まります)。次は、トロールが手前に浮いているのではなく、地面にしっかり立っているように見せます。このために、トロールの下と右の領域を暗くして、影を表現します。ここでも、レイヤーを使用するのではなく、パレットやカラーホイールから適切な色を選択して実行します。また、図のように、時々はイメージを反転して、構成や解剖学的構造をチェックします。
図23
23 樹皮
大木と背景の残りの部分では、中間以上の明度と低めの彩度に設定した色のみを慎重に使用します。これによって、イメージに奥行き感が加わり、背景とキャラクターが競合することがなくなります。引き続き、背景を薄めていきます。木の幹で縦に走っている濃い線を、アーティストオイルブラシで軽く塗ります。不規則な間隔で、小さくラフな弧をこれらの線に垂直にスケッチしていき、わずかにボリュームのある外観にします。これで、幹に立体感が加わり、「舞台セット」のようなルックにならずにすみます(図24)。
図24
24 最終ディテール:落葉
イメージはほぼ完成しました。今度は、丸筆ブラシで最後のディテールをペイントしていきます。たくさんの落葉を修正したくないので、ブラシストロークを、より葉のシェイプに近づける調整を数分かけて行います。葉の1枚1枚には固執しません。重要なことは、葉の印象を伝えることであり、1 枚の葉を入念に仕上げることではないからです(図25)。また、マントを少し長めにして、控えめでない美的価値のある印象にしました。
図25
25 最終ディテール:大木
丸筆ブラシで大木のディテール、特に変色した樹皮の領域やキノコなどを追加、修正します。背景が注意を引いてメインキャラクターと競合しないよ
うに、ディテールのレベルは、トロールよりもはるかに少なくします(図26)。
図26
26 テクスチャにもう少し
仕上げにはペーパーパレットからアーティストキャンバスペーパーを選択します([ウインドウ]>[ライブラリパレット]>[ペーパー])。大きいサイズの丸筆ブラシで、イメージのコーナーで 2~3 のテクスチャを軽く塗ると、面白い効果が作成されます(図27)。このイメージについて、私の知っていることはほぼ伝えることができました。ただし、私は最終的な提出を行う前に、数日間、イメージから離ます。そうすれば、新鮮な視点で制作に戻ることができます。時間の許す限り、正式に作品を完成させる前に休憩を取ることをお奨めします。そうしないと、作品に「近すぎる」ことで親しみが生まれ、欠点が見えなくなる危険性があります。
図27
27 最終調整
イメージを再び見たときに、トロールの後部にぶら下がっているマントのエッジが暗すぎるため、視線が意図していない領域に集まることに気が付きました。影の領域にズームして、アーティストオイルブラシで明度を低めにした黄土色を軽くペイントします。
28 サイズ変更と保存
図08 に示すように、作業を進めてきたイメージのサイズは、指定されたプリントサイズよりも大きくなっています。プリント仕様のイメージにするには、メインイメージのコピーを保存して、[キャンバス]>[サイズ変更]で適宜変更します。大きいイメージはプリントサイズと同じアスペクト比であるため、変更しても歪みません。
完成です。このチュートリアルを進めている間、[編集]>[環境設定]>[一般]で[保存時にバックアップを作成]をチェックしておくと、定期的にファイルを保存する度に、Painter ではバックアップが作成されます。私の場合、プロジェクトで作業を進めた日の終わりには、無料のバックアップソフトウェアを使用して、外付けハードディスクにもファイルをバックアップしています。1日わずか1~2 分の作業で、ファイルを失ったときの大きな手間やストレスから開放されます!
図28
※このチュートリアルは、書籍『Digital Painting Techniques 3 日本語版』に収録されています (※書籍化のため一部変更あり)。
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