説得力あるモンスター&クリーチャーの描き方:オーガ

英国のコンセプトアーティスト/イラストレーター Richard Tilbury氏が「オーガ(Orga)」のメイキングを紹介します(Photoshop 使用)


Richard Tilbury
コンセプトアーティスト / イラストレーター | 英国

はじめに

文学に登場するオーガは、人間を捕食する大きく醜い人型のモンスターとして描かれています。一般的に、大きな頭と強靭な肉体を持ち、見た目は毛深く、不快で残忍、トロールと近縁関係のある生物です。「オーガ」という名前はフランス語が起源で、神話や民話、物語などに登場しています。

このトピックについてリサーチすると、さまざまな文化や異なる時代で、オーガについての幅広い描写を発見できるしょう。作成するオーガはおぞましいルック、恐ろしいクリーチャーであることを想定しましたが、同時に知性のない、言わば、「頭脳より腕力」タイプであるべきだと感じました。

01 サムネイルスケッチ

描くモンスターは、恐ろしい外見と巨躯であることは決まっていました。しかし、オーガの性格を表現する上で最も重要な側面である顔を描くことができませんでした。そこで、サムネイルスケッチをいくつか作成して、オーガの見た目を探求することにしました。

図01

図01 は Photoshop 標準の硬めの円ブラシで作成した、グレースケールのさまざまな表情です。オーガが人間を餌にしているという特性が、彼らの最も恐ろしい側面として私の心を捉えたので、口を開けた表情をいくつか描きました。奇妙にねじれた一連の歯が見えるように開かれた口は、オーガの残酷な意思を強調するにはうってつけでした。前述したように、オーガは毛深いクリーチャーとして描写されているので、いくつかのバージョンに髭を追加しました。

各サムネイルをよく吟味すると、スケッチ1はラスプーチン(ロシアの怪僧)を連想させるので、適していませんでした。目としかめっ面は気に入ったのですが、結局のところ、人間のルックに近すぎました。スケッチ2と3 では、人間のプロポーションから遠ざかりましたが、カートゥーン調すぎて、型にはまったように見えます。対照的に、スケッチ5と6 はリアルになりすぎて、狙っていたものとは異なる、紛れもない野人のようなルックになってしまいました。

スケッチ1は、正攻法というわけではありませんが、半開きになった口が気に入ったので、バリエーションを作成しました。スケッチ4の小さな目は良いのですが、他のバージョンと比べ表情が幾分優しく見えます。このオーガの特徴は、他と比べると柔らかく見えること、穏やかな性格の巨人を連想させることです。オーガの顔をあからさまに左右非対称にして、さらに歪んだ特徴を加えることを決めました。このスケッチ7 が、ここまで追求してきたオーガをまとめた決定稿のバージョンです。

02 ブロッキング イン(下塗り)

使用する顔を決定したので、ラフな構図で下塗りを開始します。この段階では、まだペイントの方向性は不確かです。そこで、無防備な前景のキャラクターへ向かって影から現れるオーガを想像してみました。獲物になるであろうキャラクターに、オーガが忍び寄るような構図にすることで、イメージに緊張感を与え、見る人に危機感を抱かせることができます。

図02 は、暗い背景にオーガを配置した初期の段階です。建物や家の中に配置することも検討しましたが、オーガはもっと大きいはずだと感じました。また、集落や村から外に出て危険に身をさらしている人間に、忍び寄る捕食動物トラやライオンについて考えてみました。そこから、森に潜み、木々のそばへ迷い込んでくるものを待ち、さらっていくクリーチャーのアイデアを思い付きました。そのため、オーガの身体の一部は影の中に隠したままにしています。

図02

2つのカスタムブラシで木を追加します(図03)。同じブラシのバリエーションで、樹木の幹と葉の両方をペイントします。

図03

引き続き、同じブラシを使用して、前景に描写を追加していきます。同時に、幹にもボリュームを与えています(図04)。

図04

03 色を加える

まず、初期のカラースキームとして使用するレイヤーを追加します。このレイヤーの描画モードを[オーバーレイ]に設定します。このモードはどんな色を適用しても、下のレイヤーの色調の範囲が維持されます。

図05

図05は、[通常]モードのカラーレイヤー(左下)と[オーバーレイ]モードに設定した結果(全体)を示しています。オーガの顔にディテールをペイントし、前景にはヤギを加えます。ヤギはオーガの注意を集める役割を果たし、同時にシーンのアクセントになります(図06)。この段階では、前のバージョンに比べ、オーガの顔が少し明るすぎるように見えます。後でトーンを落として、オーガを別のレイヤーに切り離します。

図06