【インタビュー】中国の 3Dアーティスト Yingbiao Han氏

中国の3Dアーティスト Yingbiao Han氏に、その3Dワークフロー、インスピレーションのもと、キャリア等について語っていただきました


Yingbiao Han
3Dアーティスト | 中国


Q.自己紹介をお願いします。

こんにちは! 私は Yingbiao Han といいます。現在、エンターテインメント産業で3Dアーティストとして働いています。これまで CM、映画、ビデオゲームのモデリングとテクスチャリングに取り組んできました。現在は、中国に住みながら、リモートプロジェクトに参加してキャラクター、クリーチャー、ハードサーフェスモデルを主に担当しています。

私は、カリフォルニア州立大学ノースリッジで美術学士号を取得しました。最近では、Gnomon School of Visual Effects で Digital Production for Modeling & Texturing を受講しました。勉強している間は、ロサンゼルスに拠点を置くVFXスタジオのインターンとして、合成、キャラクターリギング、アニメーションなどを行なっていました。

Demon of the Abyss:Marat Ars氏のコンセプトアートを3Dで作成

Q.デジタルアートに進むきっかけとなった人物や出来事を教えてください。また、現在は何からインスピレーションを得ていますか?

子供の頃はスケッチをずっとやっていました。特に、好きだった映画『ターミネーター2』(Terminator 2: Judgment Day)のデジタルアートを描いていました。それ以来、SF映画やビデオゲームなど多くのメディアに傾倒していきました。エンターテインメント業界でプロフェッショナルな仕事を真剣に考えていた高校時代に『Warcraft III:Reign of Chaos』のオープニング シネマティック トレーラーを見たのが、きっかけの1つです。

現代には研究対象がたくさんあるので、インスピレーションも尽きることはありません。Blizzard 社のシネマティクスをはじめ、『Elder Scrolls Online』『ウィッチャー3 ワイルドハント』『The Order:1886』など他の有名なゲームにも注目しています。また、Rafael Grassetti 氏、Xin Wang 氏、Marat Ars 氏の作品も必見だと思います。

Demon Slayer:Stan Poltavsky氏のコンセプトアートをもとに作成

Q.作品制作で使うソフトウェアやツール、それらを選んだ理由を教えてください

私は、仕事の改善に使用できる新しいプログラムを探し、進んで取り入れています。現時点では、3Dモデリングとテクスチャリングには MayaZBrushMudboxPhotoshop を使用、その多くの作業は Maya で行なっています。それらのユーザーインタフェースではカスタマイズも簡単なので、ワークフローを高速化できます。

スカルプティングでは ZBrush のシンプルさ、セットアップ、ツールを最高に楽しんでいます。テクスチャリングは、簡単で安定している Mudbox と Photoshop を使用。Quixel SuiteSubstance DesignerSubstance Painter などを使うこともあります。最高の作品を生み出したいときに必要なものは「何」だと思いますか? ソフトウェアは単なるツールであり、個人の好みです。選択したソフトウェアに関わらず、素晴らしい芸術作品を実現させるのは「アーティスト自身」に他ならないのです。

Ghoul Scavenger:Arthur Gimaldinov氏のコンセプトアートを3Dで作成(Gnomon School of Visual Effectsのデモリールプロジェクトのため)

Q.制作における通常のワークフローを教えてください

最近作成した「オーク」でもそうですが、アイデアの探求段階は、Photoshop でたくさんのラフデザインを描きます。デザインを絞ったら、広範なリファレンス写真や(必要に応じて)実際のオブジェクトを集めます。

初期段階は ZBrush のみで進めます。既存のモデルから開始、それをダイナメッシュ(DynaMesh)に変換すれば、トポロジのストレッチを心配することなく、希望どおりにどんな形にも操作できます。スカルプトは、ダイナメッシュと ZRemesher を切り替えながら進めます。ZRemesher は、ディテールを1つのオブジェクトから別オブジェクトに投影するのに便利です。その後、モデルを Maya に取り込んでアーマーやアクセサリーなどのアイテムを追加、再度、ZBrush に書き出してスカルプトを続けます。

ZBrush のアルファブラシで、スキンテクスチャのような高周波ディテールを作成するアーティストもいますが、私はディフューズマップで行います。ディフューズマップを作成したら、それらをバンプや法線(ノーマル)マップに変換して、サーフェスのディテールをより際立たせています(※チュートリアル『オーク – アイアンシェフ スカルブレイカー』のメイキングを参照ください)。

A mech:Saeed Ramez氏のコンセプトアートをもとに作成

Q.これまで取り組んできた面白いプロジェクトについてお聞かせください。また、どんな仕事を楽しんでいますか?

私が取り組んだ最初の楽しいプロジェクトは、未来的な人工島をベースとしたインタラクティブな 3Dウェブサイトでした。初期の制作で、私は大きな建物・展望台・ドック等のモデリングを担当。一般的なハードサーフェス モデリングにハマっていたのでので、割り当てられたパートで楽しく作業できました。このプロジェクトで最も面白かったのは、作成したすべてのモデルを活用して島全体を組み立てることでした。

最近取り組んだフリーランスプロジェクトの1つが、難解なクリーチャーのルックデヴです。超リアルで筋肉質なクリーチャーを作成するため、モデリングやスカルプティングから、テクスチャリング、ルックデヴまで、怪物を作るすべてのステップを楽しめました。

Q.現在の仕事について教えてください。新作や新しいテクニックをもうすぐ見ることはできますか?

今はフリーランスアーティストとして働いています。先日、ゲームアセット用の手塗りのテクスチャリングに関するクラスを受講しました。そこでは Quixel SUITE、Substance Designer、Corel Painter を学び、Metalnessシェーダシステムなど次世代ゲームアセット制作の全く新しいワークフローに慣れ親しむ良い機会となりました。従来の Specularシェーダシステムと比較して、Metalness は、より高速にテクスチャマップとシェーダを作成できます。さらに、ゲームアセットの作業中に、レンダリングされたアセットをソフトウェア内の3D空間でリアルタイムプレビューできます。

次のプロジェクトでは、『The Order:1886』に登場するような人間のキャラクターに取り組んでいきます。今回は Unreal Engine でレンダリングする予定です。

Maya と ZBrush で作成したスカルプト:Ivan Smirnov氏のコンセプトアートをもとに作成

Q.最後に、他のアーティストに向けてアドバイスをお願いします

この業界で競争力のあるアーティストであり続けたいなら、決して学ぶことを止めてはいけません。たとえば、期待どおりの結果を得られない時代遅れのプログラムがあるなら、開発が進んでいる最新のソフトウェアに切り替えましょう。

もし、あなたがキャラクターアーティストであれば、解剖学は無視できません。その道のベテランであっても同様です。静物を描く、粘土でスカルプトする時間をとることには、とても大きな意味があるのです。

さらに、業界のプロたちと連絡を取り合い、ネットワークを強化してください。長期的にアーティストのキャリア形成において、大きな助けとなるでしょう。

最近の作品『アイアンシェフ スカルブレイカー』

※ Yingbiao Han氏の作品『アイアンシェフ スカルブレイカー』のメイキングも日本語化しています。こちら をご覧ください

編集部からのヒント

解剖学を学ぶには、書籍『3Dアーティストのための人体解剖学』 を、CGキャラクター制作を学ぶには、書籍 『MAYA キャラクタークリエーション』をお勧めします。


翻訳:STUDIO LIZZ (TK)
編集:3dtotal.jp