【インタビュー】キャラクター制作に深い情熱を:3Dキャラクターアーティスト Illia Loginov 氏
ウクライナの Illia Loginov氏 が、3D制作フローのヒント、そして、インスピレーションを得るための秘訣を紹介します

Q. 自己紹介をお願いします
ウクライナ出身の 3Dキャラクターアーティスト Illia Loginov(イリヤ・ロギノフ)です。アニメーション向けのスタイライズド キャラクターを制作することに深い情熱を注いでいます。すべてのプロジェクトにおいて、2Dデザインやコンセプトが持つ本質、雰囲気、そして 魅力を最大限に引き出し、正確な3Dモデルへと昇華させることを信条としています。
幼少期からアニメーションの世界に魅了されてきました。『アトランティス 失われた帝国』(2001年)、『シンドバッド 7つの海の伝説』(2003年)、『エル・ドラド 黄金の都』(2000年)、『トレジャー・プラネット』(2002年)、『プリンス・オブ・エジプト』(1998年)、など、数多くの素晴らしい映画を観て育ち、常にそのキャラクター造形に心を奪われてきました。「自分もこんな世界を作りたい」という願いは、かつては叶わぬ夢のように思えましたが、情報にあふれる現代において、それは探求すべき現実の目標へと変わりました。現在、日々新たな学びを楽しみながら制作に励んでいます。
「Thomas "Big Tom" Castellano」
Q. 制作ワークフローをおしえてください。アイデアはどこから得ましたか?
この作品「Gretel」は、絵本プロジェクト『ヘンゼルとグレーテル』とのコラボレーションにより制作したものです。Carlos Luzzi 氏 による素晴らしいグレーテルのデザインを形にする機会に恵まれ、非常に光栄でした。私の制作フローは、一貫して「コンセプトへの深い理解」から始まります。まずデザインを徹底的に研究し、自分なりのドローイングやメモを作成。その後、必要なリファレンスを集約してから実際の作業へと移ります。
スカルプトには ZBrush を使用しています。ZBrush は私が最も多くの時間を費やしているプログラムであり、お気に入りのパートです。時間に余裕がある限り、既成のベースメッシュに頼らず、キャラクターを「ゼロ」から作り上げるのが私のこだわりです。プロセス自体は一般的で、シンプルな形状のブロックアウトから始め、Dynamesh や Zremesh を活用しながら段階的にディテールを洗練させていきます。
制作において最も重視しているのは「技術的な制約に縛られず、芸術としてのスカルプトに集中すること」です。フォームの美しさ、シルエットの緩急、プロポーション、そして ラインのダイナミズムを、一つひとつ丁寧に追い込んでいきます。スカルプトを終えたら、Maya でリトポロジーを実行し、UV を作成します。テクスチャのベースは ZBrush のポリペイントで作成することが多いですが、最終的な調整や質感の追い込みには Substance 3D Painter を使用します。最後に、Blender(Cycles)を用いてライティングとレンダリングを行い、作品を完成させています。
「Gretel」(コンセプトデザイン:Carlos Luzzi)
Q. 制作で苦労したことはありますか? 新しい学びはありましたか?
最も苦心したのは「ポーズの安定感」と「キャラクターの生命感」の両立でした。静止したモデルが硬い印象にならないよう、常に「コントラポスト」(肩と腰のラインを対抗させる傾き)を意識し、デザインの中に自然な動きの流れを生み出すことを重視しました。
また、デザイン全体を通して「単純さと複雑さのコントラスト」という原則を徹底しました。これは特にドレスの造形で顕著です。あえて何も描き込まない「静」のラインと、複雑な折り目による「動」の形状を隣り合わせ、視覚的なリズムを生んでいます。この法則は、シャツの袖、ブーツ、手、そして手にしている地図に至るまで、全身のディテールに適用されています。
さらに、このプロジェクトでは初めて「表情シート」の制作に挑戦しました。グレーテルの可動域を探りながら、彼女らしい表情をスカルプトしていく作業は新鮮で、エキサイティングな経験でした。どんなに表情を変化させても、彼女の根底にある魅力や個性を損なうことなく、一貫して「生きている」と感じさせるバランスを見極めることが、この工程における最大の鍵となりました。
「Gretel」
Q. ポートフォリオを最新の状態に保つ秘訣・ヒントがあれば おしえてください
まず心に留めておくべきは、「学びの終着点はない」ということです。常に成長の余地はあり、新しい発見が待っています。大切なのは立ち止まらずに前進し続けること、そして「完璧主義」の罠に陥らないことです。私は、「20%の努力が80%の結果を生み出す」というパレートの法則を仕事に取り入れています。もちろんベストを尽くすことは大前提ですが、今の自分が気づけない改善点は、将来の自分が解決してくれます。完璧を追い求めて停滞するよりも、適切なタイミングで「完成」させ、次へ進む方が価値があるのです。
何より大切なのは、制作プロセスそのものを楽しむことです。ただし、ポートフォリオに関しては厳しくチェックし、古い作品に執着せず、現在の自分のスキルに見合わないもの、あるいは時代遅れになったものは、思い切って取り除きましょう。その作品にどれほどの時間をかけ、どんな思い入れがあろうとも、ポートフォリオの鮮度を保つためには客観的な判断が不可欠です。
そして、常に最高品質の基準を持ち続けてください。業界のトップを走る「最高の中の最高」と呼べるアーティストたちを追いかけましょう。彼らの作品を徹底的に分析・探求し、そこで得た知識を自分の作品にどう応用できるかを常に考えることが、クオリティを底上げする近道になります。
最後に、作品のプレゼンテーションには、制作そのものと同等の時間をかけてください。どんなに素晴らしい技術を注いだ作品でも、見せ方がずさんであれば、誰にも気づかれずに埋もれてしまいます。自分の努力を正しく世に届けるために、最後の見せ方にまで徹底的にこだわってください。
「Emma」(コンセプトアート:TB Choi)
Q. 芸術的な目標はありますか?>
それは、成長し続け、心から仕事を楽しむことです。昔からアニメーション長編映画が大好きだった私にとって、ユニークな物語のキャラクター制作に携わることは長年の夢でした。私の目標は、情熱と魂が込められた、新鮮で誠実なストーリーテリングの世界に、アーティストの一員として参加することです。
具体的には、今後テクスチャリングとサーフェシングのスキルを飛躍的に向上させ、スタイライズド キャラクターのルックデベロップメントを深く学んでいく予定です。同時に、構図、色彩、ライティング、そして ストーリーテリングといったアートの基本原則をさらに掘り下げ、表現の幅を広げていきたいと考えています。
「Kaori」
Q. お気に入りのアーティストは誰ですか? 手描き/デジタルどちらでもかまわないので、理由も一緒におしえてください
学び始めた当初、膨大な情報量に圧倒され、どこから手をつければいいのかわからず、途方に暮れたことを覚えています。あふれる学習リソースの中で私が見出した道は、「好きなアニメーション映画のエンドクレジットをチェックして、自分が魅了されたキャラクターの制作者を突き止めること」でした。
そうして出会ったのが、キャラクターデザイナーの ジン・キム(キム・サンジン)氏です。『ベイマックス』『モアナと伝説の海』『塔の上のラプンツェル』『アナと雪の女王』など、彼のドローイングには、圧倒的なダイナミズムと洗練された線の美しさが宿っています。キャラクターに強烈な生命力と感情を吹き込むその表現力に、深く心を奪われました。以来、彼は私の指針となる最も大切なアーティストの一人です。
「The Troll & the Puffin」(コンセプトアート:Jeff Merghart)
他にも、グレン・キーン、Shiyoon Kim、Amy Thomson、Aaron Blaise、TB Choi、Daniel Arriaga など、多くのアーティストを尊敬しています。彼らはそれぞれ独自の表現を持っており、その一人ひとりから学ぶべきものが尽きることはありません。
また、3Dの分野でも、Dylan Ekren、Sergi Caballer、Ryan Tottle、Suzan Kim、Shaun Absher、Zack Petrock、Alena Wooten、Chad Stubblefield、Brandon Lawless といった素晴らしいアーティストたちに出会いました。彼らは今も、私が追いかけ続ける最高のロールモデルです。
「Barbarian」(コンセプトアート:Cory Loftis)
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