【インタビュー】自然や部族文化を描く:イラストレーター Iga Oliwiak 氏

自然や部族文化への愛、フリーランスになる決断、そして、なぜ コンフォートゾーンから抜け出すべきなのか、イラストレーター Iga Oliwiak 氏 が語ります


Iga Oliwiak
イラストレーター/ノマド アーティスト


Q. 自己紹介をお願いします

ポーランド出身のイラストレーターです。スタジオでのフルタイムの仕事を辞め、フリーランスとしてのキャリアに挑戦することを決意し、人生の大きな転換期を迎えました。デジタルイラストやキャラクターを主に描いていますが、それとは別に、戸外制作、特に即興的なガッシュ(不透明水彩)で描くスケッチを好み、訪れた場所の「ビジュアル日記」を作成しています。他にも、さまざまな文化、特にアフリカやオセアニアの部族を研究することにも興味があります。

Addeessa

Q. お気に入りのアーティストは誰ですか? 手描き/デジタルどちらでもかまわないので、理由も一緒におしえてください

尊敬するアーティストは本当にたくさんいます! ウィリアム=アドルフ・ブグロージョン・シンガー・サージェントJ.C.ライエンデッカー のような過去の巨匠から、現代の Richard SchmidRoberto FerriJeremy Lipking までさまざまです。

デジタルイラストはまったく別のトピックで挙げればきりがないのですが、ここでは Cynthia SheppardKarla OrtizPiotr JabłońskiSergey Kolesov を挙げたいです。彼らに共通しているのは、リアリズムを描く能力に長けていることです。また、風景スケッチで最も影響を受けた ネイサン・フォークス についても触れないわけにはいきません。彼がいなければ、私はおそらくこの道に進んでいなかったでしょう。

Emere Necromancer

Q. あなたの作品の多くは、部族の人々や風景、自然をテーマにしていますが、それらのどんな点に魅力を感じていますか?

自然や風景は、私にとって常に大切なテーマでした。理由はよくわからないのですが、おそらく、子供の頃に庭で遊んだり、湖のほとりでカエルを捕まえたり、アヒルに餌をやったり、田舎の平原を自転車で走り回ったりと、外で遊ぶことが多かったからでしょう。

一方、部族の人々については、最近になって非常に興味を持つようになったテーマです。部族の研究を始めたとき、新しい世界が開かれるような感覚がありました。それは、学校で習わなかったことであり、私の周りでは見たことのない人々でした。私はすっかり魅了され、さらに知りたいと思うようになりました。

Swala Cattle

★Swala Elder - Digital Painting Time-lapse by IgsonArt - Iga Oliwiak(9分20秒)

Q. どのようにして「クリエイティブゾーン」に入っていますか? 特定の場所や好みの時間帯がありますか?

私にとって、何かを創作するのに特定の場所や時間は必要ありません。風景スケッチでは、特定のライティング、色の状況からインスピレーションを得ることができます。特に効果的なのは、旅することです(その場所にすぐには戻ってこられないだろうと意識するため、旅先での経験が特に印象深いものになります)。

時間の制約は常に大きな課題です。フルタイムで働いているときは、個人制作にあてる時間がほとんどとれなかったため、昼休みを使ったり、仕事の後にスタジオに残ったりと、できるだけ自由な時間を使うようにしていました。

Omnia

Hyerenn

Q. 最も誇りに思っている作品と、その理由をおしえてください

特に誇りに思う作品はありません。どの作品にも完全に満足することはなく、次はもっと良くなると考えています。ただし、手書きの風景スケッチブックや日記については、誇りに思っています。5年以上継続してきたこと、そして、旅先や新しい場所を訪れるたびに、少なくとも1枚はスケッチを残していることは、大きな達成感となっています。

Asiman Laka woman

Q. 仕事や個人プロジェクトで、どのようなソフトウェア、ツール、テクニックを使っていますか?

伝統的な手描き作品では、主に水彩絵の具とガッシュを使っています。また、油絵具も時々使っており、自宅で過ごす時間が増えると、さらに油絵に取り組む機会が増えるかもしれません。デジタル作品では、PhotoshopWacomタブレット という、デジタルアーティストにとって最も一般的なセットアップを使っています。

Hyerenn

Q. 創造力を発揮できる「コンフォートゾーン」から抜け出すことは重要だと思いますか? もしそうなら、そのために何をしていますか?

抜け出すことはもちろん重要ですが、まず、コンフォートゾーンを持つことも重要です。かつての私にとって、コンフォートゾーンはさまざまな習作を描くことでした。しかし、それがかえって個人制作における制約にもなっていました。今では自分の興味の対象(部族や自然など)を見つけたことで、個人制作がより楽しくなっています。

「コンフォートゾーン」はテーマだけでなく、テクニックや表現方法も含まれるので、主な興味の対象を変えずに、まったく新しいことに挑戦することができます。今のところ、SFやインダストリアルデザインには手を出すつもりはありませんが、動物やクリーチャーを描くことはもっと増えていきそうです!

Sisterhood(※メイキング(日本語)は コチラ

Q. もし時間やリソースに制限がないとしたら、どんなプロジェクトに取り組んでみたいですか?

自由時間にやっていることと、あまり変わらないでしょう。つまり、戸外制作、文化の研究、そして、アフリカンファンタジーに関連するものです。そして、世界中を旅して、その場所の文化を実際に体験しながら絵を描いていきたいです。おそらく、1つのプロジェクトだけに絞れないと思います。私はいろいろなことをやるのが好きなので、1つのことを長くやりすぎると飽きてしまうかもしれません!それが、スタジオの仕事を辞めて、幅広いことに挑戦する道を選んだ理由の1つでもあります。

Kamara

Q. 近年の作品についてお聞かせください

たくさんのアイデアがあります! 当面の間は、すでに取り組んでいるアフリカンファンタジーのプロジェクトに注力する予定ですが、もっと伝統的なことにも取り組んでいこうと思っています。戸外制作や風景画だけでなく、自分のキャラクター作品を伝統的な絵画に落とし込むことにも挑戦したいですね。また、自分の知識をシェアするのも好きなので、チュートリアルやヒントを YouTubeGumroadPatreon などで発信していきたいと思っています。

Trip to Tatra Mountains

 

★Wagadu Rainforest - digital painting time-lapse by IgsonArt - Iga Oliwiak(2分48秒)

■関連チュートリアル
コントラストを描く:『Sisterhood – 姉妹』のメイキング

 


編集部からのおすすめ:グレッグ・ルトコフスキ、ネイサン・フォークス、デヴィン・エル・カーツ..。著名アーティストたちが、アートの必須知識、「構図」や「ナラティブ」を徹底解剖します! 書籍『構図とナラティブ:絵にストーリーを語らせる秘訣』

 


編集:3dtotal.jp