【インタビュー】雰囲気を捉え、新しいものに生命を吹き込む:コンセプトアーティスト/イラストレーター Milan Maksimovic氏
ビジュアルアートに生きがいを見出した セルビアの コンセプトアーティスト/イラストレーター Milan Maksimovic氏 が、これまでの そのアートストーリーについて語ります
Q.自己紹介をお願いします
Milan Maksimovic、24歳。セルビア出身のコンセプトアーティスト/イラストレーターで、ゲームやアニメーションの分野で活動しています。セルビアのクラグイェヴァツ大学の教養学部でグラフィックデザインの学士号を取得し、現在はグラフィックデザインの修士課程に在籍しています(*インタビュー収録時)。
子供の頃からずっと絵を描いており、カートゥンやアニメーション映画に多大な影響を受けていました。最初の頃はスケッチブックをいつも持ち歩き、アニメや映画のキャラクターを模写するだけでしたが、そうこうしているうちに、いつの間にか自分の作品を制作するようになりました。
やがて、現実や空想のさまざまなものをイラストにすることは、単なる趣味ではなくなりました。完璧な瞬間を作り出し、特定の種類の雰囲気を捉え、新しいものに生命を吹き込むビジュアルアートに、自分の生きがいを見出したのです。そのような絵を制作することが目標なので、職業選択には苦労しませんでした。
「The Romrod」:Hammerdale の世界で最も大きく最も裕福な都市。さまざまな視覚要素や合成のルールを用いて、視線を焦点である都市に誘導しています
Q. 制作ワークフローをおしえてください。アイデアはどこから得ましたか?
修士課程の最終試験プロジェクトとして、RPG の環境(エンバイロメント)デザイン・キャラクターデザイン・ポスター・バナー・UI/UX など、すべてを開発することにしました。これは巨大なプロジェクトですが、それを成し遂げるために尽力しています。そして、同時にスキル開発し、新しいことを学び、ポートフォリオのアップグレードも進めています。私は この RPGの世界を探求するため、まず環境作りから始めました。その1つが「The Romrod」です。
制作プロセスはとても単純です。まず、「世界の住人の誰もが憧れる王国の首都、豊かな巨大都市」というアイデアを基に、時間をかけてリファレンスを探し集め、一連のスケッチを作成します。次に、その中から納得の1枚を選び、白黒で作業を続け、構図と明度に満足したら、グラデーションマップでベースカラーをつけます(※)。続けて、ディテールを描き足したり、最初にうまくいかなかった部分を修正したりして、満足のいく仕上がりになるまで、じっくりと描き込んでいきます。この作品は絵画的なルックにしたかったので、ところどころにゆるいブラシストロークを残しています。
※:白黒、グラデーションマップを使ったアート制作の詳細を知りたい方は、書籍『Photoshopで描くデジタル絵画 完全改訂版』をご覧ください。
「The Gate」
Q. 制作で苦労したことはありますか? 新しい学びはありましたか?
作品やプロジェクトに取り組むたびに新しいことを学び、自分の知識や技術を広げようとしています。良い作品を素晴らしい作品にするために、ふさわしい雰囲気を捉えることが継続的な課題ですね。絵画の最大の魅力は何かと問われたら、「見る人を感情的に作品に結びつける雰囲気」と答えるでしょう。
Q. 仕事や個人プロジェクトで他に使用しているソフトウェアはありますか?
はい、もちろんあります。私は、創造的なプロセスを加速させてくれるあらゆるツールを使っています。主に Photoshop ですが、Blender、3DCoat、Octane、Keyshot、ZBrush など、そのときの作業内容に応じて使い分けています。複数のプログラムを使いこなすことは、効率的なプロダクションにおいて重要です。
Q. ポートフォリオをアップデートする秘訣・ヒントがあればおしえてください
常に新しいツールやテクノロジー、オンラインコースを探しています。学生の気持ちをいつも忘れず、自分のアートを向上させるために、できるだけ多くのことを探求したいと思っています。さまざまなテクニックやアプローチを学びながら、同時にユニークなオリジナル作品を作ることが、ポートフォリオを最新の状態に保つためのレシピです。よって、余暇に個人プロジェクトに取り組めば、ポートフォリオを充実させることができるでしょう(多くの商用プロジェクトには、守秘義務があります)。
「Raptor attack」
Q. SNS を使っていますか? お気に入りのハッシュタグをチェックしていますか?
Facebook では複数のグループに属し、作品を共有しています。グループコミュニティはとても協力的なので、作品の改善点について常にフィードバックやポジティブな批評を受けることができます。そして毎日、他の人の刺激的で心に響く作品の数々を目にすると、もっと頑張ろうという気持ちになります。私が所属しているグループは Level Up!、Concept Art and Illustration、Loish's digital art group などです。
Q. 芸術的な目標はありますか?
目標を達成するには努力と献身が必要ですが、私はそれを喜んでやっています。なぜなら、自分が世界に提供できるものがたくさんあると信じ、できるだけ高みを目指したいからです。主にコンセプトアートとイラストレーションに興味があるので、自分の能力という点で、これらの分野で知識を向上・拡大できると思っています。将来は自分のスタジオを立ち上げて、感動的で革新的なアニメーション映画を制作したいですね。
「Main Port」
Q. お気に入りのアーティストは誰ですか? 手描き/デジタルどちらでもかまわないので、理由も一緒におしえてください
私は、Franco-Belgian Comics(バンド・デシネ)アーティストの Uderzo(代表作:『アステリックス』)、Andre Franquin(代表作:『ガストン・ラガフ』)、Morris(代表作:『ラッキー・ルーク』)、そして、印象派のモネやピサロの作品に影響を受けていたので、鮮やかでカラフルな色使いの作品を作るようになりました。
今、私の頭に浮かんだアーティストは、Slawek Fedorczuk、Jama Jurabaev、Eytan Zana、Nico Marlet、Piotr Jablonski、Nicolas Weis です。ここですべて紹介しきれませんが、インスピレーションを与えてくれる素晴らしいアーティストは他にもたくさんいます。
「The essence of power」
Q. 近年の作品についてお聞かせください
今のところ、最大の目標は、修士号を取得するために野心的な最終試験プロジェクトを完成させることです。そのため、プロジェクトに関連した新しい環境やキャラクターデザインをたくさん制作することになるでしょう。ご期待ください。
▼ Milan Maksimovic氏 の最新作はこちらでチェック
https://www.artstation.com/mmaksimovic
編集部からのおすすめ:スピードペインティング、フォトバッシュ..。デジタルペイント・厚塗りテクニックを学ぶには、書籍『Photoshopで描くデジタル絵画 完全改訂版』をおすすめします。