【インタビュー】未完の傑作よりも 完成した平凡な作品を:3Dアーティスト Vova Paukov氏
3Dアーティスト Vova Paukov氏が、どうやって Cedric Peyravernay のコンセプトアートを 3D化したか。そして、キャラクター制作のワークフローやインスピレーションについて語ります
Q. 自己紹介をお願いします
テルアビブの中心部にあって拡大中のゲームスタジオ Jelly Button Games で、シニア3Dアーティスト/チームリードとして働いています。Jelly Button Games は、モバイルプラットフォーム向けのカジュアルゲームの制作を専門としています。
3D担当として、コンセプトアーティストやプログラマーと密接に連携して仕事をしています。プロジェクトには時間がかかり、リサーチが必要になります。制約やルールの計画、テスト、やり直し、承認、統合はすべてプロセスの一部です。
「Calille Case」
Q. 「Calille Case」の制作ワークフローをおしえてください
「Calille Case」では、リアルタイム パイプラインを構築しようと思いました。つまり、リトポロジーしたモデルを Substance 3D Painter でテクスチャリング、Marmoset Toolbag でレンダリングするということです(始める前からわかっていました)。Arnold や V-Ray のようなレイトレース レンダラーも大好きなので、別の作品ではその力も活用しています。
このプロジェクトは中規模で、Marmoset でやると決めていたので、次のステップは適切なリファレンスとモチーフを見つけることでした。Cedric Peyravernay のコンセプトアートに出会った瞬間、私は その張り詰めた感情に衝撃を受け、すぐに引き込まれました。Cedric のスタイルと美学に共感し、その作品にインスピレーションの源泉を見つけたのです。
自分の中にあるアートへの情熱に従えば、不満も減り、腕も上がります。また、プロセスを楽しむことができ、素晴らしい結果をもたらすでしょう
Q. 制作で苦労したことはありますか? 新しい学びはありましたか?
私個人の意見ですが「新しいプロジェクトは課題をもたらし、新たなテクニックやアプローチへと導いてくれます」 つまり、「新しいことに取り組みながら、毎回スキルを向上させることができる」のです。この作品で最も難しかったのは、リアルな肌と Marmoset のプレゼンテーションを作ることでした。
「Calille Case」:Marmoset のライティングセットアップ
ハイポリスカルプトでは Texturing.xyz のマップをベースに使い、その上に手作業でスカルプトしたレイヤーをたくさん重ねています。xyz のマップを使いながら、プロセスについて多くのことを学ぶことができました。このプロジェクトの焦点は、小さい重要な部分である「顔」だったので、xyz のワークフローを練習するのに最適なプロジェクトでした。適切なマップを用意し、シェーダを設定して、Marmoset で正しく見えるようにすることも課題でした。
「Calille Case」:シェーディングプロセス
Q. 仕事や個人プロジェクトで他に使用しているソフトウェアはありますか?
これまで多くのソフトを使ってきたので、様々なワークフローに精通しています。長年の練習の末に、メインツールは Maya と ZBrush に落ち着きました。時には、Marvelous Designer が提供する最高のツールを使うこともあります。もちろん、Substance 3D Painter はテクスチャリングツールの一部でしょう。
いろいろ試した結果「新しいツールを学ぶこと以上に、目の前の作品に集中し、使っているツールでベストを尽くしたい」という考えに至りました。これは「新しいツールを発見し、常に最新のものを取り入れたい」という情熱に相反するものではありません。特に、日々新しいツールが登場するこの業界では、それも重要なことです。
Q. ポートフォリオをアップデートする秘訣・ヒントがあれば おしえてください
私は常にポートフォリオのアップデートに取り組んでいます。時々、古くなったものをチェックし、ためらうことなく削除しています。企業で働きながら、個人制作に取り組む時間を作るのは大変ですが、作りたいものに情熱を感じていれば、必ずその時間を確保できます。だから、私のとっての秘訣は「情熱」と言えるでしょう! 「未完の傑作よりも 完成した平凡な作品の方が優れていること」を念頭に置き、練習し、楽しんでください!
Q. SNS を使っていますか? お気に入りのハッシュタグをチェックしていますか?
はい、私は Artstation コミュニティの一員だと思っています。そこには、多くの才能ある友人たちもたくさんいます。第二の CGHub とも言える Artstation は、あらゆる種類のデジタルアーティストのための巨大なサイバー空間になっています(2024年に閉鎖された CGSociety も私のお気に入りのサイトでした)。Facebook では「Ten thousand hours」と「Level Up!」というグループをフォローしています。私の Instagram のアカウント では、多くの伝統的なドローイングアーティストや彫刻家をフォローしています。
Q. お気に入りのアーティストは誰ですか? 手描き/デジタルどちらでもかまわないので、理由も一緒におしえてください
好きなアーティストや影響を受けたアーティストはたくさんいるので、お気に入りを挙げるのは本当に難しく、そのリストは今も増え続けています。以下に、そのいくつか挙げてみましょう。
お気に入りのアーティストの作品は、ディテール、構図、スタイル、色への強いこだわりでよく知られています。ゴージャスでシンプルなものと同じくらい、奇妙でひねくれたものも大好きです。人体は、その人物の特徴や物語を備えた完璧な芸術作品だと思っています。このような要素の組み合わせに魅力を感じ、アーティストたちが作品の中でそれを表現する方法に共感しています。
3D(デジタル):Niyazi Selimoglu、Assel Kozyreva、Gabriel Soares、Maria Panfilova、Oliver Milas、George Nagulov、Eugene Fokin
2D(デジタル):Azat Nurgaleev、Maxim Verehin、Cedric Peyravernay、Aleksandr Nikonov、Bastien Lecouffe Deharme、Nurzhan Bekkaliyev、Igor Sid、Piotr Jabłoński、Sergey Kolesov
3D(伝統的):Aris Kolokontes、Brian Booth Craig、Tomek Radziewicz
2D(伝統的):グスタフ・クリムト、ルイス・リカルド・ファレロ、ハーバート・ジェームス・ドレイパー、イヴァン・ビリビン
その他にも、まだまだたくさんいますが、これくらいにしておきます。
Q. 近年の作品についてお聞かせください
次回作のビジョンはまだ明確ではありませんが、今からとても楽しみです! 制作する上でのガイドラインはいくつかあり、印刷可能な静止画、リアルなものになる予定です。前回のプロジェクトと同じワークフローに基づき、おそらく Arnold でレンダリングするでしょう。Instagram や Artstation ページで、私のさらなる新作をフォローしてください。ここまで読んでくれて、ありがとうございます!
編集部からのヒント:人型キャラクター制作のリファレンスには『アーティストのための人体解剖学ビジュアルリファレンス』を、制作テクニックを習得するには、書籍『3Dアーティストのための人体解剖学』 やおすすめします。