【インタビュー】兵役を終え、3Dの世界へ:3Dアーティスト Andrea Bertaccini 氏
Tredistudio を設立した イタリアの 3Dアーティスト Andrea Bertaccini 氏 が これまでのこと、そして、日々のインスピレーションについて語ります

Q. 自己紹介をお願いします
フィレンツェで建築を学びました。しかし、当時は鉛筆を使うしかなく、コンピュータについて聞ける教授もいませんでした。この世界に足を踏み入れたきっかけは、兵役です。軍からオフィスへ配属され、486 の前で 「やってみろ」と言われましたが、その頃は電源の入れ方すら知りませんでした。
兵役を終えると、初めて PC を購入し、3ds Max の勉強を始めました(Windows で使えた最初のバージョンで、頭の中のアイデアを具現化できる可能性に惹かれました)。1996年以来、独学で勉強してきました。当時の独学は特に大変で、オンラインリソースはなく、数冊の本と制作への強い意欲があるだけでした。
しばらく苦しみながら、多くの時間をコンピュータの前で過ごし、さらに夢中になりました。その後、建築スタジオ(Studio Lucchi & Biserni)とコラボレーションするようになり、その瞬間から、自分の情熱がお金にもなるということを理解したのです。2000年になると、さまざまなサービスを提供する1つの組織として、さまざまな技術を統合するため、Tredistudio を立ち上げました。現在は、建築ビジュアライゼーション、キャラクターデザイン、コンセプトデザイン、広告など、クリエイティビティを発揮できるあらゆる場所で仕事をしています。
プロジェクト「Charlize」|「LORRANE」
★映画『アトミック・ブロンド』予告編(2分37秒)
Q. 「LORRANE」の制作ワークフローをおしえてください
「LORRANE (ロレーン)」のイメージは、何年か前から展開している個人プロジェクトの一部で、基本的には シャーリーズ・セロン に捧げるファンアートです。特にこれは、メレディス(映画『プロメテウス』)とフュリオサ(映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』)に続く3番目の作品です。プロジェクトは数年前に始めましたが、この期間も常にモデルを改良し、ディテールを修正し続けました。
シャーリーズ・セロンの頭部モデル
★シャーリーズ・セロンの眼球:Charlize EYE WIP(15秒)
「LORRANE」ではポーズを決めるのに、多くの時間を費やしました。ロレーンの気品と謎めいた雰囲気を残したかったので、タバコを持つ腕の下に銃を持たせ、地面にはロシアのウォッカ「ストリチナヤ (Stolichnaya)」のボトルを置いています。
Q. 制作で苦労したことはありますか? 新しい学びはありましたか?
残念ながら、3ds Max には Maya(X-Gen)のような優れたファイバーエンジンがないので、Ornatrix を学ばなければなりませんでした。極めるところまではいっていませんが、購入して非常に満足しています。その強力なモディファイアシステムにより、柔軟性が非常に高まっています。
Q. 仕事や個人プロジェクトで他に使用しているソフトウェアはありますか?
私のパイプラインは、常に 3ds Max で構築されています(今では、私のコアアプリケーションになっています)。個人プロジェクトや仕事のプロジェクトでは、お気に入りの ZBrush や Adobe 製品 (特に Photoshop と Lightroom、Substance 3D Painter)、Ornatrix、そして レンダラーの V-Ray、Corona、Arnold などのソフトウェアも多用しています。
Q. ポートフォリオをアップデートする秘訣・ヒントがあれば おしえてください
良い質問ですね。私は品質やスキル的に面白そうなものだけを掲載するようにしています。なぜなら、時間の都合やクライアントの奇妙な選択によって、作品は必ずしも最高品質ではないからです。ポートフォリオは世界への窓であり、それによって評価されるため、できる限り最高のものでなければなりません。
ポートフォリオ
Q. SNS を使っていますか? お気に入りのハッシュタグをチェックしていますか?
SNS の最新情報をチェックしようと努めていますが、常にできているわけではありません。SNS が今日の強力なコミュニケーション手段であることを知っています。一連のサイトと関連する Facebook および Instagram のページを毎日見ています。
• Treddi.com:イタリアのグラフィカルポータルサイトで、最も多くフォローされています
• 3dtotal:真面目な話、私の知る限り 最も老舗でプロフェッショナルなサイトの1つです
• ArtStation :近年はリファレンスとしてよく使っています
• ZBrush Central:ZBrushを使うなら必見です
• VWArtclub:より建築ビジュアライゼーション志向ですが、質の高さは間違いなく注目に値します
• CGArchitect と Evermotion :デジタル建築に有用です
他にもたくさんありますが、これくらいにしておきます。
Q. 芸術的な目標はありますか?
学び続けることです。「目標が学ぶこと」と聞くとおかしいかもしれませんが、年月を経るにつれて、CG の世界では学びが終わることはないのだと実感しています。コンピュータグラフィックスには、探求していない分野や詳しく知らない分野がまだたくさんあります。この素晴らしい職業に関連する内容をすべて理解できるようになりたいですね。私から好奇心と向上心が消えないことを願っています。
Q. お気に入りのアーティストは誰ですか? 手描き/デジタルどちらでもかまわないので、理由も一緒におしえてください
Steven Stahlberg や Alessandro Baldasseroni のような巨匠から、Ian Sprigs や Luc Bégin といった若いアーティストまでさまざまです。私の Artstation のお気に入り(Likes)ページやフォロー(Following)を見れば、ひと目でわかるでしょう。
キャラクターデザイン(特に似顔絵)では、Jacques Defontaine の作品が大好きです。彼の制作した「R. Perlman (ロン・パールマン)」は、これまで見た中で最も優れたポートレートの 1つです。他にも、ディテールへの異常なこだわりで気になっているのが Andre Cantarel です。彼の再現した「The White House (ホワイトハウス)」と「Mi-24 Modeling Updates」は、ディテールへのこだわりの最高峰と言えるでしょう。
Q. 近年の作品についてお聞かせください
いくつかのプロジェクトが進行中で、少なくともあと2つ、3つは作る予定です。見る人を飽きさせないために、制作物の種類やテーマを変えたいですね。
プロジェクト「Surfer」
Sina(モデリング、テクスチャリング、シェーディングを担当/「The Elder Scrolls Online: Gates of Oblivion」より)
編集部からのヒント:人型キャラクター制作のリファレンスには『アーティストのための人体解剖学ビジュアルリファレンス』を、制作テクニックを習得するには、書籍『3Dアーティストのための人体解剖学』 やおすすめします。