【インタビュー】すべてのプロジェクトから学びを。シニア モデラー Cristina “Ina” Ortega 氏

スペインの シニア モデラー/キャラクターアーティスト Cristina Ortega氏 が その制作ワークフローやインスピレーションについて語ります


Cristina Ortega
シニア モデラー|スペイン


シニアモデラー/キャラクターアーティスト Cristina "Ina" Ortega は、Jellyfish Pictures の長編アニメーションに携わり、素晴らしいキャラクターのコンセプトやモデルを制作、現在は Animal Logic に在籍しています。最新のギャラリー作品は、Laia Lopez氏 の コンセプト を元に制作した「Michi」です。それでは、彼女に、ワークフローとインスピレーションについて聞いてみましょう。

Q. 自己紹介をお願いします

こんにちは。スペイン出身の Cristina Ortega です。SNS では Ina Ortega というニックネームを使っています。この業界で最初の 5年はモデラーとして働き、さまざまな分野を経験してきました。ゲームのモデリングから始まり、VRアニメーションのモデリングを経て、その後の 3年間は長編アニメーションのモデラーとして働きました。Jellyfish Pictures(ロンドン)を経て、現在は Animal Logic に在籍、スペインからリモートで仕事をしています。

最新ギャラリー作品「Michi」

Q. 制作ワークフローをおしえてください。アイデアはどこから得ましたか?

最新のギャラリー作品は「Michi」というキャラクターです(コンセプト制作:Laia Lopez氏)。2020年に起きたパンデミックにより、仕事後に自宅で自由な時間ができたので「Creating appealing characters with Dylan Ekren (Dylan Ekren の魅力的なキャラクターの作り方)」を受講しました。そこで シェイプ ランゲージ について多くを学んだのをきっかけに、プロジェクトとして このキャラクターを作ることにしました。

いつもは ベースメッシュから始めますが、今回は ZBrush の球から作成しました。私は、簡単なものから複雑なものまで、よいシェイプ ランゲージを保つことに気を配りながら作業します。ボディをスカルプトしたら、Maya でリトポロジと UV設定 をします。

シャツは Marvelous Designer で作成し、靴とジーンズは Maya でモデリングしました。髪の毛は、ZBrush の[hair tube]ブラシで作成した後、Maya で一塊ずつ編集しています。ポーズは ZBrush でとりました。サーフェスはシンプルにしたかったので、ポリペイントでカラーテクスチャを作成し、マップを書き出しています。ライティングとレンダリングには Arnold、最終合成には Photoshop を使用しました(※「Michi」のメイキング

「Michi」スカルプト ワイヤフレーム

Q. 制作で苦労したことはありますか? 新しい学びはありましたか?

最も苦労したのは「髪型」と、コンセプトにはない「腕や手の位置」の部分ですね。2D から 3Dへの変換は、複雑になる場合があります。2D では良く見えても、そのまま正確に 3Dに変換するとおかしく見えるのです。変更が必要になることもありますが、それはキャラクターとそのアピールを向上させるチャンスでもあります。このプロジェクトを通して、2D3D変換のテーマについて 多くを学ぶことができました。

Q. 仕事や個人プロジェクトで他に使用しているソフトウェアはありますか?

リファレンスに PureRef、モデリングに ZBrush と Maya、衣装に Marvelous Designer、テクスチャリングに MARISubstance、レンダリングに Arnold、Keyshot、そして Photoshop を使用しています。

ベルのドレス:Marvelous Designer のパターン

ムーランのドレス:Marvelous Designer のパターン

Q. ポートフォリオをアップデートする秘訣・ヒントがあればおしえてください

私にとって 3Dアーティストとは「常に学び、挑戦し続け、最新のソフトウェアを使いこなし、上達するために新しいものを創り続ける人」を意味します。しかし、フルタイムで働いていると、時間を確保するのは大変です。

個人プロジェクトは、少なくとも週に2回、仕事の後と週末で取り組むようにしています。着手したものをすべて完成させているわけではありません。ここで重要なのは、すべてのプロジェクトから学ぶことです(特に失敗から多くを学べます)。そして、時には自分を奮い立たせ、最終レンダリングすることもあります。

行き詰まったときのコツは、3D の個人制作を止めて、2D の伝統的な制作に取り組むことです。PC から少し離れると、自分のやっていることが明確になることもあります。

ベルのドレス:クレイ レンダー

Q. SNS を使っていますか? お気に入りのハッシュタグをチェックしていますか?

3dtotalArtStationZBrush Central を毎日チェックして、インスピレーションを得たり、他のアーティストから学んだりしています。また、Marvelous Designer の Discord チャンネルでは、素晴らしいヒントやチュートリアル、フィードバックが共有されています(私もできる限り参加しています)。Instagram では、使っているソフトウェアの新機能やリリースのニュース、取り組んでいるプロジェクトに関連するハッシュタグをフォローしています。また、伝統的なドローイングアーティストや彫刻家もフォローしています。

ベルのドレス:カラーレンダリング。ディズニー映画のオリジナルドレスをベースにした Marvelous Designer の個人プロジェクト

ムーランのドレス:カラーレンダリング。ディズニー映画のオリジナルドレスをベースにした Marvelous Designer の個人プロジェクト

Q.芸術的な目標はありますか?

最高のアーティストであり続けること、成長し続けること、そして制作への情熱を失わないことです。これは終わりなき学びの旅であり、素敵なことだと思います。近い将来、テクスチャやサーフェスの技術を向上させ、XGen も少し勉強したいですね。

ムーランのドレス:クレイレンダー

Q.近年の作品についてお聞かせください

今は Marvelous Designer で、ディズニーをモチーフにしたドレスコレクションを制作しています。これまでにベルとムーランのドレスを完成させました。このように、非常に複雑なパターンに挑戦するのは、とても良い訓練になり、そこから多くのことを学べます。また、好きなキャラクターのコンセプトがいくつか浮かんでいるので、もう1回休みを挟んで、別のキャラクターに挑戦しようと思っています。

 


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編集:3dtotal.jp