【インタビュー】書籍『完成データ付 CGキャラクター制作の秘訣』をリリース:3Dキャラクターモデラー 江原 徹 氏

大作ゲームのキャラクターやバーチャルヒューマンをつくってきた 3Dキャラクターモデラー 江原 徹 氏 が、制作活動、そして、著書『完成データ付:CGキャラクター制作の秘訣』について語ります


江原 徹
3Dキャラクターモデラー|日本


Q. 自己紹介をお願いします

はじめまして、3Dキャラクターモデラー の 江原 徹 です。これまで いろいろなスタジオ、プロダクションでの勤務を経て、現在は フリーランスとして活動しています。得意ジャンルは、リアル から デフォルメ、そして、アニメまで、様々なキャラクターをつくってきました。

2012年の作品

Q. どこからインスピレーションを得ていますか

高校生くらいの頃に「Final Fantasy」のムービーを見て、ものすごく感動し、「自分も 3DCGで同じような映像をつくってみたい」という気持ちが沸き上がりました。この体験が 今の私をつくったといっても過言ではありません。

2015年の作品

Q. 書籍『完成データ付 CG キャラクター制作の秘訣』についておしえてください

書籍『完成データ付 CG キャラクター制作の秘訣』は、表紙の女性キャラクターのメイキングをまとめた書籍です。デザイン、3Dでのボックスからのモデリング、テクスチャリング、ポージング、コンポジットなど、完成までの工程、そして、制作において気をつけることなどを書きました。「完成データ」「素体データ」「Photoshop データ」などはダウンロードできます。書籍の内容を 実際のデータで確認できるようにしています。(※3Dデータは、fbx 形式(.fbx)も用意。読み込めるCGソフトであれば、じっくり確認することが可能)

Q. 使用ソフトについておしえてください

主な使用ソフトは、MayaZBrushPhotoshopMarvelous DesignerSubstance 3D PainterxNormalLightroom などです。髪の毛の作成には、Maya の標準機能の XGen を使っています。

2015年の作品

Q. 制作ワークフローについておしえてください

今回は、書籍のオリジナル作品に絞って答えさせていただきます。

まずは、キャラクターデザイン。Pinterest を活用して リファレンス(画像資料)を集めています。デザインの際は、その画像を 頭の中で組み合わせて 「いい見た目」 「かっこいいシルエット」などを想像し、デザインに落とし込んでいます。その際、「アクセントになる色」「ディティールの強弱」を意識し、見栄え重視でデザインしています。

次は、モデリング。基本的にモデリングは「大まかな形」から作っていく事が基本です。ただ、私の場合、「1か所を作り込み、そのクオリティに他の箇所のクオリティを追いつかせる」という作り方をする時があります(ただし この手法は、自主制作のみに限ります)。キャラクターデザインはありましたが、パーツ数も多く、作りながら「この方が見た目が良いかな」「こっちの方が合っているかも」など試行錯誤して作ったので、かなり時間がかかりました。

テクスチャリングでは さまざまな質感表現が必要となるので、それに特化している Substance 3D Painter を使用しました。ディスプレイスメントマップの出力には ZBrush を使っています。また、ある程度、目指す質感に近づいたらテクスチャを Photoshop で調整し、モデルに適用しています 。

ポージングは、主に2通りあると思っています。1つ目は「ボーンを入れてポージングさせる手法」、2つ目は「ZBrush でポージングさせる手法」です。私の場合は、Aポーズ でキャラクターを作り、ボーンを入れて セットアップしてから ポーズを付けています。その後、ZBrush で破綻箇所を直しています。

最後に ライティングとコンポジットです。この際、「どのような雰囲気の作品にするか」というビジョンが明確でないと、明確である場合との間に 大きなクオリティの違いが出てしまいます。上手くモデルができ、ポーズをつけれたからといって、ライティングとコンポジットを安易にすると、最終的な完成クオリティが低くなってしまいます。とことん「良い画」になるように、妥協せず調整します。

Q. 制作で苦労していることはありますか?

やはり、キャラクターは「顔が命」なので、調整に調整を重ね、ベストな形状になるまで、とことんこだわっています 。キャラクター制作も、場数がとても大切です。作る回数分、学びがあります。そこに面白さや、やりがいを感じてくると、上達が早くなると考えています。

2020年の作品

Q. 今後の展望についてお聞かせください

最近では、3DCG のリアルなキャラクターを手軽に作ることができる MetaHuman などのツールが開発されています。おそらく、今後、そういったツールで作られた リアル系バーチャルヒューマンが増えてくるでしょう。

その中で、つくったキャラクターが埋もれてしまわないように、新しい技術を吸収、学び続けて、スキルや強みを高めていきたいと思っています。また、ニーズがあれば、書籍の第2弾を出版できたらいいなと思っています。

 

 

江原さん、お時間をいただきありがとうございました。(3dtotal.jp)


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編集:3dtotal.jp