【インタビュー】叙情的なシーンを制作:ライティングアーティスト Lee Seong Hong氏

韓国のライティングアーティスト Lee Seong Hong(イ・ソンホン)氏 が、個人制作への取り組み方、アーティストとして自信を深める方法、インスピレーションや抱負を語ります


Lee Seong Hong
ライティング/レンダーアーティスト|韓国


Q.自己紹介をお願いします

こんにちは! 韓国のアニメーション会社 Millionvolt で働いているライティング アーティストの Lee Seong Hong です。私は、映画・アニメーション・広告など、どんな分野の仕事も楽しんでいます。また、新しいことを学ぶのも好きで、スタイリッシュなキャラクターがお気に入りです。これから質問にお答えする前に、私は英語が苦手であることをご理解ください(※インタビューは英語で行われました)。

 

作品「Love Letter」より

Q. 制作ワークフローをおしえてください。アイデアはどこから得ましたか?

以前の私は、就業時間外に自分の制作をする勇気がありませんでした。そこで、過去に行った個人プロジェクトの1つ、ArtStation にあるコンセプトアートを 3D化することで練習・開発することにしました。以下の動画は Z.W. Gu氏 の素晴しい イメージ を基に作成した「Train」です。

 

★「Train」(1分13秒)

少し勇気が出るようになると、既存のコンセプトアートをベースにいくつか新しい挑戦をして、自分のスタイルを確立していきました。PiNe(パイネ)氏 の「青い午後」をリファレンスに、少しアクションを加えたプロジェクト「In Blue」。そして、Dao Trong Le氏 の「SNOW」を参考に作成した「SnowGirl」では、Spine のような動きを取り入れました。

 

★「InBlue」(37秒)
★「SnowGirl」(51秒)

これらの作業で自信をつけてからは、縛られることなく自分の作りたいものを作れるようになりました。個人制作では、「自分で作りたい」「楽しみながら作りたい」と考え、それを実践してきました。

新作「Love Letter」は、映画『Flipped』(2010年) を見て、学生の初々しく美しい愛を表現したいと思い、はじめた作品です。まず行うのは、もちろん リファレンスの収集です。本作では「Flipped」を最も検索しましたが、図書館の写真・カメラ・レイアウト・色なども参考に、さまざまな方法でリファレンスを探しました。

 

★映画「Flipped」のトレーラー(2分31秒)

個人制作の進め方はよく似ていますが、アプローチはそれぞれです。私は、キャラクターやモデリングのラフを先に進めて、大まかなレイアウトを設定します。このようにして、進めたいと思うものを大きく作ります。

その後、大まかにラフなライティングを施します。実際には、他のパイプラインの後にライティングを始めることが推奨されていますが、まず楽しいことをやりたいので、私は この作業工程を好んでいます。

 

作品「Love Letter」より

そして、ディテールを 1つずつ積み重ねていきます。これは、いたるところに加えるのではなく、主要な部分に集中して加えていきます。メインキャラクターの開発から始め、最も注目されている部分のディテール(靴下など)を重ねていきます。

 

作品「Love Letter」より

私のワークフローの特徴は、それぞれの作品でセルフフィードバックを行うことです。その日の作業の静止画を保存した後、寝る前にもう1度見直し、おかしな部分、手直しが必要な部分などをチェックして印をつけます。そうすれば、次の日のガイドラインになります。また、周囲の人から遠慮のないフィードバックをもらうのも 1つの方法です。

Q. 仕事や個人プロジェクトで他に使用しているソフトウェアはありますか?

キャラクター制作には かなりの時間を要します。短期間で質の高い作品が求められる業界の流れに沿って、キャラクター制作の時間を短縮したいと常々考えていました。

Character Creator は 不安を解消してくれました。キャラクターリギングはもちろん、表情のブレンドシェイプからスキンやメイクのプリセットまで用意されており、リアルなキャラクターだけでなく、スタイリッシュなキャラクターの作成にも重宝するプログラムです。中でも驚いたのは、肌情報をアップロードしたときに基本マップが用意されていることと、ルックデヴに必要なIDなどのユーティリティマップが自動で用意されることです。

V-Ray 5 に搭載されたライトミキサーの新機能により、ルックデヴにかかる時間が大幅に短縮されました。Nuke で行うライトパス合成のように、レンダリングを繰り返さなくても、フレームバッファ内のライトを組み合わせてルックデヴを進めることができます。これらは、時間を節約する機能であると断言できます。

 

Q. お気に入りのアーティストは誰ですか? 手描き/デジタルどちらでもかまわないので、理由も一緒におしえてください

たくさんいますね。エレガントな彫像を作る Zelong Xu、魅力的な女性キャラクターを描く Z.W. GuDao Trong LeShal.EWLOP。テクスチャリングマスター Paul H. Paulino と、いつも素晴らしい作品を見せてくれる Victor Hugo、そして、色の使い方が秀逸な Atey Ghailan など。

最も尊敬するのは、Sang-ho Jung です。彼は韓国のVFX業界の発展のために常に尽力しており、国内のVFXカリキュラムや各種情報を惜しみなく公開して、新人アーティストのレベルアップに貢献しています。新人が優秀であればあるほど業界は発展すると思うので、彼を応援し、国内のVFX業界のために貢献していきたいです。

Q. 近年の作品についてお聞かせください

最初に述べたように、これからも自分の好きな作品に取り組んでいきたいと思います。何かの流行に合わせて作るのではなく、自分が本当に楽しめるものを作りたいのです。最後に、私の作品を楽しんでくれた多くの人に感謝します。これからも幸せな個人制作を続けていくので、次回作でお会いしましょう。ここまで長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

 

★「화양연화」(人生で最も美しく幸せなひととき)(1分4秒)

>>【インタビュー】制作活動の軌跡:ライティングアーティスト Lee Seong Hong氏


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編集:3dtotal.jp