【インタビュー】ピクサーのライティングにインスパイアされて:シニア ライティング&コンポジティング アーティスト Saravanan Govindaraj氏

シニア ライティング&コンポジティング アーティスト Saravanan Govindaraj氏 が、自身のワークフローやポートフォリオの作品について語ります


Saravanan Govindaraj
シニア ライティング&コンポジティング アーティスト


Q. 自己紹介をお願いします

こんにちは。シニアライティング&コンポジティング アーティストの Saravanan です。私は、子どもの頃から漫画やアニメーション映画が大好きでした。現在は 3Dシーンで、ストーリー・ムード・感情などを伝えるためのライティングを行なっています。担当はシェーディング・ライティング・レンダリング・コンポジットなので、モデリングとテクスチャリングは余暇にやっています。生まれはインドですが、現在マレーシアで働いています。

個人プロジェクト「A Perfect Date」では、ピクサーの短編アニメーション『ブルー・アンブレラ』(2013年)の素晴らしいリファレンスを基に、多くのインスピレーションを得ました。キャラクターアセットは Academy of animated art から提供されたものを使い、他のアセットはさまざまなところから入手しました。私は シェーディング・ライティング・コンポジットを行いました

★メイキング映像:A_perfect_Date_Breakdown(57秒)

Q. 制作ワークフローをおしえてください。アイデアはどこから得ましたか?

素晴らしい経験となったこのプロジェクトは、ピクサーの短編アニメーション『ブルー・アンブレラ』の影響を受けています。リファレンスにしたムードやカラースクリプトは最高で、ワークフローも面白かったのですが、少し複雑でした。ACES(※1)の CGカラースペースを使いましたが、そのワークフローを理解するのに苦労しました。

★『ブルー・アンブレラ』特別映像(30秒)

Q. 制作で苦労したことはありますか? 新しい学びはありましたか?

「A Perfect Date」のアイデアは、1枚のシンプルなスナップショットを選ぶというものでしたが、ショットの設定中に問題が起こりました。このシーンは単一アセットではなく、さまざまなアセットを自分で装飾し、作り込んだものです。そのため、不完全な構図に何度もがっかりさせられ、見映え良くなるまでに多くの時間を要しました。しかし、この作品を通して ACES の CGワークフローを学び、見る人を感動させる色・コントラスト・構図の重要性を理解することができました

★リール 2019 その1: Saravanan_Govindaraj_Lighting_Compositing_Reel_2019(2分56秒)

Q. 仕事や個人プロジェクトで他に使用しているソフトウェアはありますか?

ほとんどの作品で Maya を好んで使っています。新しい技術やスキルを学ぶのが好きなので、近年、業界でよく使われている KATANA(※2)を学び始めました。プロの現場や実写でも広く使われるようになった Arnold レンダラーを使っていますが、Redshift を新しくワークフローに加えました。これを1ヶ月学んだあとに、プロジェクト「Hope」を完成させました。

プロジェクト「Hope」。『アナと雪の女王2』(2019年)のさまざまなムードに触発され、その中から1つを題材に選びました。Academy of Animated Art で提供された mushroom girl のアセットを使い、よい経験ができました。他にもいろいろなところからたくさんのアセットを入手し、装飾しています。私がこの作品で行ったのはシェーディング・ライティング・ルックデヴ・コンポジットです。初めて Redshift を試しましたが、いくつかの問題が生じました。次回作ではもっと上手く使えるように学習を続けたいと思います

Q. ポートフォリオをアップデートする秘訣・ヒントがあればおしえてください

以前は個人制作を頻繁に行なっていました。始めるときは必ずシンプルな作業から手を着け、ある段階まで進めたら、さらに磨きをかけていきます。これが作品をシンプルに保つための秘訣であり、作成したものはポートフォリオに追加します。私のポートフォリオには、これまで制作した中で最高のものを含めています。こうして、より良い作品を作るために自分を常に追い込み、ポートフォリオの一部にできるようにしています。アイデアを出して、ディテールを詰めていきましょう!

プロジェクト「Judy's Case」は、職場の課題として取り組みました。主な動機は、キャラクターのファー(毛)を学び、そのライティングを行うことです。XGen を使った初めてのクリーチャーファーで、仕事をやりながら、楽しく学べました。初心者なりにベストを尽くしましたが、次回作ではもっと上手く表現したいと思います

Q. SNS を使っていますか? お気に入りのハッシュタグをチェックしていますか

これまで私は Acadamy of Animated Arts グループのメンバーとして活動してきました。このグループは本当に最高で、とても感謝しています。メンバーを通して多くのことを学び、その素晴らしいアセットを使って常に練習しています。お気に入りのハッシュタグは #lighting、#shading、#compositing、#concept art です。

Q. 芸術的な目標はありますか?

新しいアートの機会や実験に取り組み、研究を続けて、良い結果を出したいです。そして、アニメーションの世界でもっと大きなことを成し遂げたいと思っています。私なりのアートの見方を示せる立場に到達したいのです。

プロジェクト「MOON BUG'S」。Acadamy of Animated Arts のチャレンジ TDU lighting challenge November のために制作した作品です。提供されたアセットのおかげで、楽しみながら良い経験ができました

★リール 2019 その2: Saravanan_Govindaraj_Lighting_and_Compositing_Reel_2019_Part02(2分10秒)

Q. お気に入りのアーティストは誰ですか? 手描き/デジタルどちらでもかまわないので、理由も一緒におしえてください

Jeremy Vickery(『ブルー・アンブレラ』のライティングも担当した 元ピクサーのアーティスト)です。彼のカラースクリプト・アイデア・ライティングが大好きで、夢中になっています。アニメーションの勉強を始めたとき、最初にインスピレーションを受けたのが Jeremy です。

このプロジェクトは、Facebook の TDU Lighting コミュニティのために作りました。伝えたかったのは「女の子がしばらく使っていなかった部屋からクマのぬいぐるみを見つける」というストーリーで、夜間のライティングを目指しました。私はシェーダ・ライティング・コンポジットを行い、モデルとテクスチャーは TDU Lightingコミュニティから提供されたものを使っています。まだまだポリッシュを続けていますが、気に入ってもらえると嬉しいです(シーン制作:Alex Mateo、コンセプトアート:Jeremy Vickery)

Q. 次回作についてお聞かせください

自分のスキルやワークフローを向上させるための計画をリストアップしています。そこで、ステップごとに集中して取り組むつもりです。次の大きな目標は、KATANA を学んで、素敵なアートワークやアニメーションショットを作ることです。そのためのコンセプトに今も取り組んでいます。早くお見せできるといいですね。

★リール 2020:Saravanan_Govindaraj_Lighting_and_Compositing_Reel_2020(2分29秒)

 

※1:ACES の関連記事:Scene-linear Workflow/ACES(AREA Japan)https://area.autodesk.jp/column/trend_tech/scene_linear_workflow/

※2:KATANA の関連記事:KATANA 4.0リリース!ついに国内でも走り出したコンカレント型パイプラインプロジェクト。その導入から、検証デモ、展望まで、しっかり解説(CGWORLD.jp)https://cgworld.jp/feature/202012-katana.html

 


編集部のおすすめ:CG におけるライティングの基本を学ぶには、ディズニーやドリームワークスで活躍したベテランCGアニメーター/ VFXアーティスト Lee Lanier氏 の著書、書籍『CGライティングの最強の教科書』をおすすめします。

 


編集:3dtotal.jp