【インタビュー】「マジック:ザ・ギャザリング」や「スター・ウォーズ」のイラストを制作:フリーランス アーティスト Tomasz Jedruszek氏

「マジック:ザ・ギャザリング」や「スター・ウォーズ」のイラストを制作。ポーランド出身の フリーランス アーティスト Tomasz Jedruszek氏 が、仕事と生活のバランス、個人制作、そして、そのワークフローについて語ります


Tomasz Jedruszek
イラストレーター/コンセプトアーティスト|ポーランド


Q. 自己紹介をお願いします。あなたは何者ですか?

とんでもない質問ですね。40年近く、私は、その答えを探し求めてきました。ポーランドで生まれ、長い間、日々の生活に奮闘してきましたが、今では、アーティスト、夫、父親となり、とても充実しています! 子どもの頃は『スター・ウォーズ』を見たり、『指輪物語』を読んだりしたのを覚えています。いつかその世界の一員になることを夢見て。今は、夢見ていたすべてを体現していると言えるでしょう(ヘビメタ雑誌の表紙を飾ることも含め)。

私の『ゲーム・オブ・スローンズ』関連の作品は、いつも HBOファンに衝撃を与えています。カードゲームのプレイヤーからも愛され、定期的に注文を受けています

Q. あなた自身のアートについて、スタイル・テーマ・ジャンルや、これまでに手がけたお気に入りのプロジェクトなどをおしえてください

「スタイル」を語るのに、私はふさわしくないかもしれません。初期のインスピレーションは 19~20世紀のポーランドの絵画から来ています。人間や叙事詩的なシーンを描くのが好きです。新ロマン主義 に近いかもしれません。それとは対照的に、昔から大のマンガファンでもあり、スタイルにも その影響が表れています(強い輪郭、深い影、大げさに解釈された身体のプロポーションと顔の造作など)。

作品のテーマは、中世・キャラクター・大規模な戦闘・海戦などで、ジャンルは、SFやホラーに比べ、ファンタジーが多めです(エロティックなものはほとんどありませんが、これは、実際の好みとは正反対です..)。好きなプロジェクトの 1つは、トレーディングカードゲーム『マジック・ザ・ギャザリング』で、出版社の ウィザーズ は、私に解釈と創造性の余地を与えてくれます。最近ではボードゲーム『トワイライト・インペリウム』を完成させました。

数年前に初のグラフィックノベルをほぼ完成させたのですが、そのプロジェクトはお蔵入りになりました

Q. 通常のワークフローと、普段使用しているソフト/ハードについておしえてください

多くのプロジェクトに携わっているので、ワークフローを効率化し、迅速に進めなければいけません。ずさんな計画の低予算プロジェクトの場合、ほとんど余裕がないでしょう。時には非常に限られた予算で、調整や修正を繰り返し求めてくるクライアントもいます..。そして、最終的に「我々が期待していたようなものではない」と言ってきます。できれば、そのような仕事は受けない方がよいでしょう。私はこの業界で十数年働いてきた結果、最初のメールでそのようなクライアントを見極め、紳士的に断れるようになりました。もちろん、今でも たまに遭遇しますが、大抵はスムーズに進められています。

最近の「スター・ウォーズ」のカードイラスト

通常は アートの説明を受け、予算に応じて スケッチや数枚の絵を描き、クライアントからのフィードバックを受けて イラストを完成させます。最後に少し時間があるので、最終調整や手直し、小さな修正を施します。使用ソフトは Photoshop、マシンは RAM 32GB、普通のGPU(GTX680)、Core i7 を搭載したカスタムPCを使っていますが、もう少し強力なマシンに交換するつもりです(32GB は最低限なので、64GB を検討していますが、おそらく128GB に決めるでしょう)。また、タッチ機能の Wacom タブレットIntuos 5 を使っていましたが、私には合わなかったので、他の Intuos シリーズ や Cintiq に買い換える予定です。

『This War of Mine』のイラストは Artist on Board の友人と一緒に作成しました

Q. あなたを奮い立たせるものはありますか?

人生であり、私の周りにあるすべてのものです(この星:自然・人間・動物・機械・産業・天候・色・温度・匂い)。それから私は歴史が好きなので、SFや未来的なものよりも、中世やファンタジーをよく描きます。中でもギリシャからスラヴまでの神話が大好きです。私をいつも突き動かすのは、闇と光、古いものと新しいもの、物質と魔法(無限のアイデアの源)のコントラストです。

Artist on Board を通じて初めて作成した『This War of Mine』のイラスト

Q. ポートフォリオをアップデートする秘訣・ヒントがあれば おしえてください

これについて、考えたことはありません。なすがままにです。私は多くのプロジェクトやさまざまなジャンルの仕事を通じ、毎週何かを達成するだけで、ポートフォリオも自然に成長しています。もっと新鮮な作品をファンに公開したいのですが、残念ながらNDA(秘密保持契約)で禁じられているため、最新作を見せるまでに1~2年待たなければなりません。こうしたことから、私はよく個人制作に取り組みます。しかし、時間が非常に限られているので、ポートフォリオに含まれる数はそれほど多くありません。

『トワイライト・インペリウム』のイラスト。ファンタジー フライト ゲームズ(FFG)のチームに入ってからずっと夢見ていたゲームです

Q. お気に入りのアーティストは誰ですか? 手描き/デジタルどちらでもかまわないので、理由も一緒におしえてください

うーん..。たくさんいすぎて 答えるのが難しいですね。子どもの頃は、数冊の本しか持っていなかったので、そこからインスピレーションを得ていました。

ヤチェク・マルチェフスキ(Jacek Malczewski)、アレクサンデル・ギェリムスキ(Aleksander Gierymski)、ヴォイチェフ・コサック(Wojciech Kossak)、ユゼフ・ヘウモニスキ(Jozef chelmonski)。そして、コミックアーティストの ロシフスキ(Grzegorz Rosinski)、ヴルブレフスキ(Jerzy Wroblewski)、ポルチ(Boguslaw Polch)。また、ポーランドの SF雑誌を通じて、空山基ロドニー・マシューズルイス・ロヨボリス・ヴァレホ が生み出す異世界の存在を知りました。

その後、インターネットが登場してから、あらゆることが一変しました。ネットワークのおかげで、多くの才能豊かな人々にアクセスできるようになったので、お気に入りもたくさんいます。トップリストは常に変化していますが、ここでいくつか挙げてしまうと、親しい友人の何人かは(名前が出なかったことに)気を悪くするかもしれないので、やめておきましょう。

ブックカバー(2017年制作)

Q. 近年の作品についてお聞かせください

「マジック・ザ・ギャザリング」「スター・ウォーズ」「ロード・オブ・ザ・リング」「アーカム・ホラー」「ゲーム・オブ・スローンズ」、そして たくさんの新作テーブルゲーム(特にボックスカバー)の仕事をしています。2017年は 7つくらい作りました。

また、グラフィック・ノベルという形で個人プロジェクトを始めたい気持ちもありますが、これは難しいですね。フルタイムのフリーランサーとはいえ、2児の父でもあるので、フリーな時間があまりありません。おそらく、最良の選択肢は、KickstarterPatreon でプロジェクトを始めることでしょう。しかし、インターネット上、私は それほど知名度がないので、これは リスキーに感じられます(家族のために家を建てていたので、当時の「ソーシャルメディア ブーム」に乗り遅れました..)。数少ない私の熱烈なファンから、どれくらいの反応をもらえるかわかりません。

『マジック・ザ・ギャザリング』のアートワーク

※ Tomasz Jedruszek氏 の新作は こちら でチェックできます

 


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翻訳:STUDIO LIZZ (TK)
編集:3dtotal.jp