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【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード99:出来るようになる秘訣 -『戦場のメリークリスマス』

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ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!


片桐 裕司 / HIROSHI KATAGIRI
彫刻家、映画監督

東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。
東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。

エピソード99:出来るようになる秘訣 -『戦場のメリークリスマス』

私はピアノが好きである。そうなった高校時代のエピソードがあります。高校3年の時、渡米前に祖父母のところへ挨拶に行った時のこと。その家にはピアノがあり、いとこが使っていたのだが、そのいとこが、ピアノで面白い事をしてくれたのです。

いとこは、私に右手で「ドソミソ」を弾くように指示し、私は ただ ひたすら、ピアノの左のほうで「ドソミソ」を弾き、それに合わせ、彼女がジャンジャンいろんな曲を弾いてくれたのである。自分は「ドソミソ」しか弾いていなかったのだが、もうなんか すっごい弾いてる気分になれたんですよね。それが めちゃくちゃ楽しくて快感で、その感覚が忘れられず、「いつかピアノが弾けるようになりたい」とずっと思っていたのでした。かの レイ・チャールズ もそのような体験をして音楽が好きになったようです。

そして、弾きたかった曲は 坂本龍一 の「戦場のメリークリスマス」。正直、映画『戦場のメリークリスマス』はそれほど好きではないけど、この曲が大好きなのです。

 

映画『戦場のメリークリスマス』(1983年)

★戦場のメリークリスマス(6分50秒/ 演奏:坂本龍一、「こどもの音楽再生基金 Presents School Music Revival Live 2012」より)

それから約17年。ついに その「いつか」を実行する機会が来たのです!

ある時、いつものように、仕事帰りに、長年続けている合気道の道場へ行くと、その隣に塾のようなものができていました。ちょっと覗いてみると、合気道の生徒でもある女性がいました。話を聞くと、そこもまた、合気道の道場生が借りた場所で「ホームスクール」というものを開校して、そこで彼女は、ピアノの講師として雇われていたのです。

合気道は週2回、仕事帰りにそのまま通っていて、スタートまでに時間がありました。つまり、その待ち時間を活用すれば、週2回、ピアノを学ぶチャンスがあるのです。

ついに長年の思いが叶う! そこで彼女に相談しました。「ピアノを教えて欲しいのだけど、ピアノが弾けるようになりたいのではなく、戦場のメリークリスマスが弾けるようになりたい」「バイエルなどの基本なんて やる気はない。楽譜を読む気も全くない」「ただ 戦場のメリークリスマス の指の動かし方を教えてくれと」「そして、どうせ弾くなら、ただ弾ければいいのじゃない。苦労なく スラスラ弾いて、弾いてる自分に酔いたいのだと」

めちゃくちゃ生意気な要望だったと思います。でも、自分の目的はハッキリしているため、それに向かう最短距離しか辿る気はありませんでした。快く その要望に応えてくれた彼女に感謝です!

まず最初に 右手だけで、前奏を飛ばして メインの部分から教わりました。これも自分をやる気にさせる自分なりの工夫です。とりあえず、気持ちいい部分を弾きたいのです。右手だけで弾く分には たいして難しくはありません。割とすんなり、4小節くらい すぐに弾けるようになりました。

自分が最初に決めたことは「自然に無意識に右手が動くようになるまでは左手を使わない」ということです。そして 右手が慣れてきた頃に、左手の動かし方を教わりました。そして衝撃を受けました。「全然動かん!」 これは 自分の中でかなりの衝撃でした。ここまで動かないとは! ここまで合わないとは! 左手のパートだけを弾いても、とてつもなくぎこちない。その上、右手を入れようとしたら猶更にめちゃくちゃになる。練習を始めて最初の挫折でした。

そこで私は考えた。そして気がついた。普段の生活では ほとんど左手を使っていないことを。ただでさえ使ってないのに、ましてや、ピアノなんか弾けるわけがない。そこで、ピアノ以前に「まずは 左手がもっと動くようにしよう」と決めたのです。

そのために、PC のマウスを左手に持ち替え、歯磨きを左手に変え、箸を左手で持つようにし、そして、仕事の造形でも 左手をもっと使うことにしました。毎日イライラです。しかしながら、やってみるとだんだん動かせるようになってくるものですね。だけども、左手がもっとスムーズに動くようになっても、右手と合わせようとするとめちゃくちゃになるのを直すにはどうすればいいのか?

そこで私はさらに考えた。そして気がついた!「そうか! 頭の中でリズムがちゃんとできていないから、手が動くわけがない!」頭が指に出す指令自体がが完全にできていないのである。頭の中で左右がちゃんとあっていない。まずは、頭でリズムを取れるようになろう!

そう決心して、それから 夜 寝る時と朝 目覚めた時、ベッドの中で、私は頭の中でピアノを弾くようになりました。家にピアノはないので、指はリズムをとるだけに留めながら。

するとどうでしょう。だんだん頭の中で弾けるようになってくるじゃありませんか。そして 教室に行き、彼女に もう一度指の動きを教えてもらい、頭の中のリズムに合わせて弾いてみます。そうすると 前回より断然弾けるようになっています。

とにかく、合気道のクラスの前の30分ほど、ひたすら同じパートを繰り返し繰り返し弾いて練習します。そして 家に帰っては、シャドーピアノを練習。そしてまた 教室に行って弾く。「家にピアノがないのになんで来ると上手くなってるんだ?」と彼女は不思議がります。それから、私は楽譜が読めず、尚且つ、覚える気もないので、教わったところまでしか弾けません。ある程度できるようになっても、自分一人では先に進めないのです。だから、ひたすら覚えたところを繰り返し弾き続けます。

その最中、日本に行く用事があり、隠居後に母が買った電子ピアノが家にあったので、滞在中、用事がない時はそこでひたすら練習しました。ひどい時は 8時間くらい! 楽譜をおかず、鍵盤しか見ないので、白黒で目がチカチカしたりして(笑)。腰と肩はバッキバキです。

そして、ピアノを手に入れることなく、かなりのところまで弾けるようになったのでした。ピアノを弾ける人が この楽譜を見ると「#が4つある~」ってビビる人が多いんですが、楽譜が読めない私には関係ありません。「自分は弾ける!」という信念しかなかったから、弾けるようになるまで練習するだけのことでした。

そしてついに、家にピアノを買うことにしたのです。それからは ひたすら練習して、ついに自分の目標であった「戦場のメリークリスマス をスラスラ弾く自分に酔う」という当初の目標を達成することができたのでした。それは それは ほんっとに気持ちよかったです! 自分に酔いながら弾きまくりましたよ(笑)。

 

そこで思ったこと。何をするにも一番大切なのは「出来る」という確信を持つこと。それが全ての行動の原動力であり、努力の源である。そして やり方は考えれば出てくるということ。

やったことがないから出来ないのは当たり前。過去の経験は関係ない。今自分が出来ると思うことが大事なんですよね。 これは何もピアノだけではなく、アートでもスポーツでも言えることだと思います。

「正しい努力」をすれば大概のことは出来るようになるのではないかと思います。苦しくなったら、何かやり方が正しくないのだと思います。ピアノを練習している間「辛い」と思ったことは一度もありませんでした。ただただ 弾けるようになっていく楽しさしかなかったです。「楽しさを見つける。そのために工夫する」それが何をするにも「出来るようになる秘訣」かもしれないですね。

 

★バックナンバーはこちらから

■片桐裕司さんのブログ
http://blog.livedoor.jp/hollywoodfx/

■ハリウッドで活躍するキャラクターデザイナー 片桐裕司による彫刻セミナー(2019年予約受付中/ 東京・大阪・名古屋・九州・北海道)http://chokokuseminar.com/

 


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