【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード83:ついに、陪審員に! パート2

ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!


片桐 裕司 / HIROSHI KATAGIRI
彫刻家、映画監督

東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。
東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。

エピソード83:ついに、陪審員に! パート2

さて、前回の「陪審員未遂」(※エピソード78:ついに、陪審員に! 参照)から 1年ちょっと。猶予期間を経て、満を持したように「Summons for Federal Jury Service」(陪審員召集令状)が送られてきました。

 

「Summons for Federal Jury Service」(陪審員召集令状)

アメリカ市民として抗う術はありません。前回は、バーバンク市の、うちから比較的近いところにあり裁判所へ赴いたわけですが、今回は LA のダウンタウン、つまり、ロサンゼルスの中心地に朝8時に行かねばなりません。当然、渋滞の中、裁判所に駆けつけることになります。

 

LA のダウンタウン、ロサンゼルスの中心地にある裁判所

セキュリティを通り、待機する部屋に入って驚きました。ものすごい人数がいます! 最終的に 300人くらいだった思います。そして、穏やかな感じのお姉さんが前の舞台で、今回の陪審員の説明を始めました。

 

セキュリティを通り、待機する部屋に入って驚きました

今回 呼ばれた人たちは、普通の陪審員候補(Trial Juror)ではなくて「Grand Juror」といったもの。これは「一生に一度あるかどうか」の機会だそうで、その任期は、6ヶ月から 1年くらいになります。その説明の瞬間、当然、軽くざわつきます。そして 説明は続きます。

「Grand Juror」というのは、主に重大な犯罪に関わる陪審員で、裁判開始前に事件の概要をすべて聞き、証拠の提示もすべて求めることができ、実際に「容疑者が犯人たり得るかを検察官とともに判断する役目」なのだそうです。そして Grand Juror の意見が「検察官が容疑者を起訴するかどうかの重要な判断基準になる」そうです。

察するに、冤罪を防ぐための仕組みではないかと思いますが、陪審員の意見は参考としてのみで、検察官は最終的には独断で起訴するかどうかを判断できるそうです。正直、これは面白そうな内容です。犯罪現場や証拠品の検証、そして、容疑者や証人の言葉を聞いて、実際に、容疑者が犯人かどうかを判断できるわけですから。

しかしながら、もし、Grand Juror になると、週1回必ず参加しなければならず、それは、前出したように6ヶ月から1年続きます。そして その間は、病院の検診やバケーションで休むということはできないそうです。

それから、ある程度の遠距離から通わなければいけない人(※正確な数字は忘れました)には、毎週、前の晩のホテルを取ってくれ、給料(※陪審員の給料)も支払われます。その話を聞いているだけで、全く知らなかったアメリカの法に触れることができ、とても面白いものがありました。

ひととおりの説明が終わり、お姉さんの「では これらの条件を聞いて、Grand Jury になれるという人は こちらに。理由があって無理という人は こちらに移動してください」という案内のもとに席替えをしました。結果は、半々くらいだったと思います。

「なれる」という人たちは、順番に違う部屋に行き、スケジュールを決めます。「理由があって無理」という人たちは、順番に前にいる政府の人たち(※役職は聞き逃しました)に、1人1人 その理由を説明します。私は、日本にセミナーで頻繁に行くため、「理由があって無理」な方に行きました。

順番に前に並んで、舞台にいる役人に、その理由を伝えます。そして、その理由が認められたら、晴れて お役目御免となります。

 

順番に前に並んで舞台にいる役人に、その理由を伝えます

持ち込んだ本を読みながら、気長に順番を待ちました。そして、私の座っている列が呼ばれ、並びました。前の人は、一生懸命、「上司が云々..」といった話をしています。とにかく、役人が理由を聞いて 許可をもらえないとお役目御免にならないのです。そして、いよいよ、私の番が回ってきました。

私は「日本でセミナーをしているため、2ヶ月に1回くらい日本に行かねばならない」と正直に伝えたところ、あっさりと OK をもらえました。

朝8時に始まり、そこを出たのは 9時半頃。私の2回目の陪審員体験は、あっさりと終わりを迎えたのでした(って、まだ体験してないし!)。いつの日か、実際に裁判に参加する日は来るのでしょうかね?

以上! 現場からレポートでした!

 

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