【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード73:海外で働きたい人へのアドバイス

ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!


片桐 裕司 / HIROSHI KATAGIRI
彫刻家、映画監督

東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。
東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。

エピソード73:海外で働きたい人へのアドバイス

「海外で特殊メイクや CGをやりたいけど どうしたらいいんですか?」と相談される事が多いので、私なりに思う事をアドバイスしてみたいと思います。ただし、私の主観なので、全員に当てはまるとは限らないので、あらかじめご了承を。

まず、学校に行こうと思っている人 へ

その前に、何か自分で作品を作ってみましょう。これだけインターネットが普及した世界。やり方は いくらでも調べられるはずです。それで、本当に面白くて続けられそうであれば、学校に行くのも 1つの選択肢です。  

そして、学校に通う意義について 考えてもらいたいですね。教えてくれるのを待って 言われたことだけやるのであれば、将来、このような仕事で、ましてや、海外で生き残るのは難しいでしょう。

私にとって、学校とは利用するところでした。

・ 勉強・練習する場所や設備があり、それらを思い切り使える
・ 実験相手がいる
・ 同じ志を持つ仲間がいる
・ わからなくなったら 聞ける人がいる

 

20歳の頃の私。師匠の スクリーミング・マッド・ジョージ 氏 と 女優 ブルック・シールズ

学校に行こうと考えている人、もしくは、既に通っている人 へ

どれだけ、学校を活用しているでしょうか? これほど恵まれた環境はないと思います。学生の人たちは、自分たちの環境が恵まれていることを感謝して、限りある学生生活を大事にしてください。行きたくても行けない人たちが大勢いるのですから。そして、好きを仕事にするために、大事なのは「意気込み」「練習」です。

「意気込みだけは誰にも負けません」とかいう人は多いけど、それに「練習」「勉強」という行動が伴わない人は大したことはできません。ただ「やりたい」とだけ騒いでるのは、ただの希望です。行動しなければ 何も起こりません。

では「本当の意気込み」とはどんなものでしょうか?

それは「自発」です。「この仕事をやりたいから とにかく 自分で何かやってみる」「それをしている事が楽しい」「何を差し置いてでもやりたい」「多少貧乏でもいいからこれをしたい」 そういう気持ちがあるでしょうか?  

「人に言われたから」とか「かっこいいから」とかじゃなくて「自分がやりたいから」やる。それが無ければ、どんなに いい学校に行こうが無駄になるでしょう。

 

ちょー怖い顔だけど めちゃくちゃ面白い ミスター・T。これも 20歳の頃

先ほど「貧乏でもいいから」と書きましたが、それは、最初の数年の話です。最初は、お金を目当てにせず、ひたすら 技術を身につける機会を大事にするべきです。そして、人より優れた技術がついたなら、お金のこともちゃんと考えなければいけません。人より優れた技術を持っているのなら、経済的に豊かになっていかなければ おかしいです。これは 日本のアーティストが改善すべきマインドだと思います。

海外では「言葉の問題」「ビザの問題」。この 2つの大きな壁が、まず 最初にあります。最初から「ハンデ」があるのです。厳しいようですが、相当の「やりたい」という意思と努力が無ければ、海外の業界で生き残る事は難しいでしょう。 

とりあえず、憧れで目指すのではなくて、それが「本当に誰にも言われなくてもやってみたい」そして「行動に移せるほど好きな事なのか」ということです。

とにかく、学校に行こうが 行くまいが、作品を作り続ける事。本気で努力する事は、絶対に無駄にはならないから。たとえ、後になって 道を変えたとしても、絶対に それまでの努力で得るものがあるから。自分がやりたいことなのであれば、辛い努力ではないはずです。そして、やり続ける限りは、必ずチャンスは訪れると信じています。

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