【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード98:私と「スター・ウォーズ」

ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!


片桐 裕司 / HIROSHI KATAGIRI
彫刻家、映画監督

東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。
東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。

エピソード98:私と「スター・ウォーズ」

以前、最近の仕事として『キャプテン・マーベル』について少し書きました(※エピソード96:最近の仕事 -『キャプテン・マーベル』参照)。

そして、今年の夏頃、日本での 彫刻セミナー を終え、LA(ロサンゼルス)に戻ってきたところ、いつも仕事をしている Legacy Effects から連絡があり、「来週から来て欲しい」とのこと。いつも、特に、向こうが言わない限りは 何の仕事か聞かないので(行けばわかるし)、今回も例に漏れず、何も聞かずに 月曜の朝を迎えたのでした。

行ってみると、他のアーティストが何やらエイリアンじみたキャラの造形をしておりました。その人に「それは何のプロジェクトなのか」を聞いてみたら、何と衝撃の答えが返ってきたではありませんか!

そのプロジェクトは 「Star Wars (スター・ウォーズ)」!

映画『スター・ウォーズ』(1977年)

そう。あの「スター・ウォーズ」です。忘れもしない小学6年生の頃。映画館で初めて エピソード6 を見たときの衝撃! その後の TV放映で エピソード4 を見て、ビデオ(VHS)で エピソード5 を見て、特に、1番最初の作品である エピソード4 などは、何度繰り返し見たことか!

ハリウッドで今の仕事をするようになってからも「いつかは スター・ウォーズ の仕事をしたい」という夢を持っておりました。

 

そして、時は流れ、「スター・ウォーズ」の エピソード1 の制作が始まるという時は、その現場である ILM(インダストリアル・ライト&マジック、ジョージ・ルーカスの制作会社)に打診しようかと考えたこともありました。当時、私は 20代半ば。ちなみに、その場所は サンフランシスコです。

しかし、何もしないまま時は流れ、エピソード1 が上映された時、正直、非常にがっかりしました。多くの往年の「スター・ウォーズ」ファンも同じ思いだったと思います。その後、エピソード2、3 が作られ、すべてそれは、サンフランシスコやイギリスで作られたのですが、上映されるたびに、私の中の「スター・ウォーズ熱」は冷めていったのです...。

しかし!
痩せても 枯れても「スター・ウォーズ」!

J・J・エイブラムス により、新たなエピソードである エピソード7 が作られると聞いた時、1度冷めた 私の中の「スター・ウォーズ熱」は蘇ってきました。しかも今回は、私の住む地、ハリウッドで作られるということに。

この時、2つのスタジオで「この仕事を取ろう」としていました。どちらが取ろうと フリーランスの私には関係ありません。どちらのスタジオにもつながりがあるため、始まれば、雇われるであろうことは確実だからです。

しかしながら、残念なことに、最終的には、ハリウッドで制作されず、すべてがイギリスで作られることになってしまったのです...。

 

さらに時は流れ、私の初監督映画『ゲヘナ』の資金集めに成功して、いよいよ 制作に向けて 活動を開始する時に、ある仕事の話がきました。

その仕事は「Star Trek (スタートレック)」

映画『スタートレック』(2009年)

スタジオのオーナーがこの仕事を取った時、いの一番で私のところに連絡をしてきました。大量のエイリアンが出てきて、デザイン段階からの仕事なので、かなり心は揺れました。しかし、実は、私は「スタートレック」のTVシリーズは見たことがないのです。映画も 2つくらいしか見ておらず、ファンでもなんでもありません。そして、ようやく、念願の初監督映画『ゲヘナ』の制作活動が始まったばかり。仕事自体は楽しそうなので、揺れる心を抑えて、断ったのでした。

(ちなみに、この作品『スター・トレック』(2009年) は アカデミーメイクアップ&ヘアスタイリング賞 を受賞しています)

だけど、もし、これが「スター・ウォーズ」だったら、『ゲヘナ』の存在はなかったかもしれません(笑)。

何はともあれ、話は戻りますが、スタジオで詳細を聞くと、この「スター・ウォーズ」は TVシリーズであること。映画『アイアンマン』の監督 ジョン・ファヴロー がプロデュースを務めること。そして、すべてハリウッドで作られることなど教えてくれました。

TVシリーズではありますが、私が若かりし頃に持った「スター・ウォーズの仕事をする」という夢は、期せずして かなったのでありました。

そして、エピソード5 と 6 の間の話だそうで「若い頃 熱狂した映画のキャラクターを自分なりに作り直す」という 久々にワクワクする仕事となったのでありました。

 

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