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【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード24:キャプテン カタギリと囚人たち – パイレーツ・オブ・カリビアン

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ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!


片桐 裕司 / HIROSHI KATAGIRI
彫刻家、映画監督

東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。
東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。

エピソード24:キャプテン カタギリと囚人たち - パイレーツ・オブ・カリビアン

2010年に、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』の仕事をしました。この映画に出てくる「人魚」を制作する責任者として選ばれたのです。

最初は、LA(米ロサンゼルス)で、同映画のその他のものを製作していたのですが、体調を崩し、熱を出して寝込んでしまっている最中に「2日後にハワイのカウアイ島に飛んで、そこで仕事をしてくれ」と頼まれました。この仕事は、私を雇ったメイクアップ・デパートメント・ヘッドの特殊なやり方で「LA の工房で制作するのではなく、撮影する現地で作る」という、つまり、撮影場所である「ハワイのカウアイ島で制作する」という夢のような仕事でした。その電話を受けた日の夜には「気合で熱を下げる」という離れ業を見せ、体調は万全ではないにしろ、カウアイ島に飛んだのでした。

滞在場所は、なんと超豪華なリゾートホテル。「パイレーツ様ありがとう!」とハリウッド大作映画のスケールに涙を流したのでした。そして、仕事場所は、そのホテルの裏の物置を改造したこぢんまりした工房。通勤時間は部屋から徒歩5分。そこで衝撃のスケジュールを知る事になる。製作する物は、等身大のシリコン性の人魚を全部で3体。そして、製作期間は、な、な、何と7週間!

全く何もない状態から、7週間で、人間と同じ大きさの人魚のシリコンダミーを3体作らねばならないのである。普通これくらいの規模だと、倍のクルー、そして、最低でも倍の時間は必要なのである。果たして、私は夢のハワイ滞在をエンジョイできるのであろうか??

初日は、まず、工房に必要な物すべての購入から。「1から物を作る」のではなく「1から工房を作る」のは、はじめての経験。とてつもなくめんどくさい。ちなみに、カウアイ島は、ハワイ諸島の中でも一番自然が残っている島で、「ジュラシック・パーク」や「キングコング」なども、この島で撮影をしている。しかし、こんな田舎も中心部には多少、店もあり充実した品揃えがある。無事、最低限の物が揃い、いざ、人魚制作開始。

女性モデルの型を取り、それを粘土でおこす。これでだいぶ時間が短縮される。1から原型を彫刻していたら地獄を見ていただろう。これから、この形をどんどん人魚にしていくわけである。

1週間半後にはプロデューサーやディレクターに見せねばならないので、必死に原型彫刻を進める

休めない。逆に徒歩5分の通勤時間が命取り。「いつでも部屋に戻れる」と思うとぎりぎりまで仕事をしてしまう。どこにも行けない。リッチで、ゴージャスで、ファービュラスで、ダイナマイトにセレブなプールにも入れない。ここはどこ? リゾート地? リゾート地なの? リゾートって何? スペインのおかゆの事? (←それはリゾット by 3dtotal.jp)

滞在していたホテルのゴージャス&ダイナマイトプール。毎日、目の前を通りながら1度も入らずに終わる

余談ではあるが、滞在1週間ほどして、ホテルのホールを借り切って、出資者や重役たち、そして、世界の配給会社の人たちへの映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』のプレゼンテーションがありました。「これはこういう映画になるぞ」という展示です。その準備中に遊びにいったら、衣装や小道具、海賊船のミニチュアやプロダクションアートの数々をそこらじゅうに展示してあり、それは、まるで、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』のミュージアムの様で、それだけでも入場料を取って、商売できそうなくらい。制作前からもう一大イベントなのであった。大作映画のスケールの大きさを、まざまざと感じる時間でありました。

さて、人魚の原型は、どうにかなんとか、形にして、いざ、お披露目。 重役たちがゾロゾロと入ってくる。その中には、プロデューサーの ジェリー・ブラッカイマー や監督の ロブ・マーシャル の姿も。ここで、もし変更を要求されても、時間の余裕も心の余裕もない...。

結果は無事オッケー
何の変更もせずにすみました。

この仕事でこういう事は、まず、滅多にないのです。
おそらく、時間がない事を彼らも知っていたのでしょう。

ちなみに、その時は、私のボスが彼らを連れてきて、なんだかんだ説明していて、皆それを聞いていたが、監督のロブ・マーシャルは、ちゃんと私の目を見て、うれしそうに「サンキュー」と何度も本当に感激して言ってくれました。「プロデューサーは人魚を怖くしたい」、「監督は人魚を美しくしたい」という意見の違いもあり、私が、この造形を美しくしたからというのもあったのだと思います。 やはり、大物になる人は、そういう気遣いをしっかりするんだなぁと思ったりする。

原型ほぼ完成

2週間後にはじめて、ホテルの外に出かける。日用品を買うためだ。Kマート という店に行くのだが、日本でいえば、ドンキみたいなものか。私を含め皆 「Kマート!! ヤッターーー!!!」と外出のうれしさに大はしゃぎ。シャバに出る囚人かよ...(つづく)

 

★バックナンバーはこちらから

■片桐裕司さんのブログ
http://blog.livedoor.jp/hollywoodfx/

■ハリウッドで活躍するキャラクターデザイナー 片桐裕司による彫刻セミナー
http://chokokuseminar.com/

映画『ゲヘナ 死の生ける場所 (Gehenna Where Death Lives)』予告編 (2分8秒/ 監督:片桐裕司 / 日本語字幕)

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