写真のようなCGイメージ、建築ビジュアライゼーション『ノルウェーのリビング』のメイキング

ブラジルの建築ビジュアライゼーション・スペシャリスト Arberth Costa氏 が、高品質な建築イメージの作成方法を紹介します(3ds Max、V-Ray、Photoshop 等使用)


Arberth Costa da Silva
建築ビジュアライゼーション・スペシャリスト


ステップ01:リファレンス

初期アイデアは、家具のない とてもシンプルなシーンを作ることでした。子どものいない2人だけの夫婦が必要なものだけで生活できるアパートです。まず、シーンの作成に使えるリファレンスを見つけるため、インターネット検索に時間をかけました。シンプルさと機能性、それが私の探していたものです。

初期段階におけるリファレンスのリサーチは、フォトリアルなイメージの制作において不可欠です。これを行えば、シャドウ、カメラアングル、反射によって、特定の光の中でマテリアルがどのようになるかを知ることができます。こうした小さなディテールが大きな違いを生み出すのです。

通常、私のリサーチは Pinterest のページから始まります。私には頻繁に参照できる便利なイメージライブラリがあり、ここに新しいリファレンスを加えています

ステップ02:モデリング

モデリングは 3ds Max で簡単に行いますが、リファレンスが画像だけのプロジェクトでの作業の場合、スケールの設定が重要です。家具、椅子、ソファーなど、スケール感を与える要素を明確にしなければなりません。これらのスケールを設定したら、環境モデリングを始めます。

通常、私はスプラインでモデリングを始め、床や壁のような主な形状を決めます。次に[押し出し]モディファイヤと[編集可能ポリゴンに変換]で、室内のオブジェクトを作成、シーン全体のモデリングを完了します。

3ds Max で大まかにモデリングする

ステップ03:プロジェクトの編成

個人制作でも仕事でも、私の行うプロジェクトでは、2つのステップで構造を分けています。1つは、ファイルをタイプごとの分類フォルダ構造でコンピュータ上に編成すること。もう1つは、3ds Max 内でレイヤーシステムによって、4つのレイヤーに分類することです。

- EST _:モデルのすべてのパーツ
- Dec _:装飾品と環境モデルの構成物
- Light_ :ライト
- Cam_:すべてのカメラ

こうしておけば、必要に応じて、簡単に選択・分離することが可能です。

プロジェクトファイルをコンピュータ上に編成する

3ds Max 内でレイヤーシステムよって分類

ステップ04:構成と家具のモデル

モデリングとプロジェクトの編成を終えたら、インテリアシーンの構成を始めます。この段階では、家具・アクセサリ・デコレーションのディテール・さまざまなカメラの配置など、リファレンスに基づいて、スタイルをいくつか試します。通常、私は、制作において、この段階に最も時間を掛けます。

個人的見解では、ここが最も重要なステップです。理論的には単純に思えますが、実際には複雑です。なぜなら、すべての構成は、写真撮影では一般的な「ゲシュタルトの法則」に基づいているからです。「ゲシュタルトの法則」とその原理については、私が仕事で普通に使っていることだけに留め、詳しく説明するつもりはありません。もし、興味があるなら、知覚組織化におけるゲシュタルトの法則を詳しく調べてみましょう。

部屋、家具、および、カメラのさまざまな構成をテストする

ステップ05:マテリアルとテクスチャ

通常、私は、プロジェクトにおいて、いくつかのマテリアルを作成して、プロジェクトタイプやライティングに応じて調整しています。このプロジェクトに使用するマテリアルは基本的なものです。また、レンダリング時間を最適化するため、私のインテリアシーンには、複雑なマテリアルはほとんどありません。

コツは、決して ピュアホワイトやピュアブラックのマテリアルを使わないことです。シーンの要素が携帯電話、木製の床、または、装飾の小さなオブジェクトであっても、常に、そのテクスチャを観察してください。オブジェクトごとに、現実的な外観を与える方法は違います。木のテクスチャのマテリアルを適用して、そのオブジェクトでどのように作用するか考えるだけではいけません。これは本当に重要です。

床のマテリアル設定

テーブルのマテリアル設定

壁のマテリアル設定

ステップ06:ライティングとカメラ

シーンの基本のマテリアル設定とカメラアングルが決まったら、ライティングを始めましょう。しかし、ライティングプロセス中に、マテリアル変更や微調整が必要になることがあります。私が作成したシーンには、さまざまな種類のライティングがあります。求めている結果を得るため、さまざまな種類のライティングを試みますが、環境をどのように照らすかについての特定のルールはありません。

HDRIマップ や VRaySky を使用することもあります。場合によっては、そのどちらも使用しません(V-Rayライトのみ使用)。すべては、各シーンに求める結果によって異なります。このシーンでは、環境に VRaySky を、窓やドアの開口部にポータルライト(V-Ray light portal)を使用しています。

シーンのライティングを設定する

ステップ07:レンダリング設定

このシーンのレンダリング設定はシンプルで、私が普段使っているものです。

重要なのは、レンダリング時間と品質です。あらゆる室内シーンで使用できる万能のレンダリング設定はありません。各シーンは光の種類によって異なり、品質にも特定のレンダリング設定があります。雑誌やオンラインで見つけたチュートリアルのパラメータをコピーするだけで、問題を解決できると信じている人がいますが、それだけでは上手くいきません。各シーンには異なる設定とディテールがあるので、開始点となるリファレンスが必要なのです。

レンダリング設定

ステップ08:ポストプロダクション

本音を言えば、ポストプロダクションに多くの時間を費やしたくありません。通常、Photoshop の[トーンカーブ][明るさ・コントラスト]、および、色調補正に 5分から10分かけますが、それ以外は何も行いません。3ds Max で出来上がった最終結果にできるだけ近いイメージのままにします。

Photoshop での微調整

Photoshop での微調整

最終イメージ

最終イメージ

最後に、私たち家族(最愛の妻 Jacqueline と娘 Laura、両親、兄弟、甥)へのすべての祝福に感謝します。家族は私の基本です。毎日、彼らは私に制作と学習に対する意欲を与えてくれます。


翻訳:STUDIO LIZZ (TK)
編集:3dtotal.jp