2Dのコンセプトから 3Dイメージまで。Blender 使用、SFシーン『Colony』のメイキング Part3

Samantha Kung 氏 が、初期アイデア から 完成まで、SFシーンのデザインプロセスについて語ります(全3回の3)


Samantha Kung
コンセプトアーティスト|シンガポール


はじめに

この Part3 では、Part1Part2 に引き続き「形態(フォーム)は機能に従う」という理論を軸に、2Dコンセプトから最終3Dデザインまでの制作プロセスを解説します。Blender での構図検討やプロップの統合、Photoshop による最終的なシーン構築まで、コンセプトアートのワークフローを順を追って紐解いていきます。

最終イメージ:さまざまな プロップが どのように統合されているか を示しています

01 最終シーンのセットアップ

すべてのプロップのモデリングとテクスチャリングが完了したら、カメラを設定して好みのアングルを決めます。このシーンはポリゴン数が多くファイルサイズが大きいため、動作が重くなりました。また、この時点では前景部分がまだ完成しておらず、ハードウェアの限界もあったため、前景は Photoshop のフォトバッシングで仕上げることにします(※ステップ04 で詳しく解説)。レンダリング品質を上げるため、レンダープロパティで「アンビエントオクルージョン」「ブルーム」「スクリーンスペース反射」も有効にしています。

すべてのプロップを統合し、レンダー設定をオンにする

02 サイズの調整とレンダーパス

高解像度の出力を得るため、シーンサイズを通常の 130-150% に変更します。Photoshop で最終作業に入る前に、レンダーエンジンを「Eevee」に設定し、オブジェクトID、AO、ミスト、被写界深度など、いくつかのパスをレンダリングしておく必要があります。被写界深度のレンダリングは他のパスとは手順が異なるため、次のステップで詳しく説明します。

シーンサイズを変更し、パス設定をオンにする

03 被写界深度の基本

まず 2つのワークスペースウィンドウを並べて表示し、左に「コンポジター」、右に「UVエディター」を開きます。UVエディターの表示を「ビューアーノード」に切り替えたら、コンポジターに移動して「正規化」「ビューアー」の2つのノードを追加し、「レンダーレイヤー」ノードの「深度」出力と接続します。これにより Blender が前景・中景・背景間の距離を自動的に計算し、被写界深度マップを生成します。

コンポジターにノードを追加し、UVエディターで被写界深度をレンダリング

04 背景の追加

Blender でレンダリングが完了したら、Photoshop に移ります。宇宙空間らしさを出すために星を追加し、ソフトブラシでレイヤーマスクを調整しながら、星の数を細かくコントロールします。描画モードを「覆い焼きカラー」に設定して、星をより輝かせます。

シーンに星を追加する

05 クリッピングマスク

この手法は Part2 の ステップ07 と同じです。まず、ベタ塗りのシェイプを挿入します。次に、地球のテクスチャを検索し、クリッピングマスクでシェイプにクリップします。写真素材のノイズや不要なディテールはペイントで整えます。最後にエアブラシでグロー(発光)を描き加え、最終的な仕上がりに応じて描画モードを「比較(明)」または「覆い焼きカラー」に設定します。

クリッピングマスクを使用して地球を追加する

06 奥行きを出す

この時点でシーンが少し平坦に見えたため、レイヤーを分けてソフトテクスチャブラシで霧(ガス)のような演出を加え、奥行きを出します。焦点となる構造物を目立たせるために、描画モードを「覆い焼きカラー」に設定して明るくし、不透明度を 37%に調整します。

霧を加え、レイヤー間に奥行きを生み出す

07 前景をつくる

前景には、宇宙ステーションのプラットフォーム(作業用足場などの構造物)や使われていない宇宙用機材を配置していきます。まずシルエットをブロックアウトし、シャープなエッジで視線を焦点へ導くよう宇宙ステーションをフレーミングします。その後、フォトバッシングでディテールを加え、全体の形を整えています。

大きなシルエットで 前景を作成し、ディテールを描き込んでいく

08 ディテールの洗練

全体の構図はほぼ固まりましたが、一つ気になったのは、前景と宇宙ステーションの間の空間が空きすぎていることでした。そこで、視線を焦点に誘導するため、不規則な形状を手早く追加。さらにあちこちにライトを足して、バランスを整えながらディテールを充実させています

シーンをより面白くするために、ディテールを洗練させる

09 爆発エフェクト

画面全体が青一色に寄っていたため、焦点を強く引き立てる要素が欲しいと思いました。色相環で青の補色にあたる「黄色」がこのシーンにぴったりなので、爆発エフェクトと小さなデブリ(破片)を追加。これにより画面に色のアクセントが生まれ、「そこで何かが起きている」というストーリー要素も加わりました。

エフェクトを用いて、優れたストーリーテリングを加える

10 カラーグレーディング

最後に、全体の色調を調整します。個人的には、明暗のバランスを確認するためにグレースケール表示を活用するのが好みです。明るさを上げるために薄いピンクでハイライトを加え、グラデーションツールを「ソフトライト」モードで使って残りの部分を落ち着かせ、全体のコントラストを整えます。

グレースケールで全体的な明るさとコントラストを調整

 

完成イメージ

プロのヒント:グレースケール確認用のショートカット設定

明暗のバランスをすばやく確認できるようにショートカットを設定します。

1. [表示]メニューから[校正設定]>[カスタム]を選択
2. 「シミュレートするデバイス」「作業用グレー - Dot Gain 15%」を選択
3. 「編集」>「キーボードショートカット」「校正カラー」に好みのショートカットキーを割り当てる

グレースケール設定を行うための3ステップ

>>> Part1こちら
>>> Part2こちら

関連リンク

• Blenderアドオン(Hard Ops & Boxcutter
• Blenderアドオン(Pro-Lighting:Skies
【チュートリアル】マットペイント:『Night -サムライの復讐』のメイキング
【インタビュー】建築デザインの知識を基に:コンセプトアーティスト Samantha Kung氏

 


編集部からのおすすめ: 「マジック:ザ・ギャザリング」や「ダンジョンズ&ドラゴンズ」などのイラストレーター グレッグ・ルトコフスキ をはじめ、著名アーティストたちが、アートの必須知識、「構図」や「ナラティブ」の理論と実践を徹底解剖します! 書籍『構図とナラティブ:絵にストーリーを語らせる秘訣』

 


編集:3dtotal.jp