仲良しハロウィンパンプキン「Pair of friendly Halloween pumpkins」のメイキング(※データダウンロードあり)
イラストレーター Gregor Kari氏 が、仲良しハロウィンパンプキン「Pair of friendly Halloween pumpkins」のメイキングを紹介します

はじめに
このチュートリアルでは「グラデーションマップ」を使用して、白黒の構図を鮮やかな絵画に変える簡単で効果的な方法を学びます。
デジタルペイントにおいて、色と明度を両立させることは難しい課題です。通常、2つの選択肢があります。白黒から始めれば、しっかりとした明暗と劇的な光の表現を作ることができます。一方、カラースケッチから始めれば、鮮やかな色彩は得られますが、明暗の制御は難しくなります。
ハロウィーンのイラストには、鮮やかな色彩と不気味な雰囲気の両方が必要です。そこで今回は、この両方を実現する制作手法を探ってみましょう。まず、白黒の構図からスタートし、「グラデーションマップ」を使って 色を加えていきます。
01 スケッチを描く
今回は、一般的なアプローチで描いていきます。ご覧のとおり、時間をかけてスケッチを洗練させていますが、その思考プロセスをお見せするために、構築線を少し残してあります。カボチャはシンプルな丸みのある形で、特別なスタイライズは施していませんが、形をしっかり理解することに時間をかけています。
洗練されたスケッチ。まだいくつかの構築線が残っています
02 雰囲気を計画する
私は、偶然に頼ることはほとんどありません。アート制作で最も楽しいことは「作りたいものをイメージして、それを実現すること」です。先に進む前に、このイラストで何を伝えたいのか考えてみましょう。
全体的な雰囲気は大事ですが、2つのカボチャの間に親密な空気感、まるで 2人だけの秘密を共有しているかのような雰囲気も作り出していきます。そのため、カボチャの周りに柔らかな光源を配置し、中央に影の領域を残します。その暗がりの中では、カボチャの顔だけが唯一の光源となります。
影をつける前に、イラストで伝えたいストーリーを考えてみましょう
03 最初の光源を追加する
各光源を個別に制御できるように、それぞれを別々のレイヤーに描きます。先ほどのスケッチで、光源の1つは後ろから当てることがわかっています(あとでこの光は月明かりという設定にします)。今は 明るい白を使い、完成したら不透明度を下げます。結果に満足したら、黒で塗りつぶしたレイヤーに統合し、[スクリーン]に設定しましょう。あとで この白黒情報を使用して[グラデーションマップ]を制御します。
最初の光を作り出し、あとで月明かりの設定を加えます
04 キャンドルの光を加える
同じ手順を繰り返しますが、今度は キャンドルの光を描きます。カボチャの内側にもキャンドルがあるので、目や口から漏れる光も同じレイヤーで作成します。ここでも明るい白を使い、黒いレイヤーに統合してから、満足いくまで不透明度を下げます(後で調整も可能です)。すべての光を別々のレイヤーに分けているので、完璧なライティング設定を簡単に作成することがでできます。
光を別レイヤーに作成します
05 アンビエントオクルージョン
最終的なペイントで特定の領域を暗くすることもできるため、アンビエントオクルージョンレイヤーは必須ではありません。しかし、この手順は非常に効果的で、制作の早い段階からイメージに立体感を与えることができます。ここでも不透明度を調整できるように別レイヤーを使用し、ライトパスの下に配置してください。この時点でアンビエントオクルージョンが線画の役割を果たすため、スケッチをオフにします。
アンビエントオクルージョンのペイントは必ずしも必須ではありませんが、初期のプロセスで可塑性を追加します
06 背景を作成する
夜のシーンを作りたいので、背景全体を暗いグレーで塗りつぶしてから、中央に柔らかな月明かりを加えます。不気味な木々は別レイヤーに描いて形を塗りつぶし、満足いくまで動かせるようにします。プロダクションパイプラインで作業している場合は、アートディレクターにプレビューを送って進捗を見せる絶好のタイミングです。この段階で、完成イラストのイメージがかなり見えてきます。
木々を別レイヤーに描いておけば、満足のいく構図になるまで自由に配置できます
07 背景に色を追加する
いよいよ最初の「グラデーションマップ」の出番です。まず、背景を1つのレイヤーに統合し、新しく[グラデーションマップ]を作成しましょう。夜の濃い青から明るい緑系の月明かりへと美しい変化が得られるように色を選びます。
次に[グラデーションマップ]を複製し、[カラー]に設定します。これにより明度と色を個別に調整でき、美しい雰囲気になるまで不透明度を変更できます(今回は[通常]に設定したものを30%、[カラー]に設定したものを100%にしています)。続けて、ブラシで紫のストロークやその他のディテールを描き込み、色に変化をつけます。視線を前景に向けたいので、[ぼかし(ガウス)]を適用し、フィルターギャラリーから[ドライブラシ]を加えて完成させます。
最初の[グラデーションマップ]は、魅力的な背景作りに役立ちます
08 影の中の作業
先に進む前に、これまでのプロセスを振り返りましょう。背景を定義し、表面を照らすライトレイヤーを用意しました。今足りないのは、光が当たる前のオブジェクトの見え方です。まず、各要素をマテリアルの色で塗りつぶします。次に、背景から抽出した青で塗りつぶした乗算レイヤーを上に重ねます。これで夜の環境光による青みがかった影が加わります。最後にキャンドルの上部を明るくします。これは、キャンドルが半透明で、炎に照らされるためです。
マテリアルの色を選び、直接光が当たっていない状態を想像しましょう
09 キャンドルの光に色を添える
ここからが面白く、重要なステップです。新しい[グラデーションマップ]を作成し、赤からオレンジへの遷移を設定します。これをキャンドルの光レイヤーにクリッピングマスクとして追加します。キャンドルの光自体は[スクリーン]に設定していますが、[グラデーションマップ]は[カラー]に設定します。こうしておけば、光の明るさに応じて調整できます。時間をかけて、美しいオレンジ色の輝きが出るまで微調整してください。
2つ目の[グラデーションマップ]は、キャンドルから放たれる光にのみ影響します
10 月の光に色を添える
同じ手順を繰り返しますが、今回は青からターコイズへのグラデーションを使用します。私が使ったグラデーションは図で確認できます(付属の PSDファイル でも確認できます)。
月の冷たい光に合わせてグラデーションを設定します
11 ディテールを加える
大変な作業は終わり、必要なすべての色を配置できました。では、[スポイトツール]とお気に入りのブラシを選択し、ディテールを描く楽しみを味わいましょう。私はカボチャの顔に特別な輝きを加えるため、[オーバーレイ]レイヤーを追加しました。キャンドルについては、次の最終ステップで見ていきます。
お気に入りのブラシで、ディテールをペイントしましょう
12 キャンドルの炎を描く
説得力のあるキャンドルを作るには、いくつかのポイントがあります。まず、「炎の明るさ」に注目してください。キャンドルの炎は内炎が最も明るく、周囲に向かって透明な黄色へとフェードアウトしています。次に、「炎の輪郭」を見てください。ほとんどの部分ではシャープなエッジになっていますが、その外側に柔らかな光の滲みがあります(過去作品から炎のクローズアップ画像を追加しました)。3つ目は「キャンドルのサブサーフェス スキャタリング(透過効果)を作るため、他の部分よりも温かみのある色」を選んでいます。キャンドルに満足したら、追加の効果を試したり、前景に草を加えたりして仕上げを施しましょう。
ハッピーハロウィン!
リファレンスを探して、最後のステップでキャンドルを描きます
ハロウィーンの不気味さとカラフルな雰囲気を捉えた完成イラスト
>>> Gregor Kari氏 が日々やっているアナトミーやプロポーションの学習、Instagram は こちら
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