ペイントオーバー用 3Dモデルの作成:モデリング編(※データダウンロードあり)

コンセプトアーティスト Gregor Kari氏 が、ハードサーフェスの 乗り物 3Dモデルを作成。それにペイントオーバーしていくプロセスを紹介します(全2回:モデリング編 と ペイント編)


Gregor Kari
コンセプトアーティスト/イラストレーター|ドイツ


>>> 2. ペイント編
>>> データダウンロード:ZtoolFBX

はじめに

アーティストとして制作を始めたばかりの頃は、独自の遠近法のドローイングを構築するのは良い練習になります。しかし、キャリアが進むにつれて、すべてをゼロから描くのは現実的ではないことに気づくでしょう。既存のコンセプトなしでイラストを描かなければならない場合、短時間で高品質な作品を作るのは困難です。

このチュートリアルは 2Dコンセプトアーティストとして、ZBrush を使って正確なリファレンスモデルを作成し、イラスト制作に活用する方法を解説します(※モデルデータ ZtoolFBX)。

完成モデルとイラストの比較

01 アイデア

制作を始めるにあたって、これから何をデザインするのかを全体的に理解しておきたいと思います。今回のアイデアは私自身のもので「SF風のビーグル(乗り物)」を作る計画を立てました。パワフルで、ユニークで、親しみやすい印象を与えるものを作りたかったので、デザイン言語として、ブロック状で大胆かつ丸みのある形を主に使い、デザインプロセスのすべての要素にこれらを反映させました。

ZBrush での作業プロセスは非常に直感的で、画面上で考えることができます

02 ブロックアウトの構築

ZBrush で始める方法はたくさんありますが、私は線で考えるのが好きなので、ZSphere を使うのが便利だと感じています。この段階では、ジオメトリ(形の細かさ)は全く気にしません。ここで興味があるのは、車体の見え方の基本的な理解を得ることだけです。頭の中で乗り物をいくつかの線に分割し、全体の形を流れるように表現していきます。

ZSphereは、デザインと計画を同時に進めるのに役立ちます

03 なぜ ZSpheres を使うのか?

答えは、ZSphere が他のツールよりも扱いやすいからです。線を一貫して保つための便利なコツは、まず始点と終点を作り、その間に新しいスフィアを追加しながら、線の流れを調整していくことです。スフィアを増やすほど、形が整います。ZSphere の骨組みだけでも、その上に描くための優れたベースになります。

ZSphere で、滑らかで予測可能な形を作成します

04 円柱プリミティブで手早くホイールを作る

新しい円柱を作成、[イニシャライズ]タブで[内部半径]を追加し、ポリループの数を減らして編集しやすくします。続けて、マスクとスケーリングを組み合わせて、ホイールの基本形状を作ります。先に述べたように、ホイールの形をブロックアウトする際も、「パワフルで、ユニークで、親しみやすい」という基本的なアイデアを念頭に置くようにしています。

マスクと[ZModeler]を組み合わせることで、すばやくきれいな結果が得られます

05 ZModeler:タイヤプロファイルの作成

Photoshop でタイヤのトレッドパターンをスケッチします。ここでも、伝えたい雰囲気を反映するものを考え、ブロック状で丸みのある形にします。スケッチを[ドロー]メニューのグリッドにインポートし、[ZModeler]を使ってタイヤのプロファイルを作成します。結果をベベル(面取り)して少し滑らかに見せ、右側の[アレイメッシュ]タブの[ライトボックス▷アレイ]プリセットの中からサムネイルがすでにタイヤのように見えるものを読み込み、タイヤの周りに配置します。

タイヤの良いリファレンスモデルがあれば、最終イラストを作成する際に多くの時間を節約できます

06 ZModeler:車体の作成

ZSphere の骨組みをリファレンスとして表示し、1枚のポリゴン平面を追加します。次に[ZModeler]で 車体を作ります。何度か[ベベル]を使えば、簡単に形を再現することができます。完成したら[ジオメトリ]>[ダイナミックサブディビジョン]を使って全体を滑らかにします(後から編集することもできます)。[ZModeler]は非常に直感的ですが、場合によってはマスクブラシで作業範囲を限定する必要があるでしょう。

[ZModeler]と[ダイナミックサブディビジョン]で、手間をかけずにきれいで滑らかなジオメトリを作成できます

07 ディテールの追加

どこまで作り込むかは あなた次第です。依頼を受けて作業する際は、モデルの大まかな形をブロックアウトするだけのこともあります。しかし今回はモデルを見せたかったので、もう少し時間をかけて丁寧に仕上げることにしました。すべての要素はプリミティブから作成し、[ZModeler]でモデリングしています。アンテナを手早く曲げるために、[変形]>[ベンド(スムーズ)]を使っています。

次に進む自信が持てるまで、必要なだけディテールを追加します

08 ペイントオーバー用リファレンスショットの作成

デザインに満足して自信が持てたら、リファレンスショットを準備します。モデルをエクスポートして、別の3Dソフトでイメージをレンダリングすることもありますが、今回はライティングについて特に計画していなかったため、ZBrush で行いました。ワイヤーフレームもリファレンスとして使うため、表示したままにしておきます。

次回「ペイント編」では、Photoshop で このイメージを 他の2Dアセットとうまく馴染む 2Dイラストに変換します。

 

最終リファレンスショット

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編集:3dtotal.jp