スニーカーの作成(パート1:モデリング)
ドイツの Jakob Scheidt 氏 が、スニーカーの作成プロセスを説明します(※パート1:モデリング)

はじめに
このチュートリアルでは、スニーカーの作成プロセスを説明します。このパート1 は、Blender を使用してローポリとハイポリのスニーカーをモデリングする手順になります。パート2 では これらのモデルを使い、Substance 3D Painter でUV展開とテクスチャリングを行います。目標は「できるだけ少ないポリゴン数で、UV展開、テクスチャリング、リアルタイムエンジンでのレンダリングを簡単に行えるモデルを作成すること」です。
最終的な ハイポリ、ローポリ、テクスチャ適用モデル
※パート2 テクスチャリング は近日公開予定
01 リファレンス&設計図
モデリングを始める前に、適切なリファレンス画像や設計図を見つけることが重要です。さまざまな視点からの画像があると、モデリングが簡単になり、最終モデルは より正確になります。私は自分で設計図を描き、側面図、背面図、底面図、上面図を用意しました。
透明な背景で描かれた 4つの設計図
02 モデリングの準備
リファレンス画像をシーンに追加し、Blenderシーンに配置します。オブジェクトのデータプロパティパネルで[不透明度]を有効にし、アウトライナーで設計図の選択を無効にします。こうしておけば、誤って背景画像を選択することがありません。シューズの実際のサイズに合わせて、立方体と画像を正しいスケールに縮小します。
モデリングの準備
03 ソールのモデリング
設計図を背景画像として使用し、トップ正投影ビューからソールのモデリングを開始します。メッシュを透視するために[透過表示]をオンにすると便利です。押し出し([E]キー)、スケール([S]キー)、移動([G]キー)、回転([R]キー)、面張り([F]キー)を使用して、ソールの平面的な形状を作成します。
ソールの平面的な形状、四角ポリゴンのみで構成
04 曲率の調整
サイドビューから作業し、背景画像に合わせて シューズの輪郭を変更します。[透過表示]と[プロポーショナル編集]([O]キー)を使えば、モデリングプロセスを簡単に進められます。小さなディテールはすべてハイポリメッシュで追加するため、この段階では全体的な曲率と均等なトポロジーに注力します。
モデリングの際は、パースと正投影の両モードでモデルを確認します
05 シューズのメインループ
均等なトポロジでシューズの主要なボリュームを作成していきましょう。ループは、メッシュの周りをらせん状に回らないようにつなげ、後の作業(ディテールのモデリング、UV、テクスチャリング)に備えます。
編集モードの基本的なモデリングツールを使用して、設計図に一致させることを目標に、カーブをブロックアウトしていきます。まだディテールは気にしません。クリース(折り目)やその他の素材の層は後で追加します。最初は少ない辺ループから始め、少しずつフォームを洗練させていくことをお勧めします。
良好なUVとテクスチャリングを実現するには、均等なトポロジーと辺ループの接続が不可欠です
06 隙間を埋める
メインループを配置したら、隙間を埋めていきます。主に、面張り([F]キー)、辺ループブリッジツール、マージ([M]キー)を使用します。フォームに微妙な変化を加えるには、プロポーショナル編集([O]キー)を使い、ハードエッジを作らないようにすることもできます。
時々[MatCap]に変更して、メッシュに不要な凹凸がないかを確認することをお勧めします。美しい曲率を実現するための最良の方法は、いくつかのループを削除して([X]キー)、少ないポリゴンで作業することです。
この段階では、シンプルでありながらもシューズの複雑なフォームを正しく作ることが重要です。早い段階でディテールを追加しすぎると、大きな形を修正するのが難しくなります
07 革パーツの追加
基本的なモデリングテクニックとモディファイアーを使用して、革パーツとメインボリュームを表面に追加しましょう。面スナップを有効にし、[面に投影]をオンにすると、ポリゴンを他の表面にスナップさせることができます。その後、ジオメトリをオフセットするには[収縮/膨張]([Alt]+[S]キー)または[シュリンクラップ]/[ディスプレイス]モディファイアーを使用します。メッシュに厚みを持たせるには、[ソリッド化]モディファイアーを使用し、[ふちのみ]を有効にします。これにより、外側から見えない不要な面が削除されます。
内側に面のないシェルとして個別のパーツを保持すれば、UV展開が楽になり、ポリゴン数も削減されます
08 ディテールの追加
ここまで設定したモディファイアーを[適用] したら、編集モードでトポロジーを調整していきます。[LoopTools]アドオンを使って靴ひも用の円形の穴を作成し、ループを追加して辺を洗練させます。また、シューズの形状を伝えるのに役立たないジオメトリができないように努めましょう。小さな金属製の円を追加するには、セグメント数の少ないトーラス(例 [大セグメント数]:8、[小セグメント数]:3)を使用します。
[LoopTools]は、[プリファレンス]>[エクステンションを入手]からインストールできます
スムーズシェーディングを使用する際にシャープな辺を得るには、クリースを使用します。その場合、[オブジェクト]>[自動スムーズシェード]を有効にすることを忘れずに
09 靴ひも
靴ひもを作成するために多くの方法を試しましたが([カーブ][スキン]モディファイアーなど)、必要な形状は、辺を押し出して[ソリッド化]モディファイアーで厚みを追加するだけで十分です。UVマッピングを簡単にし、不要なジオメトリを避けるために、このモディファイアー設定でも[ふちのみ]オプションを使用します。
辺をシャープにした後、信頼できる見た目に十分なジオメトリを持つ靴ひもが完成しました。これでUV展開や高解像度のディテール追加も簡単に行えます。
モディファイアーは、メッシュをプロシージャルに変更できる優れた方法です。しかし、ある時点でそれらを[適用]し、トポロジーを手動で調整することが重要です
10 ハイポリモデルの作成
完成したローポリモデルを複製し、別のコレクションに移します。[サブディビジョンサーフェス]モディファイアー([ビューポートのレベル数][レンダー]:6)を使用してすべてのパーツを細分化し、[ディスプレイス]モディファイアーで高周波のディテールを追加します。
インターネットで見つけた布や革のディスプレイスメントマップを[ディスプレイス]モディファイアーのテクスチャとして追加できます。[座標]には[UV]を使用しますが、これらはテクスチャ用のUVではありません。UVアイランドの回転とスケールを調整して表面のパターンの流れを変更し、パターンサイズを正しく設定することが重要です。
Blender の内部テクスチャ(波、ノイズ)と Substance 3D Designer などのソフトで作成したディスプレイスメントマップを組み合わせて使用します
11 スカルプトによるディテールの追加
シューズの個別パーツのすべてのモディファイアーを[適用]したら、スカルプトモードでしわ、追加のディスプレイスメントテクスチャ、ステッチを追加します。ステッチには単一ステッチの白黒アルファを使い、間隔を調整します。
[ストロークの安定化]オプションは、滑らかなカーブや直線を描くのに役立ちます。時々、正確なカットラインのためにストローク方法を[ライン]に変更することもありますが、実際のシューズには常に何らかの不完全さがあることを念頭に置いてください。モデルに多少のジッターやしわを追加することは悪くないアイデアです。
Photoshop(Blender でも可能)でソール用のハイトマップをペイントし、スカルプトモードでアルファとして使用します
12 モデルの仕上げ
テクスチャをベイクする際の問題を避けるために、モデルの一部のパーツを分離したままにしておき、ローポリとハイポリのパーツの名前をすべて変更します(例:shoe_sole_low と shoe_sole_high)。
チュートリアルのパート2では、ローポリモデルを展開し、Substance 3D Painter でテクスチャをベイクしてペイントし、最終イメージをレンダリングします
※パート2 テクスチャリング は近日公開予定
プロのヒント1: リファレンスの質が 作品の質を決める
あらゆる角度の写真、特定のディテールの写真、設計図、または作成している実物を入手してください。これらは、モデリングとテクスチャリングの際に非常に役立ちます。
プロのヒント2: 先を見据えて 制作を進める
3Dモデルを作成するプロセスは複雑です。何かに取り組み始めて、修正が困難になった時点で問題に気づくこともあります。そのため、最初は急がず、先を見据えて進めるように努めましょう。
・リトポロジー、UV、テクスチャリング、リギング、またはアニメーションを簡単にするには、モデルをどのようにスカルプトすべきか?
・どの部分にディテールが必要で、どの部分は見えなくなるのか?
問題は常に起こるものですが、先を見据えることで、自分の(または同僚の!)作業は格段に楽になるでしょう!
完成イメージ
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