スニーカーの作成(パート2:テクスチャリング)

ドイツの Jakob Scheidt 氏 が、スニーカーの作成プロセスを説明します(※パート2:テクスチャリング)


Jakob Scheidt
3Dアーティスト/画家|ドイツ


はじめに

この パート2 では、「パート1:モデリング」で作成したローポリとハイポリのモデルを使って、UV展開、ベイク、テクスチャリングの方法を見ていきます。Substance 3D Painter を使用してリアルな PBRテクスチャを作成。CyclesEevee などのレンダーエンジンで使用できるようにします。

Substance 3D Painter で作成された PBRテクスチャのバリエーション

>>> パート1:モデリング はこちら

01 UV展開

モデルをエクスポートする前に、Blender でUVマップを作成します。目標は、ローポリの 3Dモデルを 2Dの正方形に展開して、パーツが重ならないようにレイアウトすることです。選択したエッジをシームに変更するには、ショートカット[Ctrl]+[E]キーを押して、[シームをマーク]を選択し、[U]キーを押して選択したジオメトリを展開します([アングルベース]や[最小ストレッチ]など)。

[UVエディター]([Shift]+[F11]キー)で、アイランドの位置とスケールを変更できます。ストレッチ(チェッカーテクスチャを追加してチェック)、パーツの重なりを避け、余白をできるだけ埋めて、すべてのパーツのテクスチャ解像度を同じにしておくことが重要です。

UVアイランドのスケールを均等に保ちながら、できるだけ多くの空間を使用した最終的な UVレイアウト

02 IDマップ

モデルのテクスチャリングを始める前に、IDマップを作成することをお勧めします。これは、Substance 3D Painter で着色したい部分にランダムな色を割り当てた色付き画像です。これにより、複数のパーツで構成されている靴ひものような部分を簡単に選択できるようになります。

Blender のテクスチャリングモードで「ペイントマスクボタン」をオンにすると、編集モードで選択した部分だけにペイントできます。塗りつぶしツールを使い、編集モードとテクスチャリングモードを切り替えてパーツを選択するとよいでしょう。後ほど Substance 3D Painter で使うため、テクスチャをフォルダに保存します。

IDマップがあれば、Substance 3D Painter で簡単に各領域をマスキングできるため、モデルのカラーバリエーションを作成する際に便利です

03 エクスポート、インポート

クリーンなベイクを実行するため、ハイポリとローポリのメッシュを パーツ分けすると効果的です。そうしておけば、交差するエリアでのベイク問題を回避できます。パーツの命名が重要なので、ハイポリとローポリ部分に接尾辞「_H」「_L」を使用します。

すべてのローポリオブジェクトに同じマテリアル「Shoe」を追加し、選択したオブジェクトを FBXファイルとしてエクスポートします。続けて、ハイポリメッシュを選択し、別ファイルとしてエクスポートします。Substance 3D Painter で、ローポリFBX をファイルとして選び、ドキュメントの解像度を 4096 に設定、「ASM – PBR Metallic Roughness (starter_assets)」テンプレートを選択します。

クリーンなベイクを実行するため、ハイポリとローポリのメッシュを パーツ分けすると効果的です

04 ベイク処理

テクスチャセット設定の中にある「メッシュマップをベイク」でベイク用のパラメータを設定できます。[出力サイズ]:4096、[拡張幅]:32 を使用。よりクリーンなマップを作成したいなら、アンチエイリアスオプションを選択してもよいでしょう。

アンチエイリアシングオプションの下に[一致]という重要な設定があり、[メッシュ名ごと]に変更します。これは別々のオブジェクト部分をベイクするためのものです。メッシュに命名する際に使用した接尾辞を追加します。[高ポリパラメーター]で高精細メッシュを選択し、[テクスチャをベイク]をクリックします。ベイクに問題があるエリアがある場合は、[最前面の最大距離]と[背面の最大距離]を変更することができます。

これらのベイクドマップは、テクスチャリングの基礎となります

05 IDマップを使って、モデルに色をつける

テクスチャリングのベースとして塗りつぶしレイヤーを使用します。これにより、後で特定の部分の色を変更することが簡単になります。ここで IDマップが役立ちます:

まず、IDマップを Substance シェルフにドラッグ&ドロップし、テクスチャとしてインポートします。次に、テクスチャセット設定のIDスロットにドラッグします。これで、塗りつぶしレイヤーのマスクを作成するときに、[カラー選択でマスクを追加]オプションを使い、色を選択できるようになります。こうして、靴底、靴ひも、内側、異なるレイヤーの生地に色を割り当てます。

このワークフローの利点は、後でいつでも色を変えることができ、無限のバリエーションが作れることです

06 PBRパラメータの変更

ほとんどの塗りつぶしレイヤーは色を変えるだけですが、メタリックな部分や異なるラフネス(粗さ)の部分もあります。Substance 3D Painter では、塗りつぶしレイヤーのプロパティで「メタリック」「粗さ」の値を変更するだけ、簡単に調整できます。

この段階でノイズ、雲、グランジテクスチャを使ってラフネスを変更することもできます

07 不完全性

まだとてもきれいに、モデルは見えます。使用感のある外観を与えるために、不完全性を追加しましょう。この段階では、さまざまなレベルの汚れ、ほこり、傷のリファレンス写真を見ることが重要です。

AO(アンビエントオクルージョン)や曲率などのベイクされたマップをマスクとして使用する、あるいは Substance 3D Painter に付属している「スマートマスク」を使用してもよいでしょう。ただし、スマートマスクは出発点に過ぎないことを忘れないでください。マスクの一部を手動でペイントし、ハイトとラフネスにわずかな変化を加えることで、モデルの見た目が大幅に向上します。

ヒント:レイヤーをグループ化して、エフェクトの全体的な強さを簡単に調整できるようにします

08 カラーバリエーション

モデルに小さなロゴをいくつか追加した後、PBRテクスチャを4K解像度でエクスポートします。次に Blender でテストレンダリングして、改善できそうな部分をチェックします。仕上がりに満足したら、塗りつぶしレイヤーの色を変えて新しいカラーバリエーションを作成しましょう。ここでは、スニーカーのオンラインストアを閲覧してカラースキームのインスピレーションを得ています。このモデルでは10種類のバリエーションを作成しました。レンダリングでは、最も気に入ったものを選択します。

このモデルでは10種類のバリエーションを作成しました

09 シェーダーの設定

静止画には BlenderCycles レンダーエンジンを使用しますが、EeveeUnreal EngineMarmoset Toolbag などのレンダラーでレンダリングしてもよいでしょう。このモデルのシェーダーはとてもシンプルで、BlenderPrincipled BSDF ノードを使用して PBRテクスチャを接続しています。「Node wrangler」アドオンを使うと、この作業を簡単に行えます。

Principled BSDF ノードを選択した状態で、[Ctrl]+[Shift]+[T]キーを押し、テクスチャを選択します。自動的にテクスチャが接続され、BaseColor 以外のすべてのマップのカラースペースが「Non-Color」に変更されます。必要に応じて、サブサーフェススキャタリングを追加したり、カラーランプを使用してラフネスを調整してもよいでしょう。

モデルにライトを追加し、シェーダーのパラメータを調整することで、あらゆる角度やライティング条件でも美しく見えるよう最適化できます

10 レンダリング

最終レンダリングでは、床面が中心から端に向かって徐々に透明になる効果を加えるため、グラデーションをかけたグランドプレーンを追加します。メインのライティングには太陽灯と光を遮る模様付きエリアライトで十分です。また、モデルを背景から切り離すため、モデルの後ろにソフトなブルーのリムライトも加えています。シーンをより面白くするために、Marvelous Designer でズボンを作成しました。グランドプレーンを透明に設定してライティング効果のみを活用し、1000サンプルで 4K解像度のイメージをレンダリングしました。

このシーンでは、HDRとライトを変えて8つの異なるセットアップを試しました

プロのヒント1: 手続き型ワークフロー

3Dでは、非破壊ワークフローが適しているケースが多々あります。Substance 3D Painter を 使ったテクスチャリングをお勧めするのは、色や汚れ、ホコリのレベル、ロゴの位置などをいつでも変更できるからです。

プロのヒント2: モデルを美しく見せる

トポロジーの調整、完璧なUVとテクスチャの作成に多くの時間を費やしたので、最終イメージとして未加工のショットを使用しないでください。モデルにパーツを追加したり、地面や背景を追加したりして、イメージにちょっとしたストーリーを持たせてみましょう。ライティング、構図、プレゼンテーションの重要性を過小評価してはいけません。

 

完成イメージ

>>> パート1:モデリング はこちら

 

Sketchfab model

★3D Modeling/Texturing Showreel 2020 Jakob Scheidt(2分13秒)

 


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編集:3dtotal.jp