春を待つネコ:「Well, seems like Spring is a little late…」のメイキング

スペインの Daria Rashev氏 が、雪の中、春を待つネコ を描いた「Well, seems like Spring is a little late...(さて、春は まだ少し先のようだ...)」のメイキングを紹介します


Daria Rashev
コンセプトアーティスト|スペイン


はじめに

このチュートリアルでは「自然拡散光の設定」「その一般的な特徴」を作成します。今回の題材は「リアルな描写でスタイライズしたネコ」です。観察力を活かし、最高の結果を得る方法をお見せしましょう。

完成イメージ

01 アイデアを見つける

「準備」はプロジェクトで最も重要なステップの1つです。時間をかけて、最高のリファレンス画像を集めましょう。良いリファレンスがあれば、制作プロセス全体を通して役立ちます。

「田舎の風景の中のネコの絵を描く」というアイデアから始めます。余計な影響を受けないようにするため、カートゥーン調のネコのリファレンスは含めていません。代わりに、個性的な表情をしたネコの面白い写真をいくつか含めています。また、環境(背景)に使えそうな古い木造建築の例もいくつか見つけました。

プロジェクトを成功させるためには、最適なリファレンスを集める必要があります。画像管理には PureRef を使っています

02 下絵の作成

ラフスケッチから始めましょう。キャラクターの本質を捉えながらも、できるだけシンプルに保ち、本物のネコの表情をインスピレーションにします。スタイライズする際は、最もシンプルな形で最高の結果を得るように心がけてください。全体のシルエットとして、基本的な幾何学図形を使用します。落書きを続けていると、スケッチを見て笑みがこぼれてくるようになります(これは、カートゥーン調のキャラクターを作る上で良い兆候です)。

スケッチでは細かい表現を避け、全体的な形と感情に焦点を当てましょう

03 固有色(ローカルカラー)の追加

スケッチに大まかな色をつけていきましょう。最適な方法を見つけるために、リファレンスからインスピレーションを得ます。今回は自然拡散光を利用しているので、固有色(ローカルカラー)のままです。この色は日光の影響を受けず、空の色も反映されません。そのため、自然拡散光の設定は初心者にとって取り組みやすいものになります。

この設定は、色のコントラストを表したい要素に適しています。ここでは、フェンスをターコイズブルーに塗り、ネコの目の色でこの要素を補強することにしました。このステップでは最も暗い色相をはっきりさせるため、影を加えます。

基本色では、ディテールにこだわりすぎないようにします。ここでの目標は、使用するメインカラーの設定を決めることです

04 雪の追加

雪はイメージに良い雰囲気を加えるので、試してみましょう。白い雪は、構図の中で最も明るい部分になります。リファレンスを見直し、実際の雪の写真と、それが、ネコの毛の上にどのように落ちているかに注目してください。雪のほとんどは、ネコの頭と背中に積もっているはずです。さらに簡単なテストとして、ぼかした雪片を背景に加えます。

雪はシーンの中で最も明るい部分になるので、早い段階で加えることが重要です。

05 基本的な光と形を確立する

光と影を加えましょう。自然拡散光は柔らかく繊細ですが、それでも方向性はあります。右上から光が差し込んでいるので、ここに明るい色を追加しましょう。最も暗いのはネコの前足付近になります(ここにオクルージョンシャドウがあります)。顎の下にも柔らかい影を描いたら、目と鼻にもう少し焦点を当て、明るいハイライトを追加します。

光の方向と最も暗い影の部分を考慮しながら、ライティングパスを重ねていきます

06 毛のペイント

毛(または髪の毛)に関する最善のアドバイスは、最初から一本一本を描かないことです。代わりに、毛を独自のリズムと方向性を持つボリュームとして捉えましょう。大きな形から始め、ディテールはあとで加えます。ここでも、それらがどのように機能するかを理解するため、リファレンスを注意深く観察してください。

私は、毛を追加する際に、ネコの表情を豊かにするため顎を少し拡大し、環境からの反射光を左側に加えています。

毛を加えます。シンプルな形から始めて、後でディテールを加えましょう。最高の結果を得るために、リファレンスをよく研究してください

07 フェンスへのディテール追加

フェンスはこのイラストの大部分を占めるため、色のコントラストをつけ、田舎にふさわしいムードを加えます。リファレンスに目を配り、素材を正しく表現しましょう。

まず、板と板の間にできる隙間の暗い影から始めます。次に、木のテクスチャを表現するために、暗いひび割れといくつかのハイライトを追加します。最後に、塗装が剥げた感じを出すため、素木の部分を追加します。

フェンスのペイント - 古い木製フェンスの雰囲気を出すための簡単な手順

08 背景のディテール:木製の壁と雪

背景に取り掛かります。まず、屋根の雪の底部に影を追加し、ボリュームを出す作業を行います。次に、背景の壁を分割して個々の梁を示し、シンプルなライティングパスを追加します。最後に、空気遠近法を表現するため、背景全体の彩度を少し下げます。ネコを少し左に動かし、耳を少し尖らせました。これで構図にさらなるインパクトが加わりました。

背景と構図のディテールに取り組みます。空気遠近法を追加し、キャラクターのシルエットを強調します

09 ちょっとした面白いディテール:ブリキの空き缶

構図の右側が少し空いているため、面白いディテールを加えて環境を埋め、ストーリーを盛り上げてみましょう。ネコのシルエットを反射する「ブリキの空き缶」を配置することにしました。基本的な円筒形から始め、最も暗い影をつけます。形と位置に満足したら、ハイライトを入れて、最後に、ネコの映り込みを入れます。

希望どおりのルックにするため、意図的に反射を誇張しています。このような円筒状のものにネコのシルエットがはっきりと映ることは、実際にありえません。しかし、この誇張によって貴重なインパクトが得られるので、大きな問題ではないと考えています。

小さな金属をペイントする - これでシーンに素敵なハイライトと反射が加わります

10 表情の修正

ここで 最初のスケッチに戻って 再確認してみましょう。ここまでの描写の過程で、ネコの表情の良いディテールがいくつか失われていました。でも、問題ありません。すぐに修正できます。もう一度、ネコの姿を見て、形を整えていきます。この作業にかけた時間は 15分ほどでしたが、結果は 今の方がずっと満足のいくものになりました。それに加え、尻尾をもっとカーブさせてふわふわにしています。

現在の状態と初期スケッチを比較してみましょう。いくつかの良いディテールが失われていますが、それらを取り戻すときです

11 雪のディテールを描き、仕上げる

雪に戻りましょう。最初の 大まかな 雪の表現を もう一度描き直します。今回は より慎重に行い、雪片をより小さく、繊細にしました。ネコの上に雪の粒を描き終えたら、空中に雪片を描きます。これらを別レイヤーに保存し、何度もコピーして、雪が降っているような感じを出します。次のステップでは、モーションブラーフィルターを追加します。ここでも、リファレンスや実際の雪の写真を研究して、適切なルックを実現しましょう。

より信憑性を高めるため、ネコに積もった雪と空中の雪片を描き直します

12 完成イメージ

さあ、すべてをまとめるときです。細いブラシでひげを描き、鼻と目にシャープで鮮やかなハイライトを入れましょう。前のステップで述べたように、ここで雪片にモーションブラーフィルターを追加します。

さらに検討を重ねた後、背景もぼかすことにしました。そうすることで、ネコは より際立ちます。次に、画像全体の彩度をわずかに上げて、イメージをより生き生きとさせます。最後のステップで[覆い焼きカラー]を使い、ハイライトを強調します。このステップは注意深く行い、やりすぎないようにしましょう。これで完成です!

ぼかし、彩度、シャープなディテールの追加。イメージをより良くするための仕上げのステップです

ヒント:あらゆる場所でインスピレーションを探す

インスピレーションを得るときは、他のアーティストの絵だけにとらわれないでください。周りで起こっていることすべてに対して敏感になり、気を配りましょう。写真、彫刻、現代アート、周囲の人々を観察したり、音楽や詩を聴いたりしてください。これは新鮮なアイデアを得るための秘訣であり、燃え尽き症候群を避ける良い方法になります。

完成イメージ

関連書籍&チュートリアル

>> 書籍『Photoshop デジタルペイントの秘訣』(Daia Rashev 氏の「スチームパンクの探検家」を掲載)

>> 毛の描き方のチュートリアル:『動物の毛を描くためのヒント』

 


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編集:3dtotal.jp