スタイライズ キャラクター『A Letter To The King』のメイキング
ルックデヴ/ライティングアーティスト Luis Varon氏 が、スタイライズ キャラクター『A Letter To The King』のメイキングを紹介します
はじめに
このチュートリアルでは、コンセプトアートを基にしたモデリングから合成まで、スタイライズ キャラクターを作る手順を紹介します(使用ツール - リファレンス:PureRef、モデリング:Maya & ZBrush、テクスチャリング:Substance 3D Painter、ルックデヴ&ライティング:Renderman、コンポジット:DaVinci Resolve)。
左:完成イメージ / 右:コンセプト:Guille Rancel氏 の「A letter to the king」
シェーディング / ワイヤフレーム
01 リファレンスの収集
気に入ったコンセプトを見つけたら、まず必要なだけリファレンスを集めます。コンセプトをより深く理解するのに役立ちそうなあらゆるものを探しましょう。私は、骨格のリファレンスと「王」が身に着けているもの(服、剣、金属、羽)、さらにフクロウ、トポロジー、手の位置に関するリファレンスを集めました。
リファレンス
02 ブロッキング
パースのミスや問題をできるだけ早く見つけるために、コンセプトを研究し、形をブロッキングしていきます。私はブロッキングに Maya を使いますが、どんな3Dソフトでも行えます(この作品では、カメラを置いて焦点距離を決め、モデリングを始めて、コンセプトに合うように形を動かしています)。骨が浮かんでいたり、片方の肩しかなかったり、コンセプトのパースに合わせたりと、すべてのパーツをうまく合わせるのは大変でした。このステップでは、形の洗練に時間をかけすぎないでください。作り込みは、ZBrush で行います。
一般的な形をブロッキングし、大まかに作成すると、問題の早期発見に役立ちます
03 スカルプト パート1
ZBrush で作った形に磨きをかけ、プロポーションを修正、必要な部分にディテールを加えます。当面はプロポーションに集中し、[Move]ブラシや[Clay Buildup]ブラシを使って、コンセプトの形を作っていきます。形ができてきたら、[Goz]を使い、Maya のカメラ を通してモデル全体がどのように見えているかを確認します。モデルの全体的な形に満足するまで、この手順を繰り返してください。
ZBrushでモデルを作り込む
04 りトポロジと UV
キャラクターをアニメートさせる予定がないとしても、リトポロジをしっかり行いましょう。これは良い練習になり、将来のプロジェクトや、高品質のUVを素早く得るのにも役立ちます。まず、ZBrush でスカルプトしたモデルをデシメートして Maya に送ります。次に、リファレンスを確認し、リトポロジーツールを使います。今日では、どのソフトウェアにもリトポロジーのための優れたツールセットが備わっています。Maya の場合、[四角ポリゴン描画ツール]です。
リトポロジが完了したら、UV を作り始めます。UDIM を使えば、テクスチャリング、ルックデヴプロセスを素早く行えるでしょう。UDIM を使うときは、マテリアルに基づいてUVタイルを分け、カメラから見えないところで継ぎ目をカットしてください。ディスプレイスメント マップでは、継ぎ目に奇妙なアーティファクトが生じることがあるため、できるだけ隠れるようにしてください。
リトポロジを行いながら、形の流れを模索します
05 スカルプト パート2
モデルのトポロジと UV の準備ができたら、ZBrush にエクスポートして、ディテール、細かい傷、その他追加したいものを仕上げていきます。これらのディテールをスカルプトするのに、私は Michael Vicente氏 の[orb]ブラシ を愛用しています。フクロウには、Jarred Everson氏 のファーブラシ パック を使いました。
この後、[マルチマップ エクスポーター]を使って、法線マップ、ディスプレイスメントマップ、その他の必要な追加マップを作成します。私はよく、法線マップをより高いサブディビジョンレベルでエクスポートします。こうして、ディスプレイスメントでほぼすべてのディテールを取得し、法線マップでより小さなディテールのみを取得します。
さまざまなブラシでディテールを追加します
06 テクスチャリング
Substance 3D Painter ですべてをベイクしたら、コンセプトの手描きの質感を作り始めましょう。Substance 3D Painter のデフォルトの Photoshopブラシで手描き風の仕上がりにしたり、あるいはカスタム Photoshopブラシをインポートしてさらに印象的にしたりもできます。もちろん、テクスチャのペイントを楽しむことをお忘れなく。
デフォルトのブラシを使用するか、カスタムブラシを読み込んで使用します
07 ルックデヴ
Substance 3D Painter からテクスチャをエクスポートして、ルックデヴを開始しましょう。このプロジェクトでは Pixar Renderman を使います。[dome light]を作り、コンセプトに近い色の HDRI を配置して、マテリアルを試していきましょう。グルーミング、ひげ、草、羽毛、髪の毛もすべて追加します。
このステップでは、特別なルックを実現したかったので、ピクサーのマテリアルをたくさん調べ、『レミーのおいしいレストラン』の食べ物の作り方に関する興味深い記事を見つけました。その内容から、すべてのマテリアルで[Single Scatter]をオンにすることを思いつき、希望どおりのルックを実現しました。すべての Rendermanマテリアルには[Single Scatter]パラメータがあり、それらはうまく機能しました(必要な場所に散乱量を調整するグレーのテクスチャをペイントし、[Gain]アトリビュートに接続するだけです)。
必要に応じて[Single Scatter]の[Color]を変更します
パス(アルベド、ラフネス、メタルネス、法線、ディスプレイスメント、SSSゲイン)
08 ライティング
ルックデヴが準備できたので、シーンを活気づけるためにライトを配置しましょう。メインライトが届かない被写体のエッジを明るくするために、私はリムライトを多用します。また、マテリアルの色に応じて各ライトの色を変えて、マテリアルの明度を上げ下げしています。
このプロセスでは、コンセプトの全体的な明度を失わないように注意深く観察し、明度を向上させるライトを追加しながら行います。結果に満足したら、合成に必要なAOV を追加するだけです。私が追加した重要な AOVの1つが[Single Scatter]です。これにより、DaVinci Resolve の cryptomatte で希望する色を表現できるようになります。
リムライトでマテリアルの明度を調整します
09 コンポジット
Renderman で作成した AOV を使い、希望どおりの結果が得られるまで自由に調整します。コンポジットには DaVinci Resolve 内蔵の Fusion を使いました(Nuke のようなノードベースのツールです)。すべての AOV を取得し、cryptomatte を使って色補正して、一般的な要素を加えます。ここでは、Vignette や Zdepth なども追加しています。[Single Scatter]AOVは、私が探していたルックの核心となるものです。
[Single Scatter]AOVで、『レミーのおいしいレストラン』風のルックを作ります
プロのヒント1:ZBrush からIDカラーをエクスポート
ZBrush でポリグループからテクスチャマップを作成します。これを Substance 3D Painter に読み込み、IDマップとして使えば、マスクするのに役立ちます。ポリグループはUVから作ることもできるし、他の設定を選ぶこともできます。
IDマップを作っておけば、マスクするときに役立ちます
プロのヒント2:Substance でディテールまで描く
ZBrush から UV を含むデシメートされたモデルを Substance 3D Painter にエクスポートします。そうすれば、ペイントしたり、ZBrush で行なったディテールのほとんどを持つマスクを適用したりできます。Renderman では、ディスプレイスメントマップを使ってほとんどのディテールを再現します。
[デシメーション マスター]で[UV保持]がオンになっていることを確認してください
プロのヒント3:Metalness を PxrDisneyマテリアルに接続する
Pixar Renderman 23 でメタルネスを使うには、PxrDisneyマテリアルの[Metallic]に接続する必要があります。UV ですべての金属を1つのタイルに配置したのは、このためです。
メタルネスパスを[Metallic]に接続します
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