スタイライズ CGキャラクター「空挺師団 二等軍曹」のメイキング

スペインの 3Dシニア モデラー Javier Pedreno氏 が「空挺師団 二等軍曹」の作成ワークフローを紹介します


Javier Pedreno
3Dシニア モデラー|ReelFX、スペイン


彼は、第101空挺師団の二等軍曹、ジョー・"ピッティ"・パセッティ。第二次世界大戦、バルジの戦い で重要な役割を果たした(※ Abraao Segundo氏 のコンセプトを基に作成)

はじめに

これから、Think Tank トレーニング センター オンライン のメンターシップで作成した リール用キャラクター「Airborne Staff Sergeant (空挺師団 二等軍曹)」のメイキングを紹介します。このプロジェクトでは Abraao Segundo氏 に指導を受け、有益な教訓やヒントを得ることができました。それでは、モデリング、テクスチャリング、ルックデヴ、ライティング、ポストプロダクションなどのテクニックを順に紹介しましょう。

 

完成イメージ 1

完成イメージ 2

01 コンセプト/リファレンス

コンセプト選びでは、幅広い選択肢を重視しています。今回は、有機的な造形とハードサーフェスを併せ持つ、スタイライズされたキャラクターを探しました。それらを踏まえ、コンセプトには、いつも参考にさせてもらっている Sergio Pablos氏(元ディズニーのキャラクターデザイナー/アニメーター、最近では Netflix のオリジナルアニメーション作品『クロース』の脚本・監督を担当)のものを選びました。私は Sergio のキャラクターが持つカリスマ性が大好きです。

 

コンセプトとの比較

★The SPA Studios | ‘The Soldiers’ Speed Drawing by Sergio Pablos(2分32秒)

コンセプトが決まったら、次はその背景を調べ始めます。このコンセプトは、第二次世界大戦中のアメリカ兵を再現したものだとわかりました。第二次世界大戦の資料はたくさん販売されており、リファレンス探しは簡単でした。また、複製品もあるため、経年劣化のダメージを受けてない物を見ることもできました。

 

リファレンスボード

02 ブロッキング

このキャラクターで最も複雑だったのは、スケッチでアナトミー(解剖学)を解釈することでした(コンセプトの体のパーツは、顔と片手しか見えません)。まず、ZBrush で球や円柱などの基本図形から体のブロックを作ります。すべてのボディパーツを配置したら、ダイナメッシュでそれらをまとめ、1つのボリュームにします。筋肉は服の上からは見えませんが、しっかりとしたベースを作るため、全身の筋肉を意識して作業しました。

 

モデリングプロセス

03 リトポロジ

ボディができたら、[デシメーションマスター]で間引いて、Maya にエクスポートします。そして、スカルプトしたボディをレイヤーに配置し(オブジェクトをライブ選択)、別の新規レイヤーの上に[四角ポリゴン描画]ツールで新しいメッシュを構築していきます。

私はいつも、顔から始め、口と目のエッジループを作ります。これを基に、頬骨、鼻、あご、耳、首、そして、残りの主要なループを作ります。これらのエッジループができたら、あとは繋ぎ合わせて微調整するだけです。

 

顔と首のワイヤフレーム

04 プロップのモデリング

ボディと衣服以外のアセットは、すべて Maya でモデリングします。私のモデリングの手順は、スカルプティングと似ています。大きな形から始めて、次に二次的な形を作り、しっかりとした構造ができるまでは、ディテールを加えないようにします。初期段階では、Maya の[メッシュツール]>[折り目ツール]を使い、エッジループを使わずにハードエッジを作ります。そうすれば、ふさわしいフォームが見つかるまで、自由に形を変えることができるでしょう。

 

プロップのモデリング

05 スカルプティング

Maya で UV を展開したら、スカルプトしたいアセットを ZBrush に書き出します。顔と手については、まずシワや左右非対称などの主要な形から始め、次にサーフェスノイズを施します。最後に、部位ごとに異なるブラシとアルファを使って小さなディテールを加えていきます。

衣服のひだやブーツはすべて、[DamStandard][Move][Standard]ブラシでスカルプトしています。金属パーツに、小さな凹凸や切り傷をつけると、より有機的で摩耗したようなタッチになるでしょう。

 

顔、手、衣服をスカルプトし、ディテールを加えます

06 テクスチャリング

体の露出している部分は MARI でテクスチャをペイントします。まず、ボディをベースにして、そこに何層ものノイズレイヤーを加えて変化をつけます。私は、赤・青・黄などで、肌の色の異なる部分を塗っています。これらのレイヤーは、[乗算]モード、非常に低い[不透明度]で追加されています。

 

MARI でボディをテクスチャリングします

ボディ以外のテクスチャは、Substance 3D Painter で作成しました。私は「そのオブジェクトが最初はどんな状態だったのか」「時間の経過を経てどのように変化したのか」を想像するのが好きです。下図に、レイヤーとフォルダの構成を示します。通常は、ベースを作り、ディフューズ、グロッシネス、スペキュラ、バンプなどのさまざまなレイヤーを追加して、1からマテリアルを作っています。

 

Substance 3D Painter で、プロップをテクスチャリングします