1時間で描くスピードペインティング「ファンタジー:氷の世界」

コンセプトアーティスト James Paick氏 が、フォトテクスチャと描画テクニックを組み合わせたスピードペインティング、幻想的な「氷の世界」の描き方を紹介します


James Paick
コンセプトアーティスト/クリエイティブディレクター|米国

はじめに

このチュートリアルでは、フォトテクスチャと描画テクニックを組み合わせて、幻想的な「氷の世界」を描いていくプロセスを見ていきます。「構図」はあらゆる芸術作品において不可欠の要素です。スピードペインティングでは、短時間で全体的な印象や要求される効果を実現するため「構図」が極めて重要になります。

最初はラフな形状を使って、単純なアイデアに取り組みましょう。個人的な作品だけでなく、クライアントから依頼された作品でもこの手法を使用できます。1つのアイデアに縛られることなく、新しいことに挑戦して試行錯誤を重ねてください。そして、「幸運なアクシデント」の起こる余地を残しつつ、楽しみましょう。最後の仕上げはディテールです。作品に自分自身の感性とスタイルを加えていきましょう。

01 描画 - 背景を決める

初期段階では「コンセプトアートの一般的な方向性を頭に入れておく」のが理想です。ラフで大まかに描くと、遊びや探求の余裕ができるので、幸運なアクシデントや面白い発見があるでしょう。私の場合、ラフスケッチで構図を確立し、全体的な明度の構造やライティングを配置します。ファンタジーの構造物を示すという全体のコンセプトも念頭に置いて、自分のアイデアを最もよく表す理想的な構図を選んでください。

全体的な明度とライティングを念頭に置いて、大まかなスケッチを描く

02 トリガーを引く - 世界を構築する

「色調」「色の決定」はペインティングの極めて重要なフェーズであり、ここで意思決定が行われます。「描画」(ステップ01)を終えたら、「トリガーを引いて」ライティングと雰囲気づくりに専念しましょう。

フォトテクスチャと描画テクニックを組み合わせ、イメージをいじりながら魅力的な世界を作り上げます。大きくシンプルな形状と対比される小さな形状のグラフィックデザインを見てください。作業中は、目指しているイメージのリファレンス写真を手元に置いて確認しましょう。

カラーパレットとグラフィックデザインを決めて、世界を構築する

03 これは何? - デザインを決める

全体がまとまってきたら「イラスト」の段階から「コンセプト」の側面へ進みましょう。 まず、山に刻み込まれた 2本の巨大な柱を追加。私は壮大なスケール感を表現するため、がっしりと凝縮されたシンプルな形の柱を隣同士に配置しました。デザインと焦点(この場合は柱)を使って大胆に表現しましょう。それがイメージで最も肝心なことです。

大胆な焦点を描き、デザインを確立する

04 デザインを発展させる

カンバスにある程度の要素が描けたので、磨きをかけて魅力的で説得力のある「コンセプト」にしていきましょう。デザインをさらに発展させるため、柱の表面に反復デザインなどの面白い要素を加えてみます。また、要塞化された壁や通り道を加え、焦点に沿ってディテールを描いていきます。こうすると、絵の中で視線を誘導するリズムが生まれます。さらにこの段階で、設定・デザイン・コンセプトの解釈に役立つ追加要素について考えてみましょう。これには大気や木の葉などがうってつけです。

デザインを発展させてコンセプトを明らかにする

05 仕上げ

構図・色・ライティング・コンセプト、そしてクールな要素は揃いました。仕上げに、松明や人物を示唆するものを追加。それとともに、前景の木々を霧や明度で分離して奥行きを強調しましょう。スピードペインティングではディテールを緩く示唆的に描くと、想像力でそのギャップを埋める余地ができます。イメージを発展させつつ アイデアをシンプルに保ち、描き過ぎないようにしてください。

 

完成イメージ

※本チュートリアルは、書籍『スピードペインティングの極意』からの抜粋です

 


編集部からのおすすめ: フォトバッシュやブラシのテクニックで 素早く絵を仕上げる技法、スピードペインティングを学ぶには 書籍『スピードペインティングの極意』や 書籍『Photoshop で描くデジタル絵画 完全改訂版』をおすすめします。

 


翻訳:STUDIO LIZZ
編集:3dtotal.jp