Maya&ZBrush 使用、有機的な昆虫クリーチャーの作成

英国のシニアモデラー Fran Alonso氏 が、有機的なクリーチャーの作成ワークフローを紹介します(Maya、ZBrush 等使用)


Fran Alonso
シニアモデラー/クリーチャーアーティスト|英国


はじめに

名前は Fran Alonso です。現在、英国ロンドンを拠点に VFX 業界でモデラーとして活動しています。本記事では、プロダクション用のクリーチャー制作ワークフローを紹介します。人それぞれ、さまざまなやり方があると思いますが、これから紹介する手法は、この種のクリーチャーに適しているので、ぜひ参考にしてみてください。

完成イメージ

01 リファレンスの収集

ゼロから始める場合でも、コンセプトから始める場合でも、私は、リファレンスの収集に時間をかけます。そうすれば、そこから新しいアイデアが生まれ、より良い結果が得られるでしょう。クリーチャー制作では、自然や動物など多くの資料から、有機的な形がどのように形成されるかを学び、それを作品に反映させて、リアルなルックを表現します。

このプロジェクトでは Anatolii Leoshko氏 の素晴らしい コンセプト にインスパイアされました。主な形、二次的な形は、彼の作品を参考にしています。しかしディテールパスでは、元のコンセプトの「カニ」のようなルックではなく「昆虫」に近づけています。

リファレンス

02 モデリング1:主なかたち

主なモデリングツールは、ZBrush です。まず、ZSphere をいくつか配置し、クリーチャーの大まかなプロポーションとシルエットをブロックアウトします。形に満足できたら、より具体的なボリュームを表すために、アダプティブスキンをダイナメッシュへ変換します。モデルのさまざまなパーツを強調するのに十分な解像度を確保し、ディテールにはまだ触れません。

ZSphere からダイナメッシュに変換し、素体をモデリングします

03 モデリング2:二次的なかたち

主なかたちを決めたら、マスクしてサブツールへ分割します。私は、このクリーチャーを約40の小さなパーツに分けました。これにより、パーツごとに作業し、ダイナメッシュの解像度を高めることができます。主な形と二次的な形のモデリングで、9割使用したブラシは[Standard][Move][ClayTubes][DamStandard]です。

パーツ分けし、二次的な形をスカルプトする

04 リトポロジ、UV、ディテール投影

クリーチャーにディテールを加える直前に、最終的なメッシュを準備します。このクリーチャーはさまざまなパーツで構成されており、特定のトポロジーは必要ないため、ZBrush の[Zリメッシャー]ツールを使います。多くの場合、以下の4ステップを踏んでいます。クリーチャーの腕を例に見ていきましょう。

• 図の左は、リトポロジ(リトポ)を始める前の詳細度です。これは個人的な好みなので、他のアーティストはリトポ前にさらにディテールを加えるかもしれませんが、私の場合、最終的なトポロジーとUVを準備してから、ディテールを加えます(その方が扱いやすいです)。

• 高解像度メッシュ(ダイナメッシュ)を複製し、デフォルト値で[Zリメッシャ]を適用します([目標ポリゴン数]も調整します)。この作業を終えたら、メッシュを Maya にエクスポートしてUVを作成します。

• メッシュ(UVを含む)を ZBrush に再インポートします。高解像度モデルを表示し、最終モデルの上に重ねて、投影を開始します。メッシュを1回ずつサブディバイドして投影し、すべてのステップを制御します。投影する前にモーフターゲットを保存しておけば、万が一のときに元のシェイプに戻って再投影できるのでおすすめです。

• これで、次のステージ(ディテールパス)に進むための最終モデルは完成です。※「ZBrush 使用、『悪魔の胸像』のメイキング」でも投影プロセスを紹介しています。

 

リトポロジのワークフロー

クリーチャーの特定の部分については、Maya の[四角ポリゴン描画]ツールを使い、手動でリトポします。また、このモデルはプロダクション用なので、ディスプレイスメントマップやテクスチャの解像度を上げるため、UDIMレイアウトを選択します。

頭部などの特定の部位は、Maya の[四角ポリゴン描画]ツールでリトポします

05 モデリング3:ディテールの作成

この段階で、前に述べたとおり、カニのコンセプトから、ザーグ(「StarCraft」シリーズに登場する有機生命体)や昆虫のようなルックに近づけましょう。このプロセスは非常に簡単です。パーツごとに[Standard ]ブラシと[DamStandrad]ブラシでさまざまな形を試し、納得のいく有機的な流れを見つけます。ある部分ではディテールにこだわり、別の部分ではうるさくならないように目を休ませることを心がけています。

 

昆虫のようなディテールを作り込む

上半身のディテール

大きな面積をディテールで覆うときは、ZBrush の[サーフェスノイズ]ツールがとても便利です。私は2〜3のアルファで、このモデルのディテールのほとんどを追加しました。

サーフェスノイズでディテールを作成する