スタイライズ CGキャラクター「空挺師団 二等軍曹」のメイキング

07 ルックデベロップメント

ルックデベロップメント(ルックデヴ)の目的は、厳格な明度を持つ現実的な側面を再現するのではなく、自分自身の世界観で信頼できる側面を作り上げることです。私は普段、各マテリアルに実際のリファレンスを使用しています。

シンプルなマテリアルの場合、V-Ray の VrayMaterial にペイントしたテクスチャを接続し、Maya の[remapHSV]と[remapValue]ノードを使って調整します。より複雑なマテリアルには、VrayBlendMaterial を使用し、手描きのマスクでさまざまなマテリアルを組み合わせて接続します。

正しいルックデヴのために、1つの光源(ニュートラル ライティングの HDRI)のみを使い、変数が増えるのを回避します。他にも、ライティング条件の異なる HDRI を使い、どれでも正しく見えることを確認しましょう。

 

ブーツのシェーダネットワーク

水筒のルックデヴ

08 グルーミング

グルーミング用に、眉毛、まつ毛、口ひげ、あごひげ、産毛、コート、スカーフなど、パーツごとにディスクリプションを作りました。コツは、それぞれの描写に必要最低限のガイドを使い、目的の形を作ることです

この時点では、まだ魅力があるとは言えない仕上がりですが、モディファイアの魔法をかけると急変します。私が普段使っているモディファイアは、[ノイズ][束][カット][コイル]です。これらを、さまざまなアトリビュートのバリエーションで表現すると、リアルで面白い毛になります(※参照チュートリアル:ZBrush 使用、プリンセス戦士のメイキング)。

 

Maya で体毛をグルーミングします

09 ライト/カメラ/レンダー

ライティングは、映画のような仕上がりにすると決めていました。シネマトグラフィーについて調べているときに見つけた Chris Brejon氏 の素晴らしいオンラインブック「CG Cinematography」が大いに役立ちました。

シネマトグラフィーの理論を学んだら、いよいよ自分のシーンに応用していきます。まず、ライティングとフレームを変えて、3つのショットを作成します。それぞれのショットでストーリーを語らせたかったので、オンラインブックの例を利用しました。日の出のショットでは、コンセプトの雰囲気を表現するため、似たようなカメラアングルとパレットを使っています。

 

日の出のショット

シネマトグラフィーの理論を基に、ライト、カメラを設定します

Akin Bilgic氏 の V-Ray render optimization のおかげで、レンダー設定を非常にシンプルかつ高速にすることができました。

 

レンダー設定

10 ポストプロダクション

ポストプロダクション(ポスプロ)には Photoshop を使い、32ビット、sRGBカラースペース、リニア ワークフローで進めます。EXRフォーマットは ダイナミックレンジが広いので、[レベル補正]を使ってライティングを細かくコントロールすることができます。私は通常、[加算]モードの各ライトパスでイメージを構成し、それぞれのパスのレベルを調整します。ライティングが決まったら、背景を追加し、キャラクターに合うように色調整と[レベル補正]を行います。最後に、ムードを出すため、具体的なカラーパレットを考慮してカラーグレーディングを施します。

 

 

完成イメージ 3

11 デモリール

静止画のレンダリングとは別に、デモリール用のカメラアニメーションとターンテーブルショットを作成します。そのため、3点照明と、最も重要なアセットに焦点を当てたカメラアングルを使用します。レンダーパスは Nuke で合成し、そこでカラーグレーディングの補正も行います。最終的な編集は After Effects で行い、さまざまなタイトル、クレジット、音楽を加えます。

 

★Javier Pedreno - DemoReel - 2020(1分46秒)

プロのヒント1:ミリタリーベルト

ベルトでは、両端と中央(繰り返す部分)を Maya でモデリングします。次に、それを ZBrush に書き出して、ポリグループで分離し、[InsertMesh]ブラシを作成します([ブラシ]>[インサートメッシュの作成])。このようにして、シンプルにコートに巻くベルトを作成すれば、正しいサイズが見つかるまで、いろいろなサイズを試すことができます。

ベルトは[InsertMesh]ブラシで作成

プロのヒント2:テクスチャリング

アセットを細部までテクスチャリングできるように、ZBrush の[Zプラグイン]>[デシメーションマスター]を使って、品質を落とさずにポリゴン数を最適化します。このとき、[UV保持]オプションをオンにして、間引かれたモデルがオリジナルモデルと全く同じ UV を持つようにします。

ポリゴン数を減らします

プロのヒント3:レンダーパス

ビューティパスとは別に、各光源のレンダーパスと、さらに、反射、ディフューズ、スペキュラ、光沢、屈折、Z深度などのレンダーパスを作成します。最後にこれらを Photoshop で合成し、イメージを完成させましょう。

複数のレンダーパスを合成して完成させます

 


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編集:3dtotal.jp