髪の毛の描き方:金髪と赤毛

ドイツの フリーランス アーティスト Anne Pogoda氏 が、髪の毛を描く秘訣を紹介します


Anne Pogoda
フリーランス アーティスト | ドイツ

はじめに

問題は「どうして赤毛と金髪の方が黒髪よりもペイントが難しいのか?」ということです。そうですね、正直なところそう簡単には答えられないのですが、こんな説明でどうでしょうか。

黒髪をペイントする場合には、基礎となる「黒」のパターンを準備して、その中に「白」いハイライトを入れていき、必要に応じて最後に、赤か青のつやを部分的に追加して全体を生き生きと見せたら、それでできあがりです!

これに対して金髪をペイントしたい場合は、最終的なできあがりは 暗い色や黒い色に見えてはいけません。つまり「一度にたくさんの色を扱う必要がある」のです。金髪を描くためのパレットを作ろうとすれば、(基本の色だけでも)赤系と黄色系のさまざまな色を使う必要があります。

髪の毛をペイントしようとすると「色をうまく扱うことの方が、何かの色を単純に明るく(薄く)するよりもずっと難しい作業であること」が分かるはずです(黒髪の場合にはそれだけで済んでいました)。それでは、金髪のペイントの下塗りから直接始めてみましょう。

ここで使用する例は、少し前にあるクライアントのために作成した美しい女性の絵です。最初は、主なリファレンスとして、コートニー・コックス が挙げられていましたが、最終的には オリヴィア・ワイルドヘイデン・パネッティーアキャリスタ・フロックハートEnayla の作品の「Ailil」という絵も参考にすることになりました。

クライアントが求めているキャラクターのイメージがはっきりしない場合は「クライアントが心に描いている人物像を実際に表現したらこうなると思う有名人または芸術作品を挙げてもらう」と役に立ちます。このような情報がないと、クライアントが気に入ったり共感したりするような作品を作ることはほとんど不可能です。

このことを伝えて リファレンスをすべて集めた後では、コンセプトイメージを提案して、クライアントがそのイメージを気に入るかどうかを確認することもできるようになります。それでは、続けましょう。

01 大まかに下塗りをして ベースを準備する

この作業の結果が 図01 です。人物を描く計画を立てるときは「使いたい色を選んでざっと塗ってみる」のが一番です。この例の場合、エッジがハードなエアブラシを[間隔]を5%に設定して使用します。ここでどのように作業したかが良く分かるように、図の左上にベースとなる髪のパターンに使用した色を示しておきました。ご覧のとおり、明るい色から暗い色まで、赤系と黄色系の色をいくつか使っています。これは今回の目的が、単に基本的なヘアースタイルを紹介するだけではなく、基本的なライティングのパターンを紹介することだからです。

髪のベースには、一番暗い色であるこげ茶色を使います。その上から、他の3つの明るい色を乗せていきます。つまり「先に暗いベースをペイントしておいてから、実際のライティングの状態を定めていく」ということです。この段階では、後頭部側はほとんど目につかないように、いくつか大きな赤い毛の束をペイントしておくだけにしてあります。

この段階で大事なのは、「前髪」の形をどうするかです。前髪は、常に人物の頭に沿って自然に流れている必要があります。そうでないと、位置がずれているか、かつらのように見えてしまいます。一番暗い色をベースにしておくと、黄色い色調のハイライトを追加する箇所のほとんどで効果があります。一番暗い色が透けて見えたり、黄色い束の間から見えるので、髪に奥行きがでます。また、複数のベースカラー(赤と黄色)が使われていることで、より生き生きとした印象になります。

図01

02 形状を定める

次の手順(図02)では、形状をより明確に定めていきます。実はここで、彼女の後頭部の髪をカールさせようと考えていました(後で取りやめましたが)。さて、これらの矢印は何でしょうか?

見た目ほどややこしいものではありません。この作品の中でのライティングの状態を見ると、イメージを大きく2つに分けることができます。「片側では明るい色を使い、もう片側では暗い色を使って作業します」 こうやって分けておくと、求めている雰囲気を貫くことが簡単になり、見失うことがありません。

左側では、引き続き 前髪の作業を進め、斑点状のブラシを使ってハイライトが当たった束を追加していきます。一方、後頭部などのイメージの右側では、少し赤味がかった色を使って、全体的にもう少し生きた感じを出します。この色は、境界線(図で矢印が付けられている線)に最も近い頭の後ろの部分だけに使うようにします。この段階でも頭の真後ろの部分は目立たないままにしてあるので、先ほど使った暗いベースの色のままになっています。こうしておくと、頭(と頭につながっている髪)を立体のオブジェクトとして見ることができるという効果もあります。

図02

03 つなぎを見出す

ここでは、先ほど「境界線」で慎重に分割した部分をつなげていきます。今度は、かなり小さい斑点状のブラシを使って作業する必要があります。図03 を見てください。前髪の形が矢印でよりはっきり示されています。前髪の輪郭をよりはっきりと定めるために、基本的にはパレットのすべての色をもう一度使います。この作業によって、ステップ 01 と 02 で分かれていた2つの部分がつながるという効果もあります。

コツは「小さめの斑点状のブラシを使って、パレットにある明るい色でカールをペイント」することです。輪郭を描きたい場合は、次に単に濃い色を選択して、2つのカールの間の境目の輪郭をはっきりさせていきます(図03)。

図03

04 後頭部

ここでやっと後頭部に注目していきます。前にも言いましたが、最初は「髪をカールさせよう」と思ったのですが、作業プロセスの理由から取りやめました。後頭部に新しい髪型を作るため、比較的大きな斑点状のブラシを使って、こげ茶色で新しく基本的な形をペイントします。次に、これよりも明るい色を1色選択し、図04 で示したように、新しく作ったベースにハイライトを追加します。この段階では、この作業はここまでにして、前髪の作業に戻ります。

小さい斑点状のブラシを使って、図04 の右側に示されているハイライトの色で、引き続き、形状をペイントしていきます。このとても強いハイライトの色を使うときは注意が必要です。この色は、髪にボリュームと生き生きとした効果を与えるために、束の「最も盛り上がった部分」にだけ使うと効果的だからです。ハイライトの作業が終わったら、濃い赤を選択して頭の上部にある束をもう少し暗くします。これで、この頭が立体のオブジェクトであることが、観る人にさらによく分かるようになります。髪を暗くする作業は、ステップ 03 で説明したように処理するとうまくいきます。

図04

05 髪の束のペイント

ステップ 04 での作業結果に重ねて同じ作業を続けますが、今度はもっとディテールを処理していきます。斑点状のブラシを選び、とても小さいサイズに設定します。これからたくさんの細かい毛をペイントしていきますが、先に前髪と後頭部の形状をしっかりと定めておいたので簡単なはずです! この作業は ステップ 04とまったく同じですが、とても小さなブラシを使って毛の束を個々にはっきりとさせていきます(図05)。

図05

06 人物を背景になじませる

今度は、背景の色を拾い、ソフトエアブラシの不透明度をわずか 30%以下に設定して使います。ブラシは 図06 のような大きいものを使う必要があります。背景の色を背景と頭の「境界」に慎重にかぶせていきます。人物と背景のつながりがよくなるうえに、絵全体をカラフルで生き生きした印象にする効果もあります。理論上はこれで完成ですが、いったんできあがった髪にちょっとした追加効果を適用してもよいでしょう...

図06

 

完成イメージ

※このチュートリアルは、書籍『Digital Painting Techniques 日本語版』に収録されています (※書籍化のため一部変更あり)。

 


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編集:3dtotal.jp