スピードペインティング「エイリアンの熱気球」B
「エイリアンの熱気球」というトピックで、今回は、米国のコンセプトアーティスト Nathaniel West氏が、スピードペインティングを過程を紹介します
>> 英国のアートディレクター Emrah Elmasli氏 の「エイリアンの熱気球」A
ステップ 01
このスピードペインティング(早描き)では、まず自由にスケッチするところからはじめて、先入観をまったく持たずに、何かが現れてくるのを待ちました。少しの間、思いのままにいくつかの形や明暗のスケッチをしていると、前景の目的地に向かって進んでくる大きな気球の姿が見えてきました。私は、気球はとても静かなものだと思っています。このシーンもそんな雰囲気を帯びてきました。
作品の制作は、グレースケールでラフにスケッチをするところからはじめました(図01)。ここで一番大切なのは、明暗の構成が良いこと、つまり、明度によって塗り分けた状態で、生き生きとしてダイナミックな作品になっていることです。これは、ペイントするにあたって最も重要な段階であると言っても良いと思います。
色を使いはじめる前に詰めておく必要があります。皆さんも、明暗の構成がうまくいくと、ペイントの以降の作業を簡単に進められるはずです。しかし、明暗の構成がおかしいと、明暗を修正しない限り、以降の段階のペイント作業は無駄な努力に終わってしまうことに気づくはずです。明るい部分と暗い部分がはっきりしていないという理由だけで、絵がダイナミックに見えないことがよくあります。「単調な」見た目になってしまっているのです。
図01
ステップ 02
明暗の構成が決まったところで、次は絵全体に色をかける作業に入ります。微妙にかけることも、思い切ってかけることもできますが、どちらの場合も私は絵全体に1つの色をかけて、パレットを統一しておくようにしています。その後、色のバリエーションと彩度に変化を付けながら、作品をさらに発展させていきます。この段階のペイントプロセスでは、明暗の構成を維持するように常に注意を払います(図02)
図02
ステップ 03
絵の全体のパレット、色の幅が決まったら、ディテールをさらに発展させる作業に取り掛かります。まず、
熱気球の球体部分を描き、それと同じ色と形の物を画面右上の隅にも配置しました。それから、人影を 2体描きましたが、彼らにも同じ印象の色と形を使うことにしました(図03)。
これらの作業はすべて、ストーリーの点から、気球と前景を結びつけるために行いました。いったんは、地面から放出されている煙の筋を描いてみましたが、この段階で消すことにしました。景観をあまり途切れさせたくなかったからです。山を描いたら、空が締まってきました。
図03
ステップ 04
思い描いたとおりの効果が出せるように、テクスチャと色をかぶせながら、さらに風景のディテールを追加していきます。熱気球にはかなり修正を加えたので、気球のデザインも形になってきました。空にもさらに色の変化を付けました(図04)。
図04
ステップ 05
今回の主な題材は気球なので、ここからは、気球だけに集中して作業を行っていきます。気球にざっとディテールを追加してから、気球の外側のエッジに環境光を当てて、追加したディテールを周囲に溶け込ませます(図05、06)。
図05
図06
ステップ 06 - 仕上げ
風景と前景にさらにディテールを追加します。ディテールの処理がすべて終わったら、雲の隙間から差し込んでくる光の筋を描き加えて、光が当たる箇所にハイライトを追加しました。また、部分的にコントラストを上げて、シーンをもう少しドラマチックにしました。最後に、前景のエッジに少しハイライトを加えて、風景と区別できるようにしたところで、完成と言ってもおかしくない仕上がりになりました(図07、08、09)。
図07
図08
図09
※このチュートリアルは、書籍『Digital Painting Techniques 日本語版』に収録されています (※書籍化のため一部変更あり)。
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