ZBrush 使用、プリンセス戦士のメイキング

スペインの シニア 3Dアーティスト Javier Benver氏 が、スタイライズされたプリンセス戦士の制作ワークフローを紹介します


Javier Benver
フリーランス アーティスト|スペイン


はじめに

SNS では「Javier Benver」というニックネームを使っている Javier Benitez といいます。子供の頃から絵を描くのが好きで、将来はキャラクター制作に専念しようと思っていました。これまで、ビデオゲームや VR業界で仕事をし、その他のオーディオビジュアル プロジェクトのコンテンツも制作しました。3Dキャラクターやエンバイロメントだけでなく、コンセプトアート制作まで幅広くやってきました。

01 コンセプト

私はいつも Pinterest で、インスピレーションを与えてくれるリファレンスを探しています。今回は女戦士をイメージし、人物・テクスチャ・衣装・ヘアスタイル、そして他のアーティストの類似作品など、リファレンスとなるさまざまな画像を収集しました。このキャラクターは、米国のTVドラマ『ジーナ』のスタイルを参考にしています。まず これらの素材を基に、コンセプトのベースとなるムードボードを作成します。

TVドラマ『ジーナ』を参考に作成

★TVドラマ『ジーナ』:Xena Fights Pompey | Xena: Warrior Princess(4分27秒)

絵を描くときは、それを 3Dにする方法、使用するプログラムやレンダリングのフレームビューなどを常に念頭に置いています。

02 モデリング

これまでずっと 私はモデリングをしてきたので、作品に使えるアナトミー(解剖学)ベースモデルをいくつか持っています。しかし今でも時々アナトミーを研究したいと思っています。まず、ブロッキング段階でプロポーションが 2Dデザインに合っているかどうか確認します。私にとって最も重要なことは「アピールのあるキャラクターを作ること」ですが、その前提は、リファレンスにしたデザイン以上のものにすることです。アピールのために許可を取る場合も、オリジナルから離れる場合もありますが、いずれにせよ、自分のデザインを基にしています。

ブロッキングでは基本的に ZBrush の球と円柱を使い、[シンメトリ有効]をオンにして作業します。人型モデルはパーツごとに分けておくと作りやすいでしょう。そうすれば、あとで再利用したり、他のキャラクターに合わせたりすることもできます。

ベースモデルをデザインに合わせてブロッキングする

ブロッキング段階のボリュームに満足したら、ダイナメッシュを作成し、メッシュのディテールを制作し洗練させていきます。ディテール段階では、Substance 3D Painter でベイクすることを念頭に置き、特に口や指など、投影したときにコンフリクトを起こしそうな部分は、適度に離しておきます。

ディテールを洗練させる

高解像度モデルが完成したら、次は低解像度モデルの制作に入ります。リグやアニメーションでメッシュをうまく機能させるには、良いトポロジーが重要なので、3ds Max でリトポロジーを行います(もちろん、リトポロジー専用のプログラムがあるのは知っていますが、私の場合、3ds Max がとても快適なのです)。

私は 3ds Max でリトポロジーを行います

今回はトポロジーの整ったモデルがあったので、ZBrush の[ZWrap]プラグインで、そのトポロジーとUVを作成した高解像度モデルに投影・再利用します(※)。

ZWrap で投影します

★ZWrap の使い方:ZWrap Plugin for ZBrush(2分2秒)

※編集部より:「ZBrush プラグイン ZWrap を使った テクスチャの転送(※英語ムービー)」も合わせてご覧ください

キャラクターのベースができたところで、残りの要素を準備していきましょう。目を作るときは、「虹彩のテクスチャを適用する部分」「角膜や強膜のような目の外側を覆う部分」の2つに分けるのがお勧めです。虹彩のテクスチャは、iPad の Procreate で描いています。

Procreate でテクスチャを作成

目が完成したら、最後のモデル「アーマー」を作る準備に入りましょう。私はアーマーの各パーツを 3ds Max で作成しました。いつも使っているサーフェス モデリングのプロセスに従い、まずモデル上でアーマーの各パーツをリトポロジーします。このとき、最終的にローポリメッシュとしても使えるように、綺麗なトポロジーを心がけます。完成したら、[シェル]モディファイアで厚みを出しましょう。

ここで最も重要な作業は、ZBrush のメッシュ分割で滑らかにしたくないポリゴンに、異なるIDを割り当てることです。これは ZBrush でも実行できますが、3ds Max の方がうまく制御できるでしょう。

モデルに ID を割り当てたら、[GoZ]プラグインで 3ds Max から ZBrush に送ります。ZBrush でハードエッジを確認するため、[ジオメトリ]>[クリース(折り目)]>[PG(ポリグループ)クリース]をクリックします。

3ds Max でアーマーを作成します

さらにディテールを追加しましょう。まずメッシュを何度か分割します。次に Procreate でアルファを描き、それをZBrush にインポートして、[MaskPen]ブラシでモデルに適用します。最後に[変形]>[膨張]で少しだけボリュームを出します。

ZBrush にアルファを読み込み、ディテールを作成します