Weta デジタルの Fady Kadry氏による『戦士 (A Warrior )』のメイキング
Wetaデジタルの 3Dジェネラリスト Fady Kadry氏が、その作品『戦士(A Warrior)』のメイキングを解説します(ZBrush、Maya、MARI、Nuke 等使用)
このプロジェクトの制作プロセスについて、できるだけ簡単に分かりやすく説明したいと思います。まず、リファレンス収集から始め、最終的にレンダリングとコンポジット(合成)へと進みます。このメイキングから何か役立つものを見つけてもらえたら幸いです。
リファレンス収集
どんなプロジェクトでも重要なことは、制作プロセスを通して、モチベーションを維持できる要素、インスピレーションとなる要素を見つけ出すことです。研究対象となるリファレンスがたくさん必要になるでしょう。私は、これらのリファレンス画像から、緻密で複雑に重なり合うアーマー制作のインスピレーションを得ました。
リファレンス画像
アーマーのモデリング、スカルプティング、UVマッピング
リファレンス画像や素材の収集を済ませたら、全体のモデリングを開始します。私は Maya でベースボディのプレースホルダを作成しました。そして、ちょっとした検証を兼ねて、このキャラクターを8頭身ではなく7.5頭身で作ることに決めました。ボディを大まかに作成した後は、胴体のアーマーを重ねていきます。胴体は、他のパーツ、腕、足、腰を配置する際のガイドになります。ZBrush に移動する前に、アーマーの UV マッピングを忘れないようにしましょう。今回、残念ながら、スカルプトプロセスでファイル破損が発生、アーマーの大部分をやり直すはめになりました。そこで、ZBrush ファイルを配置に応じて5つのセクションに分けることにしました。さまざまなスカルプティングテクニックとブラシで([Standard]ブラシと Ryan Kingslien氏のアルファの組み合わせなど)、アーマーにディテールのある質感を作成しています。
アーマー前部のワイヤフレーム(オブジェクトとレイヤーを表示)
アーマー背部のワイヤフレーム(オブジェクトとレイヤーを表示)
使用したスカルプティングテクニック(ブラシ、ストローク、アルファ)
顔のスカルプト
アーマーをスカルプトしてテクスチャを作成した後は、顔のモデリングを開始します。いつものように低解像度ベースメッシュから解像度を上げていき、ディテールを組み込んでいきます。アーマーと同様に必要な解像度の UV になっていることを確認。図のように リック・ベイカー氏のアルファ と自作のアルファ、そして[Standard]ブラシを使いました。
顔のスカルプト
マップ抽出、MARI のセットアップ、テクスチャリング
スカルプティングを終えたら、MARI でテクスチャをペイントする際に必要なマップを抽出します。ガイド用の AO(アンビエントオクルージョン)マップを作成し、ディテールに基づいて損傷や破れと色のバリエーションをペイントしました。私は、ベクター ディスプレイスメント、32ビット 浮動小数点ディスプレイスメント、法線マップ(AOを作成するため)を使用。ペイントしたマップは、ディフューズ(拡散反射)、スペキュラ(鏡面反射)、もともとあった抽出マップの中・高解像度ディテールです。
テクスチャマップ(前面)
テクスチャマップ(背面)
毛の作成
眉毛やまつ毛などの細かい部分の毛には、Maya の nHair と ZBrush のファイバーメッシュ(FiberMesh)をカーブに変換して使います。図は複数の Maya ヘアシステムで、キャラクターに毛を追加するアプローチを示しています。
キャラクターに毛を追加
シェーディングとルックデヴ
キャラクターのルックデヴ用にライトリグを作成して、さまざまなライト条件でシェーダがどのように機能するかを確認する必要がありました。
レンダーパス
すべてを好みに合わせてモデリング、テクスチャリング、ライティングを施したら、NUKE に移動してコンポジット(合成)用のレンダーパスとレイヤーを設定していきます。
Nukeのコンポジット(合成)ネットワーク
顔のクローズアップ
最終イメージ
編集部からのヒント
フォトリアルなCGキャラクターの制作テクニックを学習するには、書籍『3Dアーティストのための人体解剖学』 や 『MAYA キャラクタークリエーション』をおすすめします。