ゴージャスな『若いメデューサ』のメイキング

ルーマニア、トランシルヴァニア出身の独学3Dアーティスト George Manolache氏が、ゴージャスな作品『若いメデューサ』の制作について解説します(ZBrush、3ds Max、MARI、V-Ray、NUKE、Photoshop等使用)


George Manolache
リード 3Dアーティスト|ブカレスト


私にとって、はじめての人間キャラクタープロジェクトだったので、新たな領域(人間のスカルプト、MARI でのテクスチャリング)を探求したいと思いました。この制作で想定するコンセプトは「モンスターの誇張された特徴をすべて差し引き、若い魅惑的な女性が微妙な苦痛を味わっている姿」です。

通常、私の場合、プロジェクトを開始する際、頭の中に明確なアイデアがあります。しかし、そうは言っても、改善の余地を見つけるために多くのリファレンス、テクスチャ、インスピレーションの源泉を求め、Google 検索をします。

メデューサのリサーチは、唇、目、鼻、解剖学、アクセサリー等、いくつかの視点から行い、目指す「美しさと野性的な姿」を作り込むために、それらを組み合わせていきます。コンセプトスケッチは必要ありません。

ステップ01:モデリング

20代の女性のスカルプティングは、美しさと醜さの境界が、ミリ単位の精度で変わってしまう難しい手順です。そこで、人体解剖リファレンスを研究する必要がありました。ZBrush の[Clay Tubes]ブラシが私の相棒です。まず、一般的なポーズ(上半身のみ)から着手しました。正確性を保つため、旧来の ZSphere を使った方法でリトポロジを行うのが私の好みです。

唇でさまざまなアプローチを試した結果、投影したイメージの上から行うスカルプティングが最も満足できる方法でした。ベースとなる唇の構造を作成した後、これを実行しました。

唇。Spotlight 投影前(上)と投影後(下)

イヤリングのディテール(ZBrush のスナップショット)

ステップ02:眉毛のスプライン

体のパーツのほとんどは、リファレンス写真をベースにモデリングしました。例えば、写真にあった毛のパターンで眉毛を作りたかったので、写真上にPhotoshop のパスを描き。3ds Max で、そのパスをスプラインとして読み込み、モデリングした細い/太い毛を適用しました。少々手間のかかる退屈な作業ですが、望みどおりの結果になりました。

眉毛のスプライン

眉毛を適用した顔

ステップ03:蛇革

蛇革の衣装は、ZBrush でしわを施したメッシュを基に作成しました。表面に使用したディスプレイスメントパターンは、Photoshop でカスタムペイントした蛇革テクスチャです。

蛇革テクスチャの衣装

ステップ04:蛇

蛇は 3ds Max でモデリングします(頭と胴体)。私は、2004年に趣味で 3D の勉強を始めました。大好きだった車を描くツールとして使っていたので、培ったハードサーフェスモデリングの経験がここで役立ちました。頭部は、全体のボリュームを作成して、鱗のシェイプをいくつか切り込み、ベベル(面取り)して調整します。胴体では、ポリゴン数を抑えた鱗のシェイプを1つ作成。ディスプレイスメントでなく、ジオメトリを組み込むのが私の好みです。鱗を 16 x 17 に複製してサーフェスを作成、リアリティを出すために微妙なバリエーションを加えます。続けて 、[パッチ変形]モディファイヤで胴体のオブジェクトに合わせ、四角形パッチを適用。これでセグメントを複製すれば、どんなに長い蛇でも作成できます。

蛇の構成パーツ

メデューサの蛇の髪の毛(配置済み)

ステップ05:テクスチャリング

私のアプローチは、Justin Holt氏の『Tank Girl』で使用されている MARI のワークフローを参考にしていますが、それを大幅に調整しました。まず、ディスプレイスメントマップから始め、それをベースに、ディフューズ(拡散反射)と SSS(サブサーフェス スキャタリング)マップを作成します。ディスプレイスメントマップ(8k)は、Photoshop で作成したカスタムテクスチャとスキャンデータを ZBrush で書き出したディスプレイスメントマップに組み合わせています。

MARI のプロシージャルノイズは、テクスチャ(特に体部分)の改善に役立ちました。ディフューズマップ(4k)は、Photoshop で反射や影を削除した肌の写真をベースにして作成。SSS マップは、特定の領域に彩度や色相の変化を加えた拡散反射(ディフューズ)マップです。

ディスプレイスメント、拡散反射(ディフューズ)、SSS マップ

ディスプレイスメントマップのクローズアップ

モデルに適用したSSS マップ

ステップ06:ライティングとレンダリング

V-Ray の基本的な3点照明の設定を、ガンマ 2.2 のワークフローとマルチチャンネル OpenEXR 形式でレンダリング。静止画の場合、反射や光沢といった個別マップを作成するよりも、複数のシェーディング設定でレンダリング、ポスプロで結果を組み合わせるのが私の好みです。これらと V-Ray の要素を作成できたので、必要な調整コントロールが揃いました。簡単にマスキングできるように、ワイヤカラー要素でなく、RGB MutiMatte を使うのも私の好みです。

メデューサの V-Ray のレンダリング要素

ステップ07:コンポジット(合成)とポスプロ

Photoshop とNUKE の間を行き来しますが、合成前にレンダリング要素のペイントと修正を頻繁に行う自動車プロジェクトほどではありません。主に Photoshop でレンダリング結果の上に作業します。今回は、NUKE の最終出力段階で、微妙な色修正、色収差、被写界深度、グロー、シャープネスの調整などを施しました。もちろん、場合によっては、Photoshop で調整してもよいでしょう。

最終モデルのワイヤビュー

最後に

新しいことを始めるとき、最も難しいのは、はじめの1歩です。しかし、私は、奇妙な見栄えだった初期段階を粘り強さで乗り越えました。恥ずかしいので、それらの初期作品をお見せできませんが、皆さんも粘り強さで乗り越えてください。

合成とポスプロ後の最終イメージ

編集部からのヒント

ZBrush を使用したキャラクター&クリーチャーの制作方法を学習するには、書籍『ZBrushキャラクター&クリーチャー』を、フォトリアルなCGキャラクターの制作テクニックを学習したいなら、書籍『3Dアーティストのための人体解剖学』『MAYA キャラクタークリエーション』をお勧めします。


翻訳:STUDIO LIZZ
編集:3dtotal.jp