『ザ・バーバリアン』のメイキング

オランダのシニア 3DアーティストIvo Diependaal氏が、その作品「The Barbarian」のメイキングを解説します(ZBrush、Maya、MARI、V-Ray、Photoshp等使用)

このチュートリアルではプロジェクトにおける作業プロセスの全体像を示し、作品を生き生きとさせるキーポイントに焦点を当てます。ユーザレベルに関係なく役立つヒントを得られることでしょう(※使用ソフトの基本的な理解が必要です)。

リファレンスが重要!

新しいプロジェクトを始めるときは、まず最初にリファレンス画像を検索します。他のアーティストによって制作されたもの、解剖学の研究、テーマに関連した自然界のイメージなどからインスピレーションを受け取れることでしょう。それ以外のソースでも、刺激となるものや、印象に残るものを選んでください。作品に活気を与えられることが重要です。Pinterest は使い勝手の良い便利なウェブサイトで、画像ライブラリや特定のコレクションを閲覧したり、自分のコレクションを作成できます。Kuadro などでもリファレンスシートを簡単に作成できるでしょう。

キャラクターのスカルプト

ZBrush でラフな体の形状をモデリングします。私は、がっしりした肉づきの良いキャラクターを作りたかったので、体から始めました。このように、確実に分かっている物事から着手すると簡単です(このプロジェクトでは、筋肉質の大男を作ると予め決めていました)。この段階では、全体的に見栄え良くするため、胴体部分に集中します。[Move]ブラシと[Clay Buildup]ブラシを主に使いますが、最終的なルックに近づくにつれ、筆圧と強度を小さくする必要があるでしょう。胴体のデザインによって、キャラクターの残りの部分の形や顔のルックが決定します。

先に胴体に取り組み、頭部は後でスカルプトしました

体の大まかなプロポーションができたら、すぐに顔のスカルプトに取り掛かりましょう。私は、いつも口を広げた形にスカルプトしています。これにより、表情の作成と顔や顎のラインの修正を簡単に行えます。また、開いた口を閉じた形に修正する方がその逆よりも簡単です。今回はキャラクターの口を大きく広げたいと思っていたので、誇張しています。

スカルプト作業では複雑な操作を行なっていません。また、多くのチュートリアルでも解説されているので、ここでは深く掘り下げないようにします。

まず、頬骨と鼻りょうの基本構造をスカルプトします。顔の硬い部分はすべて、頭蓋骨の形が最もよく見えるところです(頬骨、額、顎、鼻りょう)。次に、口周りや鼻の両側など広く柔らかい部分をスカルプトします。顔の筋肉構造に沿ったストロークを心がけると、キャラクターの残りの部分にもしっかりとした基盤ができるでしょう。

主なディテールは[Dam_Standard]ブラシで設定、二次的なディテールには一定の向きのストロークをモデル全体に追加します。圧縮されたしわを刻む薄い層を作成する前に、[Standard]ブラシ、[Inflate]ブラシ、[Gravity]を設定した[Standard]ブラシで空間を埋めて、大きなしわの重みを表現します。仕上げにアルファブラシを使って、鼻の毛穴、目の下や額のディテールなど、さまざまな肌の起伏を追加しました。

基礎となるシェイプ/プレーンが最も重要

顔にはリアルなディテールのみ入れています。これにより作品のバランスを保ち、鑑賞者の目を顔に誘導します。すでに、キャラクターのプロポーションによって、胴体が主な焦点となっているため、以下の方法で鑑賞者の目を顔に向けました。

・顔のディテールを作成(胴体や服装以上に)
・顔周りに入れる新しい色(フェイスペイント、白髪)
・白い息の追加
・2つの同じオブジェクト(鎧のパーツ)の間に顔を配置

基本的な解剖学・姿勢・デザイン構成がない段階では、ディテールは大して重要ではありません。多くの人は、基礎ができ上がる前にディテールの作成を始めてしまいますが、それらは最終的に上手くいかないことでしょう。潜在的な問題に蓋をしてしまい、作品の進歩を妨げる原因になってしまいます。

ポージング

まず、ZBrush のマネキンで作りました。そうすれば、テストポーズを手早く作成して、簡単に確認・調整できます。最初のポーズに満足したら、サブツールとしてマネキンをキャラクターに追加。その後、トランスポーズマスター(Transpose Master)で作成したマネキンポーズをキャラクターに複製します。

扱いやすいマネキンで最初にポーズをテスト

重視したのは「ポーズによってキャラクターのサイズと幅を強調させること」「自然なやり方で興味のポイントに鑑賞者の目を向けさせること」です。下図の例では、さまざまなガイドラインを引いて分かりやすく示しています。

鑑賞者の目を誘導する

テクスチャリング

キャラクターの基本カラーマップでは、ZBrush の[Spray]ブラシでさまざまな色をペイントし、その後、初期シェーダでわずかに凹みの色とキャビティマスク(CavityMask)を追加。プロップのほとんどはMARI でテクスチャリングしています(※ある程度のテクスチャ解像度を得るために、サブディバイドする必要はありません)。

皮膚はすべて[Spray]ブラシを使用。さまざまな色を重ねながら手動でペイントします

Photoshop で、色彩・彩度・明度・コントラストを変更しながら、ベースカラーマップからさまざまなマップを作成。また、このマップを使って、皮下の血管などの追加ディテール、ベース反射マップを乗算したキャビティマップをペイントしました。求めていたルックと雰囲気を出すため、これらのスキンマップはすべて手動で行なっています。

最終的な母斑と斑点を入れたレイヤによってすべてが一段と有機的になり、キャラクターに深みが出ます