パースを活用した 巨大モンスターの描き方

プロのヒント:[カンバスを左右に反転]を活用する

便利な画像ライブラリを作っておくのは良いアイデアです。右図は数年前に作ったシンプルな白黒の雪の画像で、簡単にシーンに取り込めます。描画モードを[スクリーン]に設定するだけで、瞬時に雪の風景ができ上がります。散布ブラシで簡単に作れますが、ライブラリがあると最終的に大幅な時間の節約になります。雨・光線・レンズフレアにも同様の画像を作成しておくと良いでしょう。

カンバスを反転させると、手早く簡単に間違いや不適切な描画/ペイントを発見できます。これは多くのアーティストが使っているテクニックです。長時間1つのプロジェクトに取り組んでいると、脳がイメージに慣れてしまい、プロポーションやスケール上の小さなミスに気づけなくなる場合があります。

しかし、 カンバスを反転させると新鮮な視点から見つめ直すことができるので、そうした問題をすぐに発見できます。問題を最小限に抑えるため、制作過程で何度もカンバスを反転させることをお勧めします。[イメージ]>[画像の回転]>[カンバスを左右に反転]をクリックして実行します。

[イメージ]>[画像の回転]>[カンバスを左右に反転]をクリックして実行します

06 コントラストの追加

明るい後景にある暗いオブジェクトは、はっきり見えます。同様に暗い表面にある明るいオブジェクトも明確に浮かび上がります。これを考慮しないと、平坦で面白みのない退屈なイメージになってしまうでしょう。

後景に曇り空をペイントしたら、巨人の形状がさらにくっきりと浮かび上がるように、空の明るい領域を配置。これによって巨人のコントラストが強くなり、シーンにおける存在感も強くなります。空の明るい領域と巨人の体の暗い領域の対比が、シーンをよりダイナミックに、エネルギッシュに演出してくれます。

図06:巨人と空の間にコントラストを追加、躍動感を生み出します

07 光源を考える

適切な光源の配置によって、作品が見違えるくらい向上します。「光がどこからやってきて、どこに降り注いでいるのか」「どのように影を形作っているのか」を想像してください。これはプロジェクトを進めていく上で、今後のプロセスにも大きな影響を与えます。光の中にあるもの、光が表面に当たり影ができる場所など、すべてに注意を向けなければなりません。複数の光源を取り入れ、より複雑なシーンを作成することも可能です。どれが最も効果的か、自分自身で判断してください。

黄色やオレンジのような温かい光の場合、影をやや冷たい色にすることを覚えておきましょう。反対に、青などの冷たい光の場合、影に温かいトーンを使います。このテクニックを駆使すれば、イメージがもっと自然に見えます。

このシーンでは、光源を右、巨人の背後に配置しました。温かい自然光が、効果的なハイライトやリムライトを形作っています。

図07:シーンの光源を慎重に考えます

08 発展とディテールの追加

イメージが具体的になり、このシーンで起きていることが明確になり始めたので、必要に応じて慎重にディテールを追加していきましょう。このシーンで作成するディテールには、色の反射、テクスチャとマテリアルの構築、パーティクルの追加などが含まれます。

私はいつもこのステップでズームインし、小さなブラシを慎重にコントロールにしながらディテールを描画します。光源・大気・明暗のスポットに従って、ディテールを加えていきましょう。不適切な領域にディテールを入れすぎると、シーンから躍動感が失われ、平坦になってしまうので気をつけてください。このイメージでは巨人の毛むくじゃらの体を描画して、村にも活気を与えました。村の一部に光を加え、家屋の間に木を配置しています。

図08:必要に応じてマテリアルとテクスチャを明確にして、シーンにディテールを追加します

09 最終調整

制作も終わりに近づいてきたので、色・コントラスト・明るさに最終調整を加えましょう。これは、制作過程で失われたコントラストを取り戻すために行います(色の光沢が失われている場合もあります)。[カラーバランス][レベル補正][明るさ・コントラスト]、またはこれらと同等の機能を持つツールで修正しましょう。レイヤーパネル下部の[新規調整レイヤー]ボタンをクリック、ここでは一例として、[カラーバランス]と[レベル補正]を選択します。設定を試して、最も効果的なものを見つけてください。これらのレイヤーは、その効果を反映させたいレイヤーの上に配置する必要があります。

図09:[カラーバランス][明るさ・コントラスト][レベル補正]で、色と明るさを最大限に調整します

10 アイデアの救出

私はこれまでさまざまなプロジェクトで、最後に要素を少し変更・追加して、シーンを魅力的に仕上げてきました。これにより、思いがけない素晴らしい効果が生まれ、シーンがよりダイナミックで、躍動感あるものに変わります。たとえば、このイメージでは巨人の手にこん棒を持たせ、上半身を少し小さくしています。これでシーンの規模と奥行きがさらに強化されます。また、粉塵や霧を巨人の周りに追加して、その図体の大きさをさらに際立たせました。

私はこの最後のステップを「アイデアの救出(rescuing ideas)」と呼んでいます。作品が完成してもその出来栄えにまだ満足できないときは、小さな変更を加えて、クオリティと全体の見た目を向上させることができます。別レイヤーにプロップ(小道具)をざっと追加し、満足できるルックを得られたら、それをさらに発展させてみましょう。私はいつもこのステップで、大胆な変更を加えます。

図10:最終イメージ

※本チュートリアルは、書籍『Photoshop で描くSF&ファンタジー』からの抜粋です

 


編集部からのおすすめ:人体を描く&造るテクニックの上達には、書籍『コンセプトアーティストのための人体ドローイング』、説得力のあるキャラクターをつくるには、書籍『Photoshopで描くキャラクター』をおすすめします

 


翻訳:STUDIO LIZZ
編集:3dtotal.jp