ファンタジーなコンセプトアート『Wild Woods -ワイルドウッズ』のメイキング

ポーランドのコンセプトアーティスト Kamil Murzyn氏が、その制作ワークフローを説明します(Photoshop使用)

私のアイデアの多くは、戦闘、ドラゴン、魔法が登場するおとぎ話やファンタジーをベースにしています。しかし、「ティーブレイク」「詩人が次の言い回しを考えている姿」など、もう少しカジュアルな感じを取り入れることもあります。また、ファンタジー世界を違った側面から描く(旅路、山、湖、森の雰囲気を捉える)のが好みです。このメイキングでは、私のアート制作のプロセスを共有したいと思います。

ステップ01:アイデアのスケッチ

今回、私は、2つの山あいの地で育った4人の盗賊の物語を思いつきました。毎日、わずかしか日の光が差し込まないため、暗闇でも目がよく利きます。この4人が冒険に出発、外の世界の美しさを発見していきます。ところが、そこで... と、これ以上はネタばらしするのはやめておきましょう!

この作品では、美しい大地を旅する様子を見せつつも、何かがいつも影に潜んでいることを示したいと考えました。それこそがファンタジー世界の日常であり、本質と言えるからです。すでに分かっていることは「鑑賞者が初めてこの作品を見て、発見して、感じたいこと」「私が作成したい雰囲気」「たった1つのキャンバスでシンプルな物話を描き出す方法」です。

まず、シンプルな白黒のスケッチから始めましょう。主人公の立ち位置に小さな丸い形をいくつか描き、野獣が潜んでいる個所には大きな丸い形を描きます。次に、2つの物話のポイント・焦点とそれぞれをつなぐシンプルな道を作ります。私は鑑賞者の視線を上から下へ導くように(物語の道筋として)、木と枝をフレームとして使いました。

初期のスケッチ

ステップ02:色

私にとってベースカラーは重要です。心地よいムードのある音楽(映画やゲームのサウンドトラック)を流し、意識だけをその場所に移して、キャンバス全体を少ない色調で埋めていきます。この段階で何度も没頭する時間が訪れます! 最初の大きなストロークで色を入れるとき、私は映画『ロード・オブ・ザ・リング』の終盤でモルドール向かうフロドとサムのような気分になります。しかし、すぐに元のアイデアに戻って、その構図を頭に思い描き、ペイントし続けなければいけません。アーティストにとって、忍耐は大きな美徳であることを覚えておきましょう。

色を加える

ステップ03:雰囲気を取り込む

私たちは頭の中で常に理想的な絵を見ています。しかし、実際にブラシを握って、キャンバスにそれらのアイデアを広げていくのは難しい仕事です。なぜなら、頭の中では絵を全体ではなく、大まかな雰囲気や感覚として捉えているためです。大抵の場合、完璧な(少なくともかなり良い)絵を作成するには、その感覚を信じて、忍耐強く作業していくだけで十分です! この雰囲気を取り込めば、鑑賞者も同じスリルを味わえることでしょう。

ここでは、抽象的な手順について解説していきます(ブラシ、レイヤー、グレースケールに色を入れるなどの技法は、他の多くのチュートリアルで解説されています)。初期のスケッチを終え、茶色と緑色でベースカラーを入れたら、画像を統合して[ブラシ1]レイヤーでペイントしましょう。従来の絵画のようにペイントできるので、私がイラスト制作で重視する「無邪気な雰囲気」を伝えることができます。ズームはあまり使わずに、少しずつ色を重ね、領域を描き過ぎないようにしてください。急に見た目がおかしくなると厄介です(該当の部分を白で塗りつぶし、最初からやり直すことになるでしょう)。

雰囲気を取り込む

ステップ04:焦点

絵をサムネイルで見る、または、遠くから見ると、強い色の組み合わせが注意を引くと分かるでしょう。近寄って見ると、ディテールがよく見え、すべてのルックが明確になり、全体の絵を感じとれます。鑑賞者の視線は絵のあらゆる部分を駆け巡り、すべてのディテールと物語を観察して、別世界に誘われます。しかし、それぞれの領域は、1つ前の領域がなければ成立しません。私は繰り返し、前の領域に戻って、小さなディテールではなく、自分の見せたい要素を絵に表現できているか確認しています。

大抵の場合、私は最初に焦点を絞ります。見栄え良い分かりやすいキャラクターから始め、落ち着きリラックスした状態で、絵の残りの部分に移ります。しかし、今回はいつもの方法と変え、かなりラフなキャラクターをスケッチして、その周りのすべてを発展させました。こうしてライティングと色で最初に雰囲気を出し、後ですべての要素を配置していきます。

環境のペイントはとても時間のかかる作業なので、私はシンプルかつ正確に進めていきます。小さな形を大きくまとめるため、ライティングを3つのトーンに留めましょう(直接光、拡散光、影)。ペイントをしながら、色相と彩度に少し変更を加え、絵をより生き生きとさせてください。

焦点

ステップ05:仕上げ

森には、緑、茶色、金色のパレットを選び、全体的におとぎ話のような落ち着きのある自然な雰囲気を出しました。ただし、下にいくにつれ、色調を冷たく、薄暗く、彩度も抑えました。そこは野獣の住処です。

この野獣は急遽デザインしたものです。毛むくじゃらの太ったモンスターを作りたいと思いました(角を生やして悪魔のような気味の悪さも取り入れました)。肌の色が風変わりで、灰色がかったピンクとオレンジですが、それほどカラフルではなく、鑑賞者の注意を引くのに十分なコントラストがあります。一方で、盗賊たちの服、鞄、帽子、髪の毛にはさまざまな色を使いました。彩度・色・コントラストは、彼らの周囲で光のフレームになっています。目はとても明るくて、日陰でも光っています。

最後のヒントは、ペインティングに一貫性を持たせることです。ブラシは同じようなサイズにします。楽だからといって、特定の作業のためにサイズを小さくしてはいけいません。重要な場所のディテールには気を配りましょう。そしてもちろん、独創性と創造性を持ち、学習を続け、アーティストらしく振る舞ってください。

完成イメージ

メイキングプロセス


翻訳:STUDIO LIZZ (Nao)
編集:3dtotal.jp