CGキャラクターリギング入門:01 リグの計画

アニメーションのほかにキャラクターを生き生きとさせる良い方法はあるでしょうか? ここでは、アニメーション用モデルのリギングプロセスを紐解きます。正確にツイスト(ひねり)や曲げを行えるようにジョイントを追加して、頭からつま先まで変形を試します。これらのギミックはすべて、人間の関節と筋肉の仕組みに基づくため、現実の人物の重量や張力で動作するのを確認しましょう


Jahirul Amin

Jahirul Amin は、英国ロンドンの DNEG の 3Dトレーナーです。NCCA(National Centre for Computer Animation) での3Dコンピュータアニメーションの講師経験も活かして、 3D Artist magazine や 3dtotal.com に定期的に寄稿しています。
Jahirul Amin は、英国ロンドンの DNEG の 3Dトレーナーです。NCCA(National Centre for Computer Animation) での3Dコンピュータアニメーションの講師経験も活かして、 3D Artist magazine や 3dtotal.com に定期的に寄稿しています。

※本チュートリアルは、書籍『Maya キャラクタークリエーション』からの抜粋です

リギングを始める前に考慮すべきこと

キーボードを叩いてリグの作成する前に、私はまず、紙に計画を書き出します。計画段階で行う最初の手順は、リグに必要な動作タイプの分析です。

ストーリーボード、アニマティクス、リファレンス映像などを集めて検討してください。そうすれば、目的に合った良いリグを作成できます(図01)。目的に合っていることが重要です。使わないリグの作成に費やす時間はありません。

リグに必要な動作が分かったら、次はアニメーターにやさしいリグの作成方法を考えます。アニメーターとの対話を心掛け、彼らの好きなコントロールの種類を見つけましょう。フォワード・キネマティクス(FK)、インバース・キネマティクス(IK)、あるいは、その両方かもしれません。「鎖骨の自動化を好みますか?」「肘や膝に極ベクトルのようなコントロールは必要でしょうか?」

それはあなたのリグであり、実際に使うアニメーターのリグでもあります。創造的なプロセスを通じて、アニメーターのニーズに応えてください。

図01:リファレンスを観察して、リグに必要な要素を分析します

リグの使用目的

今回のリグの使用目的は「歩行サイクルの制御」です。簡単に聞こえるかもしれませんが、肩、肘、膝のような領域のボリュームを維持したいので、皮膚の下にある人体構造を理解する必要があります。作りたいキャラクターは「歩くジェリーマン」ではありません。

胴体はシンプルな FKの脊柱(背骨)にこだわりますが、独立したコントロールを骨盤と胸に配置します。腕の主な動きは、前後の振りになるので、FKセットアップにします。脚と足は、地面の接地を行う必要があるので、地面を突き破らないような、つまり、IKセットアップが必要となるでしょう(図02)。頭は首の向きや位置に追従させたいと考えています。時には、胴体や腰の回転に従わせるのも良いでしょう。

図02:脚を環境と作用させるために、IKセットアップを計画します

以上が「リガー」として私が希望するリストになります。次は「アニメーター」のニーズを検討する必要があります。幸い、私はアニメーターでもあります!

まず、望むのは、自由に動かせる、数の少ない、効率的にアニメートできるコントロールです。例えば、5つの腰椎、12の胸椎、7つの頚椎で背骨を構築すると、アニメーターは 24の独立したコントロールを操作しなくてはいけません。それでは手間が掛かり過ぎです。3~4つのFK コントロールだと上手く動作するでしょう。場合によっては、背骨を少し移動・ストレッチさせる機能を追加します(図03)。

図03:リグのスケルトン(骨格)構造を計画する

スケルトン構造の計画

腕と脚にFK/IK の切り替えスイッチがあれば、ショットアプローチを決める上での自由度が上がることでしょう。そして、手の指にはそれぞれ独立して動かせるコントロールが必要です。簡単な手のポーズ用のコントロールもあると便利です。例えば、同時に指を伸ばしたり、手軽に握りこぶしを作成できるようにします。 足の指も同様です。

最後に、足の後ろにかかと、中間にボール(母指球)、前につま先のコントロールを設定します。これらの情報を把握できたら、紙にリグをデザインしていきましょう。事前スケッチは、作成する関節やコントロールの配置場所を決定するのに役立ち、全体的なリグの外観をチェックできます。

このようにして、身体で最も柔らかい/固い場所を考慮します(図04)。背骨を確認すると、腰部は非常に柔軟ですが、胸郭(肋骨)のある胸部の自由度は少なめです。それでは、紙の上からキーボードに場所を移して、モデルのセットアップを始めましょう。まず、胴体の塊(マッス)、上腕の塊などに切り分け、動作テストを実行していきます。

図04:コンピュータでの作業の前に、リグに必要なコントロールの種類を考えます

計画の熟慮、しっかりしたテストを行うほど(仕様を満たしていないリグの)、再設定にかかる時間を節約できます(図05)。

図05:必要になるさまざまなコントロールを計画

>>>「02 リギングの基本原則」こちら
>>>「03 胴体のリギング」こちら

※本チュートリアルは、書籍『Maya キャラクタークリエーション』からの抜粋です

■関連記事:【インタビュー】書籍『MAYA キャラクタークリエーション』の著者、Jahirul Amin氏


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翻訳:STUDIO LIZZ
編集:3DTotal.jp