フォトショブラシのつくり方 & SF火星探査機のスピードペインティング(※ブラシダウンロードあり)

07. ディテールを加える

地面の探査機と空の両方に取り掛かり、スケッチの段階から1歩進めます。探査機の装甲を描き、明るい明度でタイヤに輪を描くと、パースがわかりやすくなります。

地面に取り掛かります。ステップ02で作成したブラシで 上からペイントして、地面のパースと同じ方向に手を前後に動かし、きれいなテクスチャを作成しました。ズームした図をご覧ください。このペインティングでは 写真テクスチャは使用していません。ステップ1 で紹介したプロセスと同様、質感のある 1本のブラシで すべてを描きました。ブラシにはノイズがあり、跡が残ります。同じブラシで色を素早く切り替え、ブラシの跡を利用しました。こうして、ある種の雰囲気を作ることに成功し、途中で起こる「幸運なアクシデント」も上手く利用しました。また、構図を改良するために、枠内の探査機と人物の配置を変え、中央でなく、左側に少し寄せました!

08. 色

このステップは色です。しかし、その前に、地面と探査機の作業を進め、前のステップの説明のとおり、空に雲を追加しました。図から、ブラシの跡を利用した様子がわかることでしょう。最適なかたちが得られるまでペイントと消去を行いました。

全体の構図に満足したら、色を追加しましょう。以前説明したように、多くの方法で このステップを行えます。はじめから 色を使って描く人もいれば、はじめは 白黒がわかりやすい明度にフォーカスする人もいます。私はどちらも行いますが、スピードペインティングの場合は、白黒ではじめるのが好みです。

まず、色を追加して、簡単な色調補正から始めましょう。イメージを統合して[カラーバランス]で色を素早く追加します。この機能を使うには[イメージ]>[色調補正]>[カラーバランス]に進みます。このツールを使うと、シャドウ、ハイライト、中間調の色を別々に調整できます。これは作品に最初の色調を加えるのに最適です。[オーバーレイ]描画モードも使って ニーズに合う色を加えましょう。ここでは、全体のオーバーレイにオレンジを加え、シャドウに赤を加えました。

この作品にはレトロな雰囲気が欲しく、カラフルなものをペイントするよりもグラフィックアートの手法を採りたいので、単色で進めます。色相を赤に変更して、火星の色を引き出しました。

09. 人物とナラティブを追加する

イメージ全体の作業をさらに進めました。影に少しだけ濃い青を加えました。前景で作業して 地面と空を分離し、主に[なげなわツール]で岩の形状を作成、その上からペイントして(※これまでと同様のブラシテクニックを使用)、テクスチャを作成しました。

最後は、全体にナラティブ(鑑賞者が体験できるストーリー)を少し加えるため、人物を 2人追加しました。探査機の上で作業している人物がいる方がよくなると思ったからです。左側の2人はタブレットで何かを確認中。右側の人物は周辺を警戒。探査機の上にいる左の人物は何かを修理し、右の1人はカメラで遠くを確認しています! ご覧のとおり、こういったジェスチャーはわかりやすく、数本のブラシストロークで描けました! これが私の目指しているもの(短時間で多くの情報を作り上げること)です。

10. 構図を拡大する

構図を微調整します。これは 主なフレームを手早く簡単に変更できる方法です。図からわかるように、レイヤーを統合して[切り抜きツール]でフレームを拡大し(空白の領域には白を使用)、[自動選択ツール]で空白の領域を素早く選択できるようにしました。次に[Delete]キーを押すと[塗りつぶし]ウィンドウが開くので、図のように調整しました。コンテンツを[コンテンツに応じる]に設定、[OK]を押します。あとは Photoshop に任せましょう! 作品の色調やテクスチャによって空白領域が上手く塗りつぶされますが、変形した領域もあります。そのような領域は、上から素早く簡単にペイントできます。状況によって、残しておきたい予想外の結果、幸運なアクシデントも起こることもあります(図を参照)。また、探査機にも光源を追加しています。

焦点である探査機(イメージの1/3に位置)の方にすべてが向かうように、空の雲と地面をペイントします。あらゆる要素が 視線をそこに向かわせているようです(ブラシストロークや地平線を確認ください)。この仕組みがわかりやすいよう、黄色い線で構図を分析した白黒バージョンも用意しました。

11. 仕上げ

約35分間が経過。ついに、最後の瞬間を迎えようとしています。あと5分で最後の切り抜きと構図の調整を行なって完成です。最終イメージでは、シャープネスと明るさを調整しました。ご覧のとおり、日々の仕事やクライアントの依頼の合間に勉強したり、簡単なイラストを制作したりするのは素晴らしいことです。その過程で多くの経験を積むことができるでしょう。

ここまで「時間の管理」が大きく関わることを見てきました。それは、私たちの生活において 最も重要なことです。少なくとも 私にとって「時間の管理」は以前よりも難しくなっています! 創造性を保ち、新しいアートの学習や発展を追いかけながら、自分の人生の出来事・妻と家族・友人・趣味・SNS、そして、クライアントための時間を管理することは容易ではありません。私自身がそれを器用に行える人間とは思いませんが、できるだけの努力はしています。スピードペインターになり、制作や経験の時間を短縮できたので、より素早く学習ができるようになりました。

 

最終イメージ

最後に "ちょっとしたサプライズ" として、ステップ02 で作成したブラシをシェアしようと思います(※さまざまなバージョンを 1パックにエクスポート。下図のサンプルストロークを参照)。このチュートリアルをお楽しみいただけたなら幸いです。

 

■ブラシダウンロード
AmirZand-Brush001.zip (6.0mb)


編集部からのヒント:スピードペインティングのテクニックを磨きたいなら、書籍『スピードペインティングの極意』をおすすめします。また、コンセプトアートについて詳しく知りたい方には、書籍『The art of INEI コンセプトアート REVISION』をおすすめします

 


翻訳:STUDIO LIZZ (Atsu)
編集:3dtotal.jp