ラヴクラフト作品のもとに。コンセプトアート「未知なるカダスを探して」のメイキング

基本のカラーの下絵を描くために、スケッチの下に新規レイヤーを作成し、不透明度を60%に設定しました。オリジナルの白黒のスケッチは、色の下塗りのガイドとして大いに役に立ちましたが、もう十分役目を果たしたのでこの時点で削除しました。次はシーンの構築です。参考用に探し出した写真を使用して、コンセプトに従って重ね合わせていきます(図08~09)。

図08

図09

この時点で、スケッチ内のメインオブジェクトが鮮明すぎること、カダスの要塞が2つの氷山に圧迫されているように見えることに気付いたため、氷山を移動して離し、シーンを少し開放的にしました(図10)。

図10

この作品に、山の参考写真から空を除いた部分を使用していることがお分かりでしょう。オリジナル画像のカラーチャンネルを調べて、空と画像のその他の部分との明暗差が最も大きい部分を選択することで、山の画像から空を削除しました。ブルーのチャンネルを複製し、トーンカーブを調整して、白黒の画像によって空が前景から分離されるまでコントラストを増加させました。

右側の山の上にテクスチャを作成するため、氷山の写真(図05)を使用して、氷をペイントしたレイヤーの上にクリッピングマスクレイヤーを作成しました([Alt]キーを押しながら2つのレイヤーの間をクリックします)。上のレイヤーの不透明度を60%に変更し、[消しゴムツール]を使用してクリーンにします。左側には、別の山の写真(図11)を回転したものを使用しました。図11 の氷に覆われた山から、森の部分をペイントで消しました。

図11

カダスそのものをペイントする際には、輪郭のはっきりした、ジッター設定したブラシと[コピースタンプツール]を使用し、3 つの部分に切り分けて写真から参考部分を取り出しました(図12~13)。

図12

図13

壁をペイントし、長さを延長しました。階段は手描きし、壮大さを感じさせる高さになるまで何度かコピーを繰り返しました。雪と氷をペイントするのは、うんざりするほど地道な作業でした。

この作品のほとんどの部分は、ハードブラシ(サイズは1~4ピクセル)を使用してペイントしました。前景の氷の塊(図14)は、細い標準ブラシ(時によってはわずか1ピクセル程度)を使用してじっくりペイントし、不透明度を50% に設定したカスタムブラシで斜めの動きを出しました(図15)。

図14

図15

適切な被写界深度を出すために、仕上げには霧を多用しています。また、構図に面白い形状を追加するために、監視塔を加えることにしました(図16)。ボートに乗っている人間も手描きしました(図17)。

図16

図17

絵の仕上げとしてシャドウ(影)用の新規レイヤーを作成し、不透明度を50%に設定しました。不透明度を35%に設定したハードブラシを使用して、いくらかの注意を引き付けたい領域(右下の領域と左の山)をペイントしました。その部分までは太陽光が届かないからです。

次に、単一ガンマを得るために、アルファマスク付きの[色相・彩度]および[明るさ・コントラスト]の調整レイヤーを作成しました。マスク上の調整レイヤーにペイントして、絵のいくつもの部分にさまざまなトーンとコントラストを領域を作成しました。画像を完成させるために使用したレイヤーの最終的なセットの詳細が図18です。すべてのレイヤーを結合して、最終的な画像が完成しました。完成イメージが図19 です(サイズは5600×5200ピクセル)。

図18

図19:完成イメージ


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編集:3dtotal.jp