ZBrush による背景の作成:峡谷
09:3ds Max から CryENGINE にエクスポートする
岩壁を 3ds Max にインポートしたら、ワールド空間の座標[0,0,0]にダミーノードを作成。[選択してリンク]ボタンでこれに岩のメッシュをペアレント化します。次に、少なくとも2つのスロット(1つは砂のフロア用、もう1つは岩のマテリアル用)を持つマルチ/サブオブジェクトマテリアルを作成します。後でシーンに追加する他のマテリアルが必要な場合は、さらに追加してもよいでしょう。ここで各マテリアルを選択、シェーダタイプを CryTekシェーダにして、このシーンを CryENGINE ディレクトリに保存します。私のファイルパスは図のようになります。場合によっては 自分で「objects」フォルダを作成してください(CRYENGINE\gamesdk\objects\antelope_canyon ※この手順には CryENGINE Exporter が必要です)。
では、裏で CryENGINE を実行しましょう。3ds Max のマテリアルマネージャでマテリアルを選択した状態で、CryENGINE Exporterの[Create Material]を押すと、マテリアルを先ほど作成したフォルダディレクトリに保存するように要求されます。次は、岩のメッシュをエクスポートする前に、正確なポリゴンIDをフェースに割り当てなければいけません。岩は マテリアルID2 に設定してあるので、岩のメッシュのポリゴンをすべて選択し、これらもポリゴン ID2 に割り当てます。あとはメッシュノードを CryENGINE Exporter に追加し、[Export Nodes]を押します。しばらくすると メッシュを読み込めるようになり、CryENGINE の[Brush]タブから適切なシェーダが適用されます(テクスチャはまだありません)。
(※CryENGINE が認識できるフォーマットです)
10:ゴツゴツしたテクスチャマップを作成する
好みのサーフェスディテールを岩に表現するには、さまざまなテクスチャマップを作成して CryENGINE のマテリアルを操作する必要があります。まず、ディフューズマップ(あるいは アルベドマップ)から始めましょう。cgtextures.com を利用すると、このプロセスに役立つさまざまなイメージを入手できることでしょう。私は背景レイヤーを中間調のグレーに設定し、[オーバーレイ]や[乗算]など Photoshop の描画モードと不透明度スライダを組み合わせて、微妙な岩のテクスチャエフェクトを素早く作成しました。
仕上げに[色相・彩度]調整で、全体のディフューズカラーを できるだけリファレンスに近づけます。ディフューズテクスチャに満足したら、元のバージョンと、さりげない[色相・彩度]調整を加えたバージョンの 2種類を保存します。最終的に CryENGINEシェーダを設定し、これらをブレンドします。
次のマップはスペキュラマップです。これは最も簡単に作成できるマップです。RGB値 53~61のシンプルなグレーの色調で、石/岩の非金属的性質を表現します。
続けて、グロスマップを作成し、岩のマテリアルの粗さや滑らかさを特徴づけます。これには別の写真を使用し、[イメージ]>[色調補正]>[彩度を下げる]で色を取り除きます。そして[イメージ]>[色調補正]>[レベル補正]で、コントラストをわずかに上げ、テクスチャ内の明暗を強調します。
すべてのテクスチャを各フォルダにグループ分けし、1つの PSDファイルに保存します。こうすると、後でテクスチャをエクスポートするときに役立ちます。
11:ハイトマップと法線マップの作成
ここでは CrazyBump を使用します。CrazyBump はウェブサイトから無料デモ版(※30日間のみ動作)をダウンロードできます。この CrazyBump の他にも、テクスチャを手続き型生成できる素晴らしいフリープログラムが多数あります。
これらプログラム用にしっかりしたベースを作るには、ディフューズテクスチャを複製して彩度を下げ、再び[レベル補正]でコントラストを上げます。岩の縞模様を強調するには 新規レイヤーを作成し、不透明度の低い黒のブラシで横線を数本手描きでペイントします(CrazyBump は、テクスチャ内の明度をさまざまなレベルの高さとして読み取り、それに応じて 法線マップやハイトマップを作成します)。このテクスチャを保存して CrazyBump に読み込み、でき上がった法線マップとハイトマップをスライダで微調整します。結果に満足したらテクスチャを Photoshop に戻し、PSDファイルのそれぞれのグループに追加します。
CryENGINE で使用するテクスチャの保存に関するガイドラインはいくつかあり、それらはすべてウェブ上の正式なドキュメントに詳述されています(docs.cryengine.com ※英語ドキュメントです)。覚えておくべき主なルールとして、グロスマップは法線マップのアルファチャンネル内に追加して、ファイル名の最後に「_ddna」を付けて保存しなければいけません。また、ハイトマップも空のテクスチャのアルファチャンネル内に追加し、ファイル名の最後に「_displ」を付けて保存してください。
12:CryENGINEシェーダのセットアップ
再び CryENGINE に戻ります。[M]キーを押して[Material Editor]を開いて、まず[Diffuse Color]と[Specular Color]の値を白に、[Smoothness]の値を 100 に設定します。こうすると、シェーダの値を操作する唯一の要素がテクスチャになります。次に、それぞれのテクスチャをシェーダの対応するスロットに入れます。
現在の CryENGINE は、デフォルトでディスプレイスメントマップや[Blend Layer]機能をサポートされていないため、これらの機能を[Shader Generation Parameters]タブでオンにします。これにより[Shader Parameters]タブで利用可能なオプションが増えます。すでに作成したのと同じ法線マップ、スペキュラマップ、ハイトマップを使用しますが、[Second Diffuse Map]スロットには先ほど作成したディフューズテクスチャの別バージョンを入力します。最後に[Blending Map]を選択しましょう。ここでは、前ステップの CrazyBump で法線マップとハイトマップの作成に使用したグレースケールマップを使います。
ブレンドレイヤーは3つの入力でコントロールされています。[Blend Factor]スライダ、[Blend Falloff]スライダ、そして メッシュ自体の頂点に保存されているアルファの値です。私は 3ds Max に戻り、岩のメッシュに[頂点ペイント]モディファイヤを適用します。[チャネル]で[頂点アルファ]を選択し、低い不透明度、大きめのブラシサイズ設定した黒のブラシで、ブレンドレイヤーを表示させたい領域をペイントしました。そのメッシュを再エクスポートすると、ブレンドレイヤーの効果が実際に表示されるでしょう。
13:CryENGINE でのライティング
CryENGINE には[Voxel-Based Global Illumination]という実験的ライティング機能が付いています(※バージョンによります)。これは、リファレンス写真にあるバウンスライト効果を正確にシミュレートして、ソフトなライティングや影を峡谷に再現してくれます。まず[Tools]メニュー>[Experimental Features]>[Lighting]>[Total Illumination]の横にチェックを入れて、有効にします。岩のメッシュをシーンに読み込み、適切なマテリアルを適用したら、いくつか複製を作成して 端から端まで配置、細長い峡谷の背景の雰囲気を作ります。次に[Rollup]バーの[Environment]タブを開き、[Total Illumination v2]タブにスクロールして[Active]にチェックがあることを確認。[Integration mode]を 2 に設定すると、Global Illuminationが完全に有効になります。最後に[Terrain]メニュー>[Lighting]にある[Time of Day]と[Sun Direction]スライダを調整します。
14:CryENGINE でのライティング
太陽光の調整が上手くいき、影が岩の表面にきれいに表現されました。それでは、影のエッジを少しソフトにしたいと思います。[View]>[Console]を選択、ウィンドウのグレーのバーをダブルクリックすると[Console Variables]メニューが開きます。ここで「r_ShadowJittering」と入力し、値をデフォルトから適切な値に上げます。次に画面右上のコーナーで statistics 設定(デフォルトでオン)を解除します。再びコンソールのウィンドウで「r_DisplayInfo」と入力し、値を0に設定します。
最後にコンソールで「capture frames」と入力し、値を 0から 1に変更します。数秒後に値を再び 1に戻すと、その間にすべてのフレームがキャプチャされ、CryENGINEディレクトリの「captureoutput」フォルダに追加されます。
15:仕上げ
キャプチャしたイメージを Photoshop で開きます。ベースレイヤーを複製して[フィルター]>[その他]>[ハイパス]を低い値で適用。描画モードを[ハードライト]にすると、イメージ全体がシャープな良い感じになります(不透明度スライダで調整できます)。そして、ビネット効果と2本の黒い「レターボックス」バーを加え、ワイドスクリーン映画のようなクールな効果を生み出します。
次のステップは、よりリファレンス画像に近付けるための色の調整です。レンダーイメージは黄色がかっていて コントラストに欠けているため[イメージ]>[色調補正]メニューの[カラーバランス][露光量][明るさ・コントラスト][色相・彩度][トーンカーブ]などを使い、目指すルックなるまで スライダを調整します。最後にサインを入れて完成です!
編集部からのおすすめ:ZBrush による制作テクニックを学ぶには、書籍『ステップアップのための ZBrush ガイド』 や 『ZBrush キャラクター&クリーチャー』をお勧めします。