デジタルペイント『未来の埠頭』のメイキング

ここまで進んだところで、3dtotal の無償テクスチャ&リファレンス素材ライブラリ Texture & Reference Image Library で、イメージに合わせると、よりリアルになりそうなものを探しました。上手く配置し、色調補正すれば、取り込む写真によってイメージを大幅に向上させることができます。多様なサーフェスの質感を表現したり、微妙な効果を出すために利用することも可能です。 ライブラリで私の目を引いた 2枚の写真(Photo 01Photo 02)は、イメージに上手く組み合わせられる素材だと思ったので、写真をドラッグ、サイズを調整してイメージに合わせることにしました。 最終的には、船首に使うと面白いと判断し、通気口に合わせることにしました。これらの写真を通気口に合わせて歪め、[イメージ]>[色調補正]を使用して合成しました(図09)。

図09:これらの写真を通気口に合わせて歪め、[イメージ]>[色調補正]を使用して合成しました

他にも使えそうなリファレンスをライブラリで見つけたので、それらを利用してイメージにさらなるディテールとリアリティを加えました。飛行機のパネル材をいくつかコピーして、船体の側面と左側の鉄枠にペーストし、描画モードを[ソフトライト]に設定しました(図10)。

図10:これらの写真を通気口に合わせて歪め、[イメージ]>[色調補正]を使用して合成しました

レーダーと戦車から取得した残り2枚の写真(component 01component 02)は、カラーのみを補正して、描画モードを[通常]に設定しました。 写真からすべてのディテールを追加した後、ファイルが複雑になり過ぎないようにするため、レイヤーをいくつか統合することにしました。これらは、カラーレイヤーとベースの Main レイヤーの両方に統合しました(図11)。

図11:レイヤーをいくつか統合することにしました

右側の背景が少し空いているように見えるため、大きなクレーンか何かに見える抽象的なシェイプを作成した後、それを 2回複製し、パースに一致するようにスケールしました。このシェイプはしばらく別のレイヤーに分けておくことにしました。一方で青みが強すぎる船の上部の色相を変更するため、新規カラーレイヤーを追加して、描画モードを[ソフトライト]に設定しました。 背景をもう少し微調整し、船の前部にある通気口がなじむようにしました。再度パース以外のレイヤーを統合します。それから 2つの調整レイヤーを追加しました。ひとつは[トーンカーブ]で、わずかに暗くし、もう一方は[カラーバランス]で、黄色を強くして、より温かみのある色調を加えました(図12)。

図12:2つの調整レイヤーを追加しました

レイヤー構造を見ると、2つの調整レイヤーと遠景の空のレイヤー(左上にブルーをペイント)があります(図13)。

図13:レイヤー構造

洗練する

この時点で、イメージ内のディテールは悪くない仕上がりでしたが、全体に少しくすんでしまい、色あせて見えました。霧の深い日であれば問題ありませんが、思い描いていたものではありませんでした。また、構図にも問題がありました。船が押しつぶされたように見え、息苦しく感じるのです。カンバスサイズを少し縦長に変更し、グラデーションレイヤーも追加しました。このレイヤーの描画モードを[オーバーレイ]に設定し、ソフトエッジの消しゴムで船を覆う部分を削除しました(図14)。

図14:描画モードを[オーバーレイ]に設定し、ソフトエッジの消しゴムで船を覆う部分を削除しました

船の上部に空間を追加したことでバランスが保たれ、ぐっと良くなりました。また、この新しいカラーの追加から、船と背景の両方にディテールの描き込みを開始しました(図15)。

図15:船の上部に空間を追加したことでバランスが保たれ、ぐっと良くなりました

背景と前景の両方にさらに微調整を加えました。船のディテールの一部に小さなハイライトを加えることで、全体を大幅に変えることができます。また、船体の下部に沿って並んでいるパネルは、船体のカーブに沿うように[ワープ]ツールで変形しています(図16)。

図16:船体の下部に沿って並んでいるパネルは、船体のカーブに沿うように[ワープ]ツールで変形しています

埠頭の上空を飛んでいる宇宙船と背景の巨大な建物によって、さらに面白みが加わりました(図17)。

図17:埠頭の上空を飛んでいる宇宙船と背景の巨大な建物によって、さらに面白みが加わりました

前景に複数のランプとキャラクターを配置し、さらに、装飾物を加えてイメージを完成させました。

※このチュートリアルは、書籍『Digital Painting Techniques 3 日本語版』にも収録されています (※書籍化のため一部変更あり)。


編集:3dtotal.jp