【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード55:大好きだったホラー映画&そのリメイク
ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!

エピソード55:大好きだったホラー映画&そのリメイク
最近、やっと、以前に仕事したリメイク版『エルム街の悪夢』(2010年)を見ました。ここ10年、やたらと、ホラー映画(主に1980年代)のリメイクがはやっていて、これもその1つ。
80年代は、いわゆる、特殊メイクの技術がどんどん進歩してきた時期で、内容もさることながら、映像の驚きもかなりあり、自分に多大な影響を与えてくれた時期でした。未だに心に残っている作品がいっぱいです。
そんな訳で、それらの映画のリメイクは「絶対にオリジナルより出来が悪い」と思いつつも、どうしても見てしまう悲しい性かな。そして、見てから、ほぼ必ず腹が立つ。今回は、ちょっとここで批判をさせてもらいます。
では、まず、まあまあだったリメイク
Texas Chainsaw Massacre
・『悪魔のいけにえ』(1974年)
・『テキサス・チェーンソー』(2003年)
『Texas Chainsaw Massacre (悪魔のいけにえ)』(1974年):70年代の映画だけど、私が見たのは80年
リメイクは、映画としてはよくできていました。それなりに怖いシーンもよかった。しかし、オリジナルのチープな映像が醸し出すドキュメンタリータッチで本物の殺人を見ているような怖さがまったくないのはしょうがないのでしょう。
My Bloody Valentine
・『血のバレンタイン』(1981年)
・『ブラッディ・バレンタイン3D』(2009年)
『My Bloody Valentine (血のバレンタイン)』(1981年)
これは、オリジナルもそこそこだったので、リメイクもそこそこで面白かったです。
そして、ここからは、うんこちゃんリメイク
Friday the 13th
・『13日の金曜日』(1980年)
・『13日の金曜日』(2009年)
『Friday the 13th (13日の金曜日)』(1980年):オリジナルのパート1では、ジェイソンは最後の一瞬しか登場しないんですけどね
殺人シーンの1つで、ジェイソンが、湖のほとりから 湖の真ん中でモーターボートを操縦している男の眉間を見事にボウガンで打ち抜いたりと「オリンピックの金メダリストでもそんな事できんぞ」というようなツッコミが満載。さっき地面に立っていたと思ったら、次の瞬間には屋根の上にいるとか、このジェイソンならオリンピックのあらゆる種目で金メダルだ!
それから「13人が死ぬ」といったような事を映画で宣伝してたため、何気に死んだ人数を数えてたら、誰が生き残るか予想がついてしまった。そして、その中の2人は、どう見てもストーリーとはまったく関係ない。数合わせのためだけに登場し、あっさり殺される。ストーリー崩してまで13人にこだわるな!
The Hitcher
・『ヒッチャー』(1986年)
・『ヒッチャー』(2007年)
『The Hitcher (ヒッチャー)』(1986年)
主人公がヒッチハイカーを拾ったら、そいつがとんでもないサイコな殺人鬼だったというお話。
オリジナルでは『ブレードランナー』(1982年)のレプリカント役で有名になった、オランダの名優 ルトガー・ハウアー が殺人鬼を演じています。彼の名演のために、とてつもない恐ろしい映画であった。この映画のよさは、まさに、彼の演じるおそろしいキャラクターである。
そして、リメイクは...。思い出すたび腹が立つ、あの役者のダメ演技。リメイクのなかでは1番最悪。時間と金の無駄であった。
Nightmare on Elm street
・『エルム街の悪夢』(1984年)
・『エルム街の悪夢』(2010年)
『Nightmare on Elm street (エルム街の悪夢)』(1984年)
今は亡きホラーの巨匠 ウェス・クレイヴン 監督の映画。眠ると夢の中でフレディという殺人鬼に殺されそうになる話で、日本では "全米で不眠症が続出!" って宣伝してたなぁ(笑)
リメイクは、映画としては出来はよかったのだが、フレディのキャラが全然怖くない。オリジナルでは、親達が隠していたフレディの過去に想像力をかき立てられる怖さがあったのだが、リメイクでは、あまりにもあっさり過去をばらしてしまい、怖さゼロ。どうして、こうも皆、オリジナルの良さをダメにしてしまうんだろう。
Evil Dead
・『死霊のはらわた』(1981年)
・『死霊のはらわた』(2013年)
『Evil Dead (死霊のはらわた)』(1981年)
今や大監督になった サム・ライミ のデビュー作。この映画によって、日本では「死霊のしたたり」(1985年/原題:Re-Animator)や「死霊のえじき」(1985年/原題:Day of the Dead)、果ては「死霊の盆踊り」(1965年/原題:Orgy of the Dead ※日本公開は1986年で成人映画) まで、多くの映画の邦題に "死霊" がついたほどのインパクトがありました(笑)。当時中学生だった自分に、とてつもなく巨大な影響を与えた映画。何回 この映画を見た事か!
さて、リメイクは...。え... うそ... ええーーーーーーーーーーーーー!!!??? もう解説すらできない。さらに追い打ちに Executive Producer クレジットに、オリジナルの監督 サム・ライミ の名前が!
撃沈
そんなこんなで、好き勝手書いてしまったが、前よりよくできないのだったら、本当にリメイクはやめてほしいですね。作る意味がないと思う。しかし、絶対リメイクしてほしい映画もある。『エマニエル夫人』(1974年)! 男のロマン。
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