【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード38:クリーチャー祭 – 映画『キャビン』

ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!


片桐 裕司 / HIROSHI KATAGIRI
彫刻家、映画監督

東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。
東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。

エピソード38:クリーチャー祭 - 映画『キャビン』

皆さんは 『キャビン』(原題:Cabin in the woods)という映画をご存知でしょうか?

 

皆さんは『キャビン』(原題:Cabin in the wood)という映画をご存知でしょうか?

今までのあらゆるホラー映画を融合し、典型的なホラー映画のストーリー展開にしておきながら、最終的に誰も予想がつかない流れのオチに持っていってしまうという、ホラーファンにはたまらない映画です。

この映画には様々なクリーチャーが出てきます。とんでもない数です。その数多いクリーチャーの中でも狼男とマーマン(半魚人)が特に目立つ重要なキャラクターでありました。私は、そのマーマンの制作を任されました。今回は、マーマンの制作プロセス、並びに、同時に起こったエピソードを紹介します。

デザイン:Joseph Pepe

まず、最初にデザイナーが上のようなデザインを描きましたが、決定ではなかったため、私自身も粘土で立体的にデザインすることになりました。

粘土で立体的にデザイン①

粘土で立体的にデザイン②

粘土で立体的にデザイン③

粘土で立体的にデザイン④

しかしながら、このように、あれこれデザインしながら、回り回って、最終的に最初のデザインに落ち着くという、まあよくあるパターンになったわけです。

このキャラは全身スーツであるために、最初に、これを着る役者の型取りから始めます。かなり、魚寄りのマーマンで、這いつくばっているので、型取りもその姿勢で行いました。残念ながら、その最中の写真はありませんが、這いつくばる男に複数の男が寄ってたかって拷問を加えているところを想像してもらえればいいかと思います。そして、この形の上に粘土をつけます。そうすれば、その役者ぴったりのスーツができるのです。

全身スーツであるために、最初に、これを着る役者の型取りから始めます

時にはマーマンに乗りながら

この映画では、このキャラクターのスーパーバイズをしていたのですが、プロジェクト全体のクリーチャーのアートディレクターもしていたので、なかなか大変でした。マーマンの造形をしながら、他にも幾つかのキャラを同時にいじらなければならなかったので。

急いでる時はこのように造形します

合間に、こんなキャラを造形したり...

とにかく、この映画は「考え得る ありとあらゆるクリーチャーを出そう」という企画のため、皆でリストを作り、バックグラウンドのクリーチャーは、合間を見て、好きに楽しんで作りました。業界には当然モンスター好きが集まっているため、皆、楽しくできるのです。そして、その他にも、目立つキャラのエイリアンをスーパーバイズしなければならず、ほぼ同時進行に複数のキャラクターをいじることになりました。

デザイン:Mike Bloom

このエイリアンはなかなかユニークなキャラで、顔が独特な開閉の仕方をするので、どういう風に作るかを非常に悩みました

マケットと呼ばれるデザイン検討用のミニチュア造形

それから等身大を造形します

型取りのため、造形を切り分けます

今回は彫刻だけでなく、仕上げまでスーパーバイズしたので『パイレーツ・オブ・カリビアン』の制作の時と同様、非常に大変な思いをしました(※こちら の過去のエピソードを参照)。おそらく、クルーの中で一番忙しかったはずです。しかし、やらされてるのではなく、自分の責任でキャラの仕上げも自由にできたので、その充実感は何事にも代えがたいものがありますね。次回は、撮影に向けたお話をしようと思います。(つづく

 

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