【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード33:彫刻セミナー

ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!


片桐 裕司 / HIROSHI KATAGIRI
彫刻家、映画監督

東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。
東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。

エピソード33:彫刻セミナー

現在定期的に 彫刻セミナー を開いています。なぜ、このセミナーを開く事になったのか。ここに、その理由とメッセージを記したいと思います。

2012年、人に頼まれて、「特殊メイク留学」という名の下で、日本から LA(米ロサンゼルス)に来た生徒達に3日間の授業をする事になりました。特殊メイク業界も、私が飛び込んだ頃からだいぶ変わって、CG の進歩により、仕事の絶対量が減ってきた事などから先細りになってきているので、お金をもらって、使う場が非常に少ない技術を教える事に抵抗がありました。

どうやったら、自分が培ってきた技術を役に立ててもらえるのか? そして、3日間という期間でどれだけの事が教えられるのか? 折しも、1年前に東日本大震災があり、多くの人が寄付をしている中、自分は何か自分にしかできない事があるのではないか? と考えていた時でした。

デモ風景

そういった中から彫刻セミナーの発想が生まれました。それは「彫刻というプロセスを通じて、できない事がどうやったらできるようになるかを教える」という事です。他の事に応用がきかない具体的な技術を教えるのではなく「どうやったらできるようになるのかを自分で悟らせるようにガイドする」というやり方です。前に書いたように(※エピソード21:私に芸術の才能はない 参照)、私自身最初から造形がうまかったわけではありません。「どうやったら上手になるか」を常に考えてやってきました。

そして、今、実感している事は「上達するという事の根幹がわかれば、あらゆる事に応用できる」という事です。それはすなわち、生きていく強さを身につけるという事にもつながってきます。 少しかっこいい事を言わせてもらいますが、私は、このセミナーを通じて、人々に生きる希望と元気を与えていきたいと本気で思っています。

それが功を奏してか、受講してくれる人たちは「彫刻」という枠にとらわれず、デジタルのアーティストやイラストレーター、アニメーターや背景アーティスト、ネイリストや主婦、普通の会社員やウエイトレス、農家の方、自衛官からパティシエ、まったくの初心者や高校生、はては、私よりはるかに年上の方たちまで、いろいろな種類の人たちが参加してくれています。そして、うれしい事に、その人たちの多くはセミナー後、人生に、仕事に非常に希望とやる気をもってくれたようです。もちろん、仕事ももっとできるようになっていきます。

モデルつきフィギュアクラスの後で

1人が立ち、他の人たちにいい影響を与える事により、その影響を受けた人たちも他の人たちに、またいい影響を与えていく。震災後に考えた、これが自分にできる事だと信じて実践しています。人々の思いがその社会を作っていく。これは本当にそう思います。

今の世の中、好きな事に挑戦しない人が実に多いと思います。安定した収入を求めて、妥協して生きている人があまりに多く、大人たちも、安全で無難な道が正しい道のような錯覚を若い世代に押し付けている。そういう大人たちが依存している会社がどんどんつぶれて行き、増え続ける自殺者の数。私は、世の中の価値観がおおいに間違っていると常々思っています。

私自身好きな事、やりたい事があり、常にそれをしながら生きてきました。当然それに伴う苦労や挫折もいっぱいありました。しかし、それ以上に得る物が多く、今では、本当に好きな事に挑戦してきてよかったと心の底から思います。失敗しても成功しても、それが全て経験として、自分の身に着き、そして、将来プラスに必ずなるのですから。やりたいと思う事があって、どうすればそれができるか。考えたら行動してみる。その繰り返しで今も生きています。

私は今の若い人たちに言いたい。

心の底から好きな事をしてください!
そして、それをするために努力してください。

私は、このセミナーで技術を得るだけでなく、やる気と自分自身の生き甲斐に気づいてもらえたらと願っています。参加した人の人生のターニングポイントになるような、そんなセミナーを目指しています。

やりたい事を挑戦して失敗しても人生なんとかなるし、その方が楽しいではないかと、今では堂々と自信を持って言う事ができます。失敗するのが不幸なのではありません。その失敗を失敗として後悔するのが不幸なのです。

これを読んでくれている人たちで、何か夢を持っている人たち。その夢を叶えるのに今できる事を具体的に考えてみてください。そして、行動してみてください。結果的にその夢は叶わないかもしれません。でも、それは決して、負け犬などではありません。そこで立ち止まらなければ、確実に何かしらの進歩があります。それは最初に目標にしていた事と違う進歩かもしれません。それでもいいのです。いろいろあるのが人生なんです。

もう一度言います。
好きな事を堂々とやってください!

彫刻セミナーに興味ある方は、こちらの 彫刻セミナーのウェブサイト をご覧ください。あなたの人生に多大な影響を与えられるよう全力を尽くします。

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■片桐裕司さんのブログ
http://blog.livedoor.jp/hollywoodfx/

■ハリウッドで活躍するキャラクターデザイナー 片桐裕司による彫刻セミナー
http://chokokuseminar.com/ ※仙台/名古屋(9月)申し込み受付中